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魔王軍と一緒  魔王の魂と合体!?魔力無限でやりたい放題!  作者: おばっち
1章:セルクリッド編
42/74

42:終戦の夜明け

「え~これより、魔王軍幹部会議を始めます。議題としまして、あの巨大アンデッド攻略するにはどうすれば良いかを話し合いたいと思います」


 城壁の上に魔王軍幹部が勢揃いするなか第1回魔王軍会議が開幕した。城壁の外でアンデッドを吸収し続けるテリスは、もはや城壁すら意味を持たない程のサイズにまで成長していた。翼の持つグリフォンとフェンリルに偵察も兼ねて攻撃させて見たが、攻撃箇所は直ぐに再生し、有効的なダメージは与えられなかった。また、一定の距離に近付いた瞬間に、触手の様な細い腕が無数に伸びだし、接近の妨害を受けた。


「攻撃してみた感想だが、魔法はあまり効果的でないような気がする。むしろ吸収しているような感覚さえある」


「俺も同じ感触だ。聖属性の魔法に対しても物体に当る前に拡散して吸収しているように見えた」


 斥候で出た二人の感想は魔王クラスの魔法は無効化され、近付いて切りかかろうものなら触手の攻撃を受けるというものだった。幸い相手に遠距離攻撃をする気配も無く、触手にも限界距離があるようだ。だが、巨大アンデッドもジワジワと動きは遅いが、確実に迫ってきている。


「魔力の吸収か……俺がぶっ放したら全部吸収するのかな? 吸収できる限界はあるのか分からないしな~吸収した魔力を全放出とかありがちで怖いしな……」


 上半身は巨大な人の形をしているが、下半身はドレスを着ているような形で、キャタピラで動いてるようにズルズルズルとこちらに向かっている。


「魔力吸収は意外と天敵かもしれないな……」


「ならばこの徹郎殿の空間魔法で内部から魔法を撃つというのはどうでしょう」


「徹郎殿は空間操作できる距離が短い為、近付いて殴るのと相変わりないのでは?」


「陸様の魔力をなめてるんじゃないのあなた?」


「空間魔法も干渉されて、魔力を吸われて発動できないという事も考えられるな」


「この際全力で魔法を!」


「あんた人の話聞いてたの!?」


 第1回魔王軍幹部会議は白熱を極めるのだった。中には俺は小難しい事は分からんと言い放ち、眠りこくるマイペースな奴もいたが、基本的には意見を交わしていた。


(ここまで盛り上がるとは思わなかったが、なかなか難しい展開だな。どこまで敵が魔力を吸収するのか見てみたいが、パンクした瞬間に爆発とかしたら城ごと吹き飛びそうだしな~やっぱりこの相棒を頼るしかないかな)


 血も魔力も吸い尽くす魔剣爪紅ツマクレナイはいつもよりも赤く怪しげに光るのだった。


(なんだか急かされているような気もするけどな。空腹な子供が目の前に御馳走を置かれてお預けされている常態か? 少なくともあれは御馳走には見えないけどな)


 ゆっくりと動く腐った戦略要塞とかしたテリスは少しずつだが進撃を開始していた。外の魔術部隊も一時は攻撃を行なっていたが、見るからに効果が無い為、向こうでも戦略会議が行なわれている様子だった。


「地味に殴っていくしかないか?」


「だが、再生するんだろ? あのでかさじゃ限がないぜ」


「爆風で倒すってのはどうだ! てか熱までは吸収できないだろ!?」


「最初に言ってたでしょう。シールドのような物で拡散されて、吸収されているみたいだって」


「じゃあそのシールドぶっ飛ばせるぐらいのデカイのかませばいいんだろう?」


「それ防がれたら万事休すでしょうが。だから皆でもう一つの有効なプランを考えているんじゃない」


(まぁ確かに溜めに時間は掛かるけど、相手も遅いし、行けそうだとは思うけど防がれたときは絶望しかないな)


