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魔王軍と一緒  魔王の魂と合体!?魔力無限でやりたい放題!  作者: おばっち
1章:セルクリッド編
23/74

23:格の違い

3話目です

「糞、糞、くそぉおおお」


 月明かりを頼りに、ベヒモスに乗った2体の魔王は、脱兎の如くセルクリッドを後にした。

 ベルフェを失い、謎のゴーレムには全く刃が立ず、逃げ帰ってきた事にイーリアスのプライドはガタガタと崩壊していた。

 以前人間は虫けらと罵っていた故に、その衝撃は計り知れない。


「イーリアス……」


 フィヨルドも掛ける言葉が見つからなかった。

 彼自身も油断さえしなければ負けるとは思わなかったからだ。


 それも魔王3体も揃って。


 軽く遊びに来たつもりだったが大きな事故を起こしてしまった。


「イーリアス!」


「なんだ!うるせーぞフィヨルド!!」


 フィヨルドが呼びかけと共にベヒモスを制止させた。

 

 進行方向の先に、人影があるのが分かる。


 日の沈んだ荒野に、少女が一人。


 明らかに不自然なシチュエーションだ。


 今いる場所から20km圏内は何も無い荒野なのだから。

 人間一人、しかも幼い少女がいる事自体ありえない。


「なんだテメー」


 闇より姿を現したその女は、巨大な槍を大鎌に担ぎ、こちらに挑発の目を向けている。


「おい!聞こえてんだろ!」


 イーリアスの呼びかけに、その女は口元が緩み笑っていた。


「あんたら弱い癖にぃ、魔王名乗ってるんじゃないわよ」


 赤い瞳の少女は、黒いフード付きのローブを靡かせながら魔王2体を挑発する。

 その挑発を受けた2体はというと、ポカーンっと面を食らっていた。

 といのも目も前の少女からはなんの魔力も特殊な力も感じられなかった。

 変わっているといえば大鎌か、農具で使われる大鎌よりも、装飾が施され、不気味さが際立つ。


「おい、今機嫌がわりーんだ。殺す。」


「イーリアス!!」


 目の前の少女が消えたと思った瞬間にイーリアスの首が飛んだ。

 血飛沫は噴水の如く立ち上り、胴体はバランスを崩し、ベヒモスから落下した。


「おのれ!」


 フィヨルドの20m範囲内全ての地面から無数の氷の槍を生やし、少女は宙に舞う。

 

 瞬間に再度全方面に氷の槍を展開する。


 彼の周囲は氷の幻想的な空間に包まれた。月の光が氷に反射し、いくつもの屈折を繰り返し、光の結晶が生まれた。


「あは、あなた、芸術家にでも生まれ変わりなさいなぁ」


 光の結晶はフィヨルドの鮮血が氷全体を塗り替えて、フィヨルドの輝きは、闇に葬られた。


「あっけないわねぇ。でも、これであと一体だわぁ」


 少女は残されたベヒモスを有無を言わさず首を落とし、斬殺した。


「あら、この豚ちゃんを、足にすればよかったかしらぁ」


 その少女は、トボトボと、セルクリッドの方へ足を進めるのだった。




 ★★★




 ディックは焦っていた。


 食事を御馳走するといって、知り合いの飯屋に連れて来たは良いが、この二人の異常性に計画が狂っていた。


(なんなんだ、さっきから睡眠薬入りのディナー馬鹿食いしてるのに、全く意識をうしなわねぇ・・・)


「おじさん。夕食まで御馳走してもらってすみません」


「お、おう。いいんだよ。ここは俺のダチが経営してる店なんだ。美味いだろ?」


 ディックは軽く陸に受け答えすると、カウンター奥にいた、同じ「黒き太陽」の構成員のデルクに小声で話しかける。


「おい、なんで眠らないんだ・・・ちゃんと薬入れてんのか?」


「水、米、肉、スープ。全部に入ってるよ。薬も信用あるとこで買ってるんだ。あの二人異常だぞ。特にあの小僧の持ってる武器。あれは魔刀だ。ディック、悪いことはいわねぇ、手を引け」


「くそ、あの馬鹿貴族に話しつけちまった。もう引けねーよ」


 ディックは陸とフェブルが食事をしている最中、別のテーブルにいた自分の部下に使いを出し、話を付けさせていた。

 意外だと思われるかもしれないが、闇の仕事は信用が全て。

 やる事が非合法なことばかりなので、一度でもしくじれば、依頼主にも悪名が付き、迷惑がかかる。

 依頼主の殆どが、貴族や豪商だったりするので、評判や、面子はかなり気にするのである。

 闇ギルドも信用を失えば、仕事は入ってこないし、しくじった構成員は粛清されるか、依頼主の変わりに国の法律に処罰される事になっている。

 故に、ダッチは依頼失敗による粛清を恐怖していた。


「おじさん、そんな汗掻いて大丈夫?水飲むかい?」


「い、いや(それは睡眠薬ドバドバの水じゃねーか)。俺には酒があるから平気だ(くそ、どうしたらいいんだ)」


「でも顔色わるいよ?」


「あぁ、ちょっと酒を飲みすぎたみたいだ(どうする、どうする、どうする!?)」


「じゃあ、やっぱり水飲んだ方がいいよ~」


「そ、そうだな。デルク、水を貰えるか?(相手は餓鬼だ・・・力なら俺のが強えぇぇ!)」


「おじさん、こっちの水飲んでみなよ……」


 陸の挑戦的な目に、ディックは一瞬怯んだが、此処でやるしかないと覚悟が決まった。

 もう破れかぶれの状態で、精神も削られた男が取った行動は単純だった。


「うらぁぁぁああああああ!」


 ダッチの体重の乗った右拳は陸の横顔を狙い、そのまま真っ直ぐ伸びていった。


(傷つけると商品価値が下がっちまうが、しょうがねぇ、こんな気味の悪い奴さっさと……)


「うがぁぁあああああやああああぁぁぁあ!!!!」


 ディックの右腕は、肘を軸に在らぬ方向に曲がっていた。

 そして、殴られる筈の陸は、いつの間にかダッチの傍に立っており、痛みに苦しんでいるダッチの口に、今まで飲んでいた水を飲ませるのだった。


「がぼぁああがはっ」


 ディックは睡眠薬入りの水を飲まされ、痛みと眠気に耐えながらも、陸を目で捉えようとしたが、次第に意識が遠のいていった。


「人間というのは、浅い知恵しか持っておりませぬな」


「特にこういう下種なやつはな。おい、デルクとかいったか?」


「ひぃっ!」


 デルクはこの二人の異常性はうすうす感じてはいたが、先ほどまで和やかにに食事をしていた幼い少年少女らが、冷徹な行動を取ったギャップが恐怖感を演出させていた。


「さっき話してた、糞貴族の所まで案内してくれないかな?」


「それは…そんなことしたら俺まで粛清されちまう!」


「ならこいつと一緒に死ぬか?お前はこの国からさっさと居なくなればいい」


「ぐうっ……わかった。案内する」


 陸は子供を誘拐して、鬼畜な所業を繰り返す貴族を許せなかった。

 陸は感覚を研ぎ澄まし、ディックとデルクの小さな会話を聞き逃すことなく、子供の身体を侮辱し、命さえも左右するような下種を陸は放って置くことが出来なかった。




 

魔王3体は噛ませやったんや・・・

下種に裁きを与えたい!

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