4:獣人の村
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「一向に森から抜けだせないな……」
魔王城を出発した陸とフェブルがトボトボ歩き始め、森を一直線に進んでいた。特に当ても無くひたすら真っ直ぐである。感知スキルのお陰かは分からないが、方角を狂わせる事無く行き先に狂いは無い。そもそも宛てはないので狂いようは無いのだが。
「はい、この森は深く普通の人間が踏破するには2~3日掛かるでしょう。ですが、途中村がございまして……」
「村か、フェブルは俺の妹という設定だからな。言葉使いには気をつけろよ」
「なんと恐れ多い……しかし妹ですか……」
「容姿が完全にな……人間と接触する場合お互い人間の姿なので都合は良いが、子供二人がこんな森を歩いてたら不自然だ……」
「確かにそうですな。」
軽い打ち合わせを行いつつ森林浴を楽しむ二人であったが、フェブルは妹設定に困惑しつつも陸より年下に見える容姿をしてしまっているため諦めざるを得なかった。陸も、こちらの世界にきて5歳程容姿が若返っている。最初は戸惑ったが、老けるよりは良いかと前向きである。
「お、人がいるな……獣に襲われている。行くぞ」
「は、はい!」
前方には巨大な熊が幼い二人の兄妹を襲う所であった。二人は恐怖に震え上がり、妹の少女は兄の服を握ったまま後ろについている。兄はというと熊を凝視し、木の枝を構えているが、震えが止まらないのか棒先が激しく振動している。
熊が彼らを襲おうとする刹那、熊がゆっくり力なく倒れた。そばには、自分達と年が違わない兄妹がそこにはいた。
「おい、大丈夫か?フェブル、治療してやれ」
「はい!」
傷は掠り傷程度。
逃げ回ってるうちに転んだ(^ ^)か、枝に引っかかって出来たものだろう。二人も落ち着いてきたのか、何度もお礼を言われ自己紹介された。兄はフロウ、妹はリサというらしい。っと良く見ると頭の上に耳があり、おまけに尻尾まである。そう獣人である。獣人は力はあるが、あまり器用ではない種族。人間の住む街でも力仕事を押し付けられたり、労働環境はあまり良いとは言えない。
「旅をしてまして、偶然この村にたどり着きました」
「偶然だと! 餓鬼がこんの森の中までこれるわけねーだろう」
「そう言われましても……換金しましたら帰りますので」
「け、生意気な餓鬼だな」
男はカウンターまで戻ると、何事もなかったように酒を飲み始めた。後に受付女から聞くのだが、彼は昔、人間に低賃金でこき使われた挙句、仕事が無くなったら即解雇されたため、心底人間を恨んでいるとの事だった。
ブラックベアの換金が終わると、足早にギルドを出て兄妹の家に向かった。ブラックベアは青銅貨5枚。この世界の通過は金貨、銀貨、青銅貨、白銅貨、銅貨となる。銅貨1枚1ルイで、100ルイで白銅貨。後は桁毎に硬貨が変わっていく。今回は青銅貨5枚なので5000ルイである。一食5~8ルイなので、なかなか高額ではないだろうか。
家では狩から戻ってきた父親が食事の用意をしていた。フロウは食事の手伝いをし、リサは母親の看病をしていた。入り口から覗いていたら、フロウに気付かれて招き入れられた。
「陸さん! どうぞ中へ。父さんこちらが助けていただいた陸さんです」
「おお陸殿、我が子を助けていただき感謝しています」
「いえいえ、たまたま通りかかりまして、間に合って良かったです」
陸は両親共に感謝を重ねられタジタジになっていた。今まで村の近くまでブラックベアは出たことが無く珍しいとの事。また、兄妹の父レックスは今日はホワイトディアーの群れが大量に見つかり今日は大量だったとの事。ホワイトディアーは、四本足の中型な魔物で鹿に近い動物だった。
「レックスさんは余り人間を嫌わないのですか?」
「そうだな~この村は人間にこき使われるのが嫌で出てきた獣人が多いから、嫌う人も多いけど、陸達には恩があるからね。元々我々獣人は誇り高い種族さ! 恩人は無碍にはできないよ」
★★★
森の奥では異様なざわつきを見せていた。元々森の奥に生息するブラックベアや、ホワイトディアーといった魔物達が一斉に移動を開始したのだった。まるで脅威から逃げるように森を駆けめぐる魔物達は、恐怖に覚え、この森の捕食者であるブラックベアでさえ逃げることに必死である。
そのブラックベアを追い回す彼等は緑の大群、ゴブリンである。ゴブリン1匹の力は弱いが、群れになると脅威になる。ゴブリンの繁殖率は高いが、数が増える前に、捕食者に襲われるのが、ゴブリンの常だった。今回どういう訳か、捕食者から身を守り、増殖し続け、ゴブリンの逆襲が始まったのだった。そのゴブリンの群れが、獣人たちの村に向かって進撃を始めているのだった。
次回は派手に行きたい!
ダンジョン編はもうちょい後になりそうだ