「よし、俺が特攻かける。付いてこられる者は援護よろしく! 半分は残って城壁の警備で」


 陸は飛行魔術でふわっと浮き上がり、幹部達を見下ろしながら号令をかける。炎竜も翼を生やし付いて来る気が窺える。


(飛行魔術もバランス取るの難しかったんだよな~蔭で練習した甲斐があったわ。飛行魔術自体スピードがまだ出ないけど、韋駄天スキルで空中での急激な方向転換、飛行中の加速が可能になった。飛行酔いに慣れるには苦労したけど)


「議論もなかなか進まないし、取り合えず殴ってみようか。駄目ならもう一度会議だね。では行こうか」


 みなそれぞれの掛け声と共に自らの与えられた役割を全うするのであった。炎竜、セルシウス、グリフォン、地上では足の速いフェンリル、百目が追走する。寡黙な男百目の走行フォームはとても機械的で、ブレがないく何をしても真面目そうに見えてしまう。残りのメンバーは城壁に残って有事に備えさせる。あのデカイアンデッドが囮だとも言えるし、この最終局面で裏を掻かれたら面倒だ。


 飛行部隊が陸に追走しながら追いかける形になっている。巨大アンデッドも此方に気付いたようで、飛行部隊に合わせて目線が動いているのが分かる。


「お、来たぞ! 各自対処せよ」


 巨大アンデッドの攻撃範囲に入ったのか、体中から手のように先端が細く複数枝分かれた触手が伸びる。幹部達も遅れを取らず、エンティティの入った魔力武器で対応している。


「っち、数が多いな」


 炎竜はバルディッシュを身体の回転を利用して飛行しながら触手を切り刻んでいく。触手一本はそこまで脅威ではないが、絡まり始めたら面倒になってくるだろう。セルシウスも触手に取り付かれないようアールシェピースでなぎ払っている。幹部達は、本体への魔法攻撃は厳禁なので、陸の護衛が最優先事項であり、触手を陸に近付けさせないように気を配っていた。

 

 百目は上着を脱ぎ捨てて早くも全身から眼球を出現させ地上からの援護射撃が飛ぶ。百目の凄い所は、全ての瞳から入ってきた情報を素早く処理できる解析スピードが速い所である。人間が監視カメラのモニター100台を並べてみても全てを瞬時に確認する事は出来ないだろう。そしてその情報を元に素早く身を動かせる運動神経は人間の領域を遙かに超えているだろう。


「もう少しで本体に手が届くぞ」


 陸はそのまま韋駄天で加速し、巨大アンデッドの正面から魔剣爪紅ツマクレナイを突き刺して、そのまま上に上昇しながら切り上げた。


「よし、一旦距離を取る!」


 陸の切り上げは、腹から左脇に向かって横腹まで引き裂きながらすれ違い、後方へ一旦距離を置く。幹部達もそれに合わせて触手を潰しながら距離を取り、陸の下へ集まってきた。


「陸様、手答えはどうですか?」


「色んな物は吸ってる感じなんだけどね。時間掛かりそうだけど、この攻撃パターンで行くしかなさそうだね」


 日ごろ感情を顔に出さないセルシウスが心配そうな顔をしたときは少しときめくものがあったが、今はそれ所ではない。取りあえずあのデカイの何とかしなければならないのだ。先ほどの傷口は既に塞がっているが、何回か攻撃して敵の反応を見てみるしかないだろう。


「では第二撃目行くぞ」


 それからと言うのも2撃、3撃と続くなか、敵の触手の動きも鈍くなり始め、7撃目の突撃にはほぼサンドバック状態となっていた。足元は水分を抜かれ過ぎたのか白く乾燥し始めている。


「陸様! もうこいつ楽勝ですね!!」


「炎竜、油断してると足元救われるぞ」


 グリフォンが炎竜に叱咤する事も自然界ではありえない事なんだろうなと陸が思っていると、巨大アンデッドの胸の真ん中に穴が空、掃除機のように吸引し始めた。丁度斜線上にいた炎竜が吸い寄せられている。


