13:若き王
相変わらず更新が遅くて申し訳ナス
ランキングに載る程ではありませんが、更新するたびにポツポツお気に入りに入れてくれる方が増えて喜びを感じておりやす。
感想などいただけると更新が速まるかもしれません(笑)
「いい朝だな~今日は何処へいこうか」
「南西になにやら怪しい洞窟があると小耳に挟みましたぞ」
「なに! 良くやったフェブル、早速調査だ!」
「承知つかまつりましてございます」
陸とフェブルが冒険者ライフを満喫している中、遙か北の氷の大地では、若き魔王3人が、人間の国に殴りこもうと、氷帝フィヨルドの飼いならしたべヒモスの背中に、セリクリッド王国へ向けて進んでいた。
この3人衆は、各々の種族を束ねた事により王として魔族を治めていたが、この3人が偶然にも気の合う者同士であったがために、時折茶を沸かし、友好を深めている。
ベヒモスは移動用としてはもちろん、個体自体のステータスも高い為、魔王御用達の移動用魔獣として近年流行っていた。
ベヒモスは忠誠心が強く、自分より強い者に従う性格なので、扱い易さとしては最高である。
「まだ着かねーのか?」
「まだ出発して少ししか経っていないのである。イーリアスは短気過ぎるのである」
「あーイライラしてきた。早く殺りてー」
「病気……」
「あぁあ! なんか言ったかベルフェ」
「♪~」
「この糞餓鬼……」
「まあ、落ち着くのであります。焦っても距離は縮まないのであります」
フィヨルドは毎度の事の様に場を納めながら、進行方向に顔を向け目的地を目指す。
フィヨルド自身に戦争や国取りにはあまり興味は無い。軽く運動してみようかなっといった、運動不足が気になる中年サラリーマンのような発想である。イーリヤスは俄然やる気十分だが、ベルフェは観戦者気分だ。今回ベルフェの能力が見れればと微かな期待を込めては見るが、こちらも相変わらずだろう。
(やれやれ、このお転婆娘はいつになったら丸く落ち着くのやら)
★ ★ ★
セルクリッド王国では、一時の混乱は収まり平穏を取り戻しつつあった。
未だに城壁を囲むように火属性対策の結界や、魔族に対する結界諸々展開されている。
セルクリッド魔法省では結界を作る魔法道具や、魔法陣の研究が急ピッチで行われており、現在も進行中であるが、そのお陰で魔法に対しての対策は万全ともいえる。
結界も減少、分解、吸収、反射などの層に分かれ、しかも内側からの魔法は通すという進化まで遂げた。
戦争によって文明が発達するとは良く言ったものだが、命がけになればそれは必死に研究するのは当然であろう。
「ここまでやってもまだ安心は出来ぬな……」
セルクリッド王国魔法省大臣デルメルは、白く長い顎鬚を撫でながら、パイプをふかしている。
余談だが、パイプはタバコと違い、煙を肺には入れず、葉っぱの香りを口の中で味わうものである。
産地の違う葉っぱを自分でブレンドするのも一つの楽しみ方ではある。
「デルメル様! 北より、強力な魔力反応を確認!! 至急王宮へ!」
「北から!? またこんな時に……」
口から一気に煙を噴出し、トボトボと歩き進めた。御歳73歳のデルメルにとっての急ぎ足である。
一度は隠居を考えた彼だが、後継者が腑抜け揃いだと感じ、一人気張って現役を続けるのであるが、才のある者にはこんな窮屈なポジションにはいて貰いたくないという考えも彼にはあった。
王宮の中の一室、金属製で重量感のある特別会議室の扉を開くと、王メルドを初めとする各省庁大臣や、勇者エミリーなどが席に付いていた。
「遅くなって申し訳ない。一大事だそうですな」
「えぇ、魔王級三体が急速に接近しているようです」
「若き魔王共か……やつらの悪ふざけは目に余る」
「ところでデルメル殿、結界の方は完成されているのですかな?」
「はい、複数の結界を重ねております。魔王三体といえども、魔法陣他、魔法省の結界術士を永続的に展開すれば、一時的には何とかなりましょうが、持久戦となった場合、不利になるでしょう。」
「弱ったのう……誰か打開策を持っている者はおるか?」
前回の魔王級接敵戦では、律儀にも魔王からの宣戦布告があったため、準備がし易かったのだが、今回は奇襲である。
それも3体。
今回は運良く結界の研究が進み、城壁には強力な結界が施されていた。
セルクリッド王国は、城を中心に城下町があり、その城下町を囲むように城壁が建設されている。世界の国々の基本的な形であろう。
魔王三体の気配を察知した王政府は、市民を区画別に用意されている地下シェルターへ非難させている。セルクリッド王国は、地理的にも、魔族からの侵略を受けやすい為、防衛意識が高い。
だが、魔王級3体は未だ未経験であり、対処が追いつくのか不安であった。
「隣国の冒険者を傭兵として雇うのはどうか?」
発言されたのは勇者エミリーだった。彼女は元々冒険者だったが、魔王戦の際に前線で指揮を取り、勝利を呼び寄せたのだった。
それ以来セルクリッド国勇者として、冒険者代表として会議に出席している。
「うむ、緊急要請としてギルドを通して連絡を入れて欲しい。軍の場合、出し渋る癖にネチネチ恩着せがましいからな。だが、背に腹も変えられん。一応要請しておこう。だが、これらで打開出来るとは思えんな」
「メルド国王様、非公開ではありましたが、新しい結界術式がございます。この術式は、従来の結界術よりも、魔力消費を大幅に抑えることで、少人数で効果的な結界を張ることができまする。但し、結界を張り直すには、今の結界を解除せねばなりませぬ。そして、結界発動までに時間がおよそ15分。今からでは初撃は間に合わず、一度攻撃を受けてしまえば解除の間がありませぬ」
「初撃の犠牲か、展開中の犠牲か……」
「あいつ等の事だ、初っ端でかいのかましてくるに決まってる」
「エミリー殿、お詳しいようですが?」
「あぁ、一度見たことがある。暇つぶしに国を潰す奴らだ。」
一度は希望を見せたが、再び重苦しい雰囲気の会議室に逆戻りだ。いかにして死の15分を凌ぐかが争点となったが、議論はなかなか進まなかったが、各国の冒険者と、国軍の援軍要請は、国のホットラインである通信魔法により直ぐ様行われた。
「最終的には援軍を囮に使い、結界を張り直す。援軍が遅ければ、最悪我が軍が囮になると」
「国王様、軍は国民を守る為に存在します。躊躇う必要はございませぬ。我ら、そこまで柔ではございませぬ」
セルクリッド陸軍元帥は国王の瞳を見出した。彼なりの覚悟の表れであるとメルドも理解し、納得した。
「それもそうだな。いざとなったらよろしく頼む」
「ははっ」
会議も終盤、大雑把な予定が終わり、細かい所を詰める作業に入りかけた所であるが、紅の火球が結界に直撃した。
※陸は誰にも魔王だと認識されていない定で、話が進んでいます。




