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魔王軍と一緒  魔王の魂と合体!?魔力無限でやりたい放題!  作者: おばっち
1章:セルクリッド編
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16:野良猫のワルツ

 ガタゴトと揺れる馬車には、ウィークタウンより集められた冒険者が王都セルクリッドへ向けて走っていた。

 今回の要請では、特にランク規制が無かった為、ランクも様々だが、ギルド長の指示で低ランク冒険者は後方に待機させ、支援させる布陣をとっている。

 前衛には対魔術戦に備え、魔力の高いパーティを揃えており、中でも女性魔術師4人でパーティを組んでいる「野良猫のワルツ」は異彩を放っていた。

 このメンバーは王都や他の地方から旅に出てきた若い魔術師が、偶然にもウィークタウンに集まり「野良猫のワルツ」が結成された。


 「魔王だろうが魔人だろうがまとめてポイよ」


 「野良猫のワルツ」リーダーのメリッサは、お調子者でそそっかしいため、性格的にリーダー気質ではないが、結成当時じゃんけんに負けてしまった為にしょうがなくやっている。


 「メリッサ、靴紐が解けているわよ」


 パーティーのしっかり者ポーラは、氷魔法と回復魔法を得意であり、攻撃、回復どちらともこなす彼女はパーティにとっても貴重でる。


 「魔王級に私の新魔法がどれ程通じるか楽しみ……ぐふふ」


 変わり者で戦闘狂。


 研究熱心だが、ついつい方向がずれていくロレッタ。


 「あらあら。ロレッタよだれが」


 パーティー1の爆乳メルは、性格はおっとりだが、悩殺のメルの異名を持っている。


 「メルの乳タプタプ・・・ぐふふ」


 「きゃっ、もーロレッタたら」


 「まったくけしからん乳だ」


 「ポーラの貧乳も素晴らしい……」


 「やかましい!」


 ポーラの杖が、ロレッタのデコにコツンっと直撃する。「あうぅ」「あらあら」などまったく緊張感のないメンバーにメリッサも呆れ顔だった。寧ろ、この中でメンバーを引っ張っていけそうなのはメリッサしかいないわけで、メリッサがじゃんけんに負けたのはこのパーティーにとって僥倖であったのだろう。


 「もう直ぐ魔王さんとご対面だよ!気を引き締めてね!」


 「ほーい」「ぐふふ」「あらあら」


 「だめだこりゃ……」


 ギルド長も、隣の馬車から彼女達の様子を見ていたが彼女達ははやるときはやるのだと信じていた。信じるしかなかった。不安は残るものの、実績は確かなので自分の心配をする事にする。


 ★★



 炎帝こと魔王イーリアスは打ち落とせない蠅共にフラストレーションを溜め込んでいた。

 敵からの攻撃は対したダメージにはならないが、敵が安全圏から攻撃してくる所に腹が立つ。

 敵の高度が高い為、広範囲に火球を広げて爆発させるのはめんどくさいし、敵の攻撃で打ち落とされることもしばしば。

 魔力の残量はまだまだ余裕だが、人間相手に魔力切れしたとなればいい笑い者になってしまうため、それだけは避けたいが、かといって、節約して範囲を狭くすれば当たらない。


 「くっっっっそ腹立つ!」


 「……帰る?」


 「あ゛あ゛!?」


 「まぁまぁ、もう直ぐ目の前に馬車に乗った人間共が来るであります」


 「む、確かに近づいてくる気配があるな。航空戦力があるのに歩兵投入とは……乱戦を想定してないな。それとも上は囮で、歩兵が本命か? いや、両方囮もありうるな。どちらにせよ、潰さないと王都は攻められないって事でいいんだよなあ!」


 「そうでありますな」


 「……調子どう?」


 「絶好調だよ!おらぁ」


 イーリアスの放った紅の弾丸は、5キロ程離れた馬車群の先頭に着弾した。




 ★ ★



 何かが飛んでくる。


 それだけは分かった。


 赤く何かが光ったと思った瞬間、用意しておいた対魔法結界に衝撃が走った。

 