「クソッ! なんて力だ」


 炎竜の抵抗もむなしく、ズルズルとアンデッドへと吸引され始めた。


「言わんこっちゃ無い。助けて欲しかったらいつでも言ってくれ」


「舐めるな! ウガァ」


 炎竜は体勢を維持したまま魔力を炎の塊に変え敵アンデッドへ放出した。そのままぶつかると思われたが、巨大アンデッドの魔力吸収シールドは生きていた。爆発すると思われた炎弾は身体に当る前に分解され、吸収されていった。


「畜生! 忘れてた……」


「馬鹿」


(真顔で暴言を吐くセルシウスも又……いかん、仲間の危機だった。)


 陸が救援に向かおうとした次の瞬間、巨大アンデッドの吸引力が遙かに強くなり、炎竜も最早時間の問題となっていた。恐らく先ほどの炎弾の魔力を吸収して利用したのだろう。


「させるかぁ!」


 陸は即座に韋駄天で空を蹴り、炎竜の腕を掴むとそのまま放り投げた。だが、陸も咄嗟の判断だったのか、放り投げている隙に更に吸引が増してしまい、陸はそのままアンデッドの胸の中に吸収されてしまった。


「陸様!」


「何てことだ……」


「うっ 俺はなんてことを……」


 陸の吸収を機に移動する事が無くなった巨大アンデッドだが、幹部達は絶望感に只管浸っていた。魔王をお守りする事が努めの筈が、足手まといは愚か、身を犠牲にさせてしまう事になってしまった。王がいなければ自分達の存在意義がなくなってしまう彼ら故にその絶望感は大きい。その原因を作ってしまった炎竜の罪悪感も大きいだろう。

 

 ただ彼らは待つことしか出来ないでいた。敵を観察しながら救出も考えるが、手がかりも無く、下手に攻撃して王を傷つける事だけは避けたかった。





★★★




 辺りは真っ暗で何も見えなかった。ただ 魔剣爪紅ツマクレナイが赤く点滅する為、時々赤く光るのだが、その光だけでは辺りを照らす事は出来ないようだ。光が届かない程広い空間なのか、光を全て吸収してしまうのか分からないが、陸はその空間でしばらくぼぉっと過ごした。すると後ろから聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。


「はっはっは! よう、お前さんが来てくれるとは思わなかったぜ」


「え、えーっと?」


「もう忘れちまったのか! ベルゼブブだよ!! あんたに殺された!」


「あ、あ~ね! 生きてたんですか!?」


「流石に死んだわ! この身体見てみ!」


「そういえば違う体ですね!」


「おうよ、こいつは俺の家臣の術なんだが、このままだと負けそうだから、一人でも道連れにするっつってよ! 引きずり込もうとしたんだけど、あんたじゃ道連れも無理そうだわ」


「そうなのか? 意外とピンチっぽいけど」


「その態度にピンチを感じてる様子は一向に窺えないけどな」


「で、仇を返しに来たのかい?」


「いや、そこまであんたの事は根にもってねーよ。ただ内の家臣に申し訳なくてな。特にこのテリスなんてのは150年も俺を探してくれたなんて健気じゃねーか。どうにかしてやりたいのよ」


「お、おう。」


「そこであんた。此処に入ってきて分かったんだが、人間じゃなかったんだな。凄い魔力だ。俺を倒したのを見込んでテリスを助けてやって欲しい。このままでは不憫でなぁ。わしが原因なんだが助けてやりたいと親心が叫んでのぅ」


「はぁ、そんなこと出来るんですか?」


「君なら出来る。ついでにこれも渡しとこう。我城の通行手形と、所有権だ。いずれ近くに寄ったら行って見るといい」


「あ、ありがとうございます」

 

 ベルゼブブは、小さな魔石に魔力を込めて、複雑な模様を生み出した。どうやらこの模様が印になるようだ。


「はっはっは! 気の引けた少年だな! 今の世代の魔族は皆こんな性格をしているのかい?」


「どうなんでしょう、自分は同じ世代をあまり良く知らないので……」


「うむ、そうかそうか。話が脱線したが、つまりこの巨大アンデッドはテリスに何万ものアンデッドを取り込んだ姿なのだが、そのアンデッドを外に出したとしてもテリスは元に戻らんし、そもそもアンデッドは外に出せん」


