24:裏と表
今回は2話投稿です
あまり筆が進みませんでした~申し訳ナス
セルクリッド城の周辺には、有力貴族の豪邸が立ち並ぶ。
城を中心に、貴族の階級に合わせ、外へ広がって住む貴族の階級が分かる。上位の貴族でも、不祥事や、財政難となった貴族は没落し、外へ外へと追いやられるのだ。
しかし、折角手にした権力を使わないで腐らせるのも勿体無いという欲に負けて、腐敗していく貴族も珍しくない。
その一人がベルセルス・マルシアである。
マルシア家は代々セルクリッド王国に使える由緒正しき貴族であったのだが、一人っ子長男であったが故に、祖父母、両親より多大なる寵愛を受けが為、歪んだ人格に育て上げてしまった。
我がままは全て通り、気に入らないメイドや執事はクビにしたりと、やりたい放題やっていた。成人になってもその傾向は変わらない。
変わったのは表立ってやらなくなった事だけだ。裏ギルドを金で動かし、自分を嗅ぎ回る目障りな貴族には刺客を送り、脅迫させる。
だが、ベルセルスの刺客だろうとは感じるものの、確定する証拠が無い為、各々近寄りたいとは思わなくなるし、関わりたくもなくなるだろう。
彼自身出世など興味が無く、世襲で得た今の地位で満足している。
故に回りの貴族からは腫れ物のように思われ、触らぬ神に祟り無しといったようである。
セルクリッドにも奴隷の制度はあるが、人間が奴隷になるにはいくつか条件がある。凶悪犯罪者が、炭鉱などで強制労働させられる場合と経営破綻、脱税や税金の未払いが発覚した時、自身を奴隷として売りにだし、借金や税金の足しにする場合が普通である。
そして、奴隷だからといって、何をしても良いというわけでもなく、奴隷に対しての暴力や、殺人に関しては国の法律で裁かれる。
年齢制限もあるし、幼い子供は奴隷にはなれない。
だが、ベルセルス・マルクスの奴隷達は全て裏ギルド経由で連れ去られてきて、強制的に奴隷となった子供たちである。
ベルセルスは、身の回りの世話は子供達にやらせ、粗相があると、理由を付けて罰を与えた。
服を剥ぎ取り、鎖で繋ぎ鞭を打つ。時にはベルセルスの性癖が暴走し、目も当てられない辱めを与えている。
子供達の叫び声や悲鳴は地下室から漏れでる程激しいものだった。
いつもなら、奴隷の反応に飽きた頃にダッチに依頼し、子供を攫わせるのだが、今回は、向こうから連絡をしてきた。
なにやら上玉が手に入ったとかで、直ぐに買い取って欲しいとの事だった。
その連絡を受けてからというものの、口の中の唾液腺からよだれが滴る。
「ぐふふふふぇふぇへへへへへっふゃっふゃっふゃ」
ベルセルスの無自覚な下品な笑い声が、部屋の中で響いていた頃、ダッチの腕がへし折られ、盛った筈の睡眠薬で気絶させられ、命を狙うであろう刺客が迫ることなんて思っても見ないことである。
★★★
「ここか。やっぱ貴族っていい家に住んでるね~」
「人間とは、無能な人間でも親の力で貴族に成れますからな」
「魔族は違うのかい?」
「魔族の階級は力でございます。力の無い貴族は、弾圧され、滅ぼされるのが常でございます」
(故に、魔族は精進しかないのだ。だが、目的、手段を厭わないがな)
「厳しい世界だな・・・」
「な、なんの話をしているのですかな?」
デルクはビクビクしながら二人の話を聞いていた。得体の知れない幼い容姿の二人に、(正確には陸一人だが)借りにも闇ギルドの実行型構成員があっさり負けるなど想像できなかった。
闇ギルドには戦闘以外の、様々なスキルを持った人間が集まる。
それは、工作や、売人。
死体処理などの戦闘以外に請け負う戦闘以外の仕事が多いからだ。
暗殺専門も居るが、暗殺といった大口は、滅多に受注されない。
そんな頻繁に暗殺が起こっては、国の治安も地に落ちるというものだ。
彼らはあまり派手には動かず、細かい仕事を数こなすものだ。
だが、実行型は、細かい仕事が苦手であり、大口を貰って大金を貰う。
一度貰った大金の味は蜜のように甘い。
現にダッチは、誘拐した子供を売りつけるルートを確立したが為に、調子に乗って痛い目にあってしまった。
この後の陸の行動で、腕だけでは済まなくなる可能性もあるのだが、彼らはそれなりに戦闘能力をもっているのである。
もし、護衛に撃退され、身元がばれた場合、ギルド自体の危機に陥るのである。
故に、ギルドでは、生半可な実力者では、大口はやらせないし、暴走して受注したとしても、上部組織に粛清される。
★★★
上部組織とは、裏のギルドの幹部や、その直属に当たる組織である。
トップはおらず、四つの柱で構成されている。
末端の連中は上部の連中の顔も名前も知ることはできない。
幹部達は、定期的に集まり、組織の方針や、現在の状況について話合う事になっている。
「最近物価の上昇で取立てが上手くいっていない。ぼちぼち使い潰す必要がある。」
「最終的には奴隷化だが、露骨にやると、赤服に睨まれるぞ」
セルクリッドでは、赤騎士隊という警備部署があり、国の治安維持、犯罪者の逮捕・収容。
収容した者達の監視、出入国管理など日本で言う、警察と刑務官と入国警備官が一緒になっている。
その赤騎士隊の制服が文字通り、赤色の為、裏の世界では、敬愛と皮肉を込めて赤服と俗語で呼ばれている。
彼らの制服は夜動くには目立ち過ぎるのだ。
「魔王の襲撃も構わないが、糞貴族の買占めが酷い」
「あいつらの身勝手さは、今に始まったことじゃない。俺らが言えた事じゃないが」
「全くだな。さて、貧乏農民を焚きつけて貴族へ反乱でも起こさせるか?」
「国が無くなったら俺らの稼ぎ場所がなくなるだろ。俺らは革命家じゃない」
「取立てと一緒だ。生かさず、殺さず」
「では、次の大口の案件の話をしようか・・・」
薄暗い部屋の中、四人の謀略が踊る。
セルクリッド国に潜む陰は、しっかりとした国力をあざ笑うかの如く中から染めていく。
人間欲に勝る者など多いとも言えないだろう。
欲こそが人間の原動力でもあるのだから。
変体貴族は敵にしやすいタイプですよね~