 目の前は朱色の炎が燃え盛る。


 「ちっくしょぉぉ! 不意打ちだけにびっくりしたじゃねーか!! ポーラ! 追加で結界一つ、ロレッタ、メルは私のバックアーップ」


 「ほーい」


 「「あいあいさー」」


 馬車は縦に長く広がり、魔王達へと接近する。

 イーリアスが馬車へ攻撃を仕掛けるが、飛竜からの遠距離攻撃で妨害された。

 そして、王都への攻撃が少なくなったことを機に、城壁からの援護射撃が始まり、場車体、上空、城壁からの集中砲火を受ける形となった。

 流石にイーリアスも攻撃に転じることもやや難しくなり、防戦一方に形勢が逆転した。


 「……押されてるね」


 「うむ、人間もやりおる」


 「煩わしい煩わしい煩わしい……」


 「む! イーリアス、束縛術式だ」


 「くそがぁぁああああ!」


 イーリアスの足元を中心に魔法陣が展開されていく。城壁の魔術師による集団術式で、魔王クラスでも束縛可能な上、遠隔で魔法陣を完成させる手軽さがある。

 しかし、イーリアスも3方向からの攻撃を防ぎながら、体内に魔力を溜め込み、一気に放出。地面は魔法陣ごと捲り上がり、半径50メートルのクレーターが形成され、全方向に衝撃派を飛ばし、兵士の体勢を崩した。


 「フィヨルド、ベルフェ、済まない手伝ってくれるか?」


 イーリアスは頭を冷やしていた。


 人間は思ったよりやる。

 

 やり口は気に入らないが、そもそも力の無いもの達が力を合わせて立ち向かっている所は素直に賞賛する事にした。

 だが勝ち負けの勝負となっては話が変わる。人間には負けたくない。

 強い思いが、イーリアスの高いプライドを打ち崩すまでにいたった。


 「そろそろ出番だと思っておりましたよ」


 「……恩を売る」


 今までアンチョビサンドと追加で食後のコーヒーまで飲んでいた二人が、イーリアスの懇願により、重い腰を上げた。

 フィヨルドは自身達を囲むように氷の結界を張り、3方向全ての攻撃を無効化した。

 そして、次の攻撃準備の為、魔力を練りこんでいる。

 その間ベルフェは[鉄(クロガネ)]の扉を出現させ、その扉がゆっくり開き始めた。

 中からは赤い光が幾多にも見受けられ、不気味さをいっそう引き立たせていた。


 「……人間どもを食らい尽くせ!」


 ベルフェの号令により扉よりぞろぞろと魔物達が出現した。

 多くは狼のような四足歩行の魔物や、ゴブリン、オークなど、下級魔族達が出現し始めた。

 下級魔族達は、馬車隊に向かって突撃を始め、広範囲に展開する。

 この状況に焦った飛竜部隊や、城壁の魔術師達も、遠距離から応戦するものの、数が多すぎた。

 魔法でふっ飛ばしても、扉からわさわさと魔物が現れてくるのである。

 いくら下級とはいえ、戦慄する程での数であり、飛竜部隊も作戦を変更し、扉の破壊を狙うがいくら攻撃しても破壊することが出来ずにいた。

 しかも、残り魔力と、飛竜の飛行可能時間も迫っていたため、一時他の部隊に引き継ぐ事にした。

 他の部隊も優秀ではあるが、前隊ほどのスペックは持ち合わせていない為、前線での活動は控えめとなった。

 一方馬車隊では、前衛だった「野良猫のワルツ」を後衛に下がらせ、接近戦準備に追われていた。


 「なんだありゃ、雑魚がわんさか沸いてやがる……」


 「……アニキ、あの量は骨が折れるですわ……リアルに骨折れそうですわ」


 「くだらねーこといってんじゃねぇ。生きる事だけ考えろチロル」


 「確かにこれは……魔王、これほど厄介なものとは」


 エルフ族のノービスは、遠くからも魔王達の力を感じ取った。が、今更戦う事意外無いことに一度絶望したが、仲間達を守る事への使命感が働き、震える身体を無理やり動かす事ができた。


 「魔王共の好きにはさせない!」

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