「まったく想像できませんね」


「まぁそうだろうな。肉を食いまくってブクブク太った体から、肉を取り出して痩せさせようとしても吸収してしまった肉は取り出せないと言う訳だな。テリスはこのアンデッド共を吸収し、自分の体として吸収してしまっている」


「なるほど。人間なら走って脂肪を燃やす事になりますが」


「そうだな。この巨大アンデッドの場合アンデッド物質を燃やす事にになるのだが、君が持っている魔剣でアンデッドだけを吸い取れるだろ?」


「はい、今の所何を吸い取るかはコントロール出来ます」


「よしよし。では、わしは残って最後の仕上げがあるから、君は外に出て吸い取ってくれ」


「分かりました」


「出口は此処だ。あと白く光りだしたら吸収は止めてくれて結構。では去らばだ少年!」


「なんだか部下に優しいいいおじさんじゃないか……」


「……聞こえてるぞ~早くいけ~」


 陸は言われるがままベルゼブブが指し示す光へと吸い込まれていった。



★★★



「どうするよ……あぁ俺のせいだ……みんなにボコられる」


「ボコらられるだけで済むと思ってる?」


「セルシウスさん目がマジです」


百中の構造がどうなっているか分からないが、陸様があの程度でやられる筈が無い」


「そうだぜ! 少し待ってみよう」


「あんたは黙ってな」


「ふぁぃ……」


「今まで陸様だけが攻撃手段を持っていたので、我々だけではどうにも……」


「そうだな……」


「あー取りあえず、また攻撃するから援護してくれ」


「その攻撃手段がないとあれ程!」


「陸様……」


「……(ふぁ! 陸様)」


「ここは城砦の幹部達と合流した方がいいか?」


「そうね、非難は受けるでしょうが致し方ないわね」


「(いやいや、そこにいるし!)


「何で炎竜は喋らないんだ? 腹でも痛いのか?」


「炎竜は喋ったら殺す」


「……(……)」


「はい、ちゅーもーっく!」


「誰よ、こんな時に緩い事言ってっ……うえぇぇえええ! いらっしゃったのですか!?」


「さっき戻った。なかなか気付かないから焦ったよ~炎竜は気付いてくれたんだけどさ」


「なんで教えてくれないのよ馬鹿」


「これ何て理不尽?」


「まぁまぁ、じゃあもう一度切りに行くから援護よろしくね」


 「「「「「了解」」」」」


 最早動きの遅くなった相手に援護も必要もなそうであった。魔剣爪紅ツマクレナイで敵の腐ったゾンビ物質を吸い取らせていく。それに比例して、相手の大きさも小さくなっていき人間の大きさになったところで白く輝き始めたので、陸は刀を引き抜き見守った。


「はっはっは~! いや~肉体構成に手間取ったわ。細かい作業が苦手でな。まぁ上手くいってなにより」


 ベルゼブブの亡霊がいつもの笑い声と共にふわふわとテリスの上で浮いている。


「おっちゃんそんな無理しちゃ駄目だよ。これからどうするの? 見た感じ上級レベルの霊体になってるけど」


「うむ、もう少し留まるとするかの! 少年の行く末を見たくなった! はっはっは!」


「そうしてもらえると、後々この子に説明する手間が省けるな」


 そう言うと、側で気を失っているテリスに目が行く。そこで彼女がほぼ全裸になっていることに気が付き、慌てて上着を被せた。


「はっはっは! 少年意外と初心ではないか?」


「年寄りのやっかみは質が悪い……」


 星光が燦々と降り注いでいた夜空も、今では地平線の彼方から夜明けの光が広がり始めている。兵士たちは重度の疲労からかその場でヘタレ込み、衛生兵のみがせわしなく動いている。


「兵士が来る前に一先ず退散! てっしゅ~う」


「「「「「お~う!」」」」」

ハリウッド版のゴジラ見て、深く考えないようにしました(笑)


だんだん文字数も上げて行きたい。今回6100字くらいですね。

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