12:永遠の月
2回目投稿です
よろしくお願いします
ウィークタウンの嫌われ者、凸凹コンビはギャスターとチロルはというと、毒霧の外に居た。
毒もどのような作用があるか分からず、だからと言って上に連絡することはしない。
折角の獲物を譲るなど、この二人には考えられないことであるからだ。
「アニキ……」
「あぁ、タクシャナは頭がいい。捕食中も毒を撒き、天敵を寄せ付けない。やるなら捕食後の一瞬だが、これだけ濃く吐かれちまうと近づけねぇ」
ギャスターの得物は逆「く」の字をした40cmの短刀である。イメージとしてはククリ刀だ。
この世界では、「首落し」と呼ばれ、魔物や、動物の首を落とすのに有効な狩猟道具だ。ただ、ギャスターの手にある「首落し」は刀身が長く、普通20~30程である。
また、サーベルとは逆だが、刀身が曲がっていると、遠心力が掛かり易く威力も増すので、連戦で切れ味が悪くなっても、文字通り叩き切る事ができる。
そんな物騒な物を手の平でぺしぺしと叩きながら、現状態を観察するが、次の瞬間二人は驚愕する。
「おい、あんな奴ら会議室にいたか?」
「見覚えがありませんぜ、アニキ。あんながきんちょ共、Cランク以上なんですかね?」
何処と無く現れた二人の少年少女は、有ろう事か毒霧の中に突き進んでいった。
ギャスター達もこれには動揺を隠せず、呆然と彼らを見ることしかなかった。
「おいおい、毒霧に突っ込んでいくぞ! 馬鹿か? 馬鹿なのか!?」
「自殺行為ですぜ。あんな真似できるのはBランク上位かAランクくらいですよ」
「無知は罪ってか、たまたま居合わせたんだろうがご臨終だな」
しばらくすると、辺りの毒霧は晴れ、タクシャナ討伐のチャンスとなる。タクシャナは得物を飲み込んだ後は、動きが鈍くなる上に、毒霧も吐きにくくなる。ギャスター達も、このチャンスは願ったりだった。
狙ってはいたが、A,Bランクの冒険者を地中でやり過ごし、弱者を狙い打つタクシャナにも驚いたが、とにかくチャンスはチャンスだ。
「とにかく行くぞ、得物はでけぇ、油断すんな」
「あい、アニキ」
二人は口を布で塞いだまま、得物を抜き、突撃する。チロルは刺刺しい鉄球が先っぽに付いたメイスを、ギャスターは首落しを水平に構えて突撃する。
だが、二人が目にしたものは、餓鬼二人がタクシャナの肉を何事も無く食っている所だ。タクシャナの素材は珍しく、目の前のサイズならば80万ルイはくだらない。にも拘らずにこやかに食事をしてる。
自分達が追っていた四人は回復魔法でも掛けたのだろう、どうやら無事のようだった。
「……おい、お前らがやったのか?」
「そうだよ、一斉に人が森へ入ってきたけど何かあったのかい?」
ギャスターの最初の予想は森で迷った糞餓鬼だったが、今では他の街のギルドから来た凄腕の冒険者と位置づけができた。
見た目は餓鬼だが、目の前の有様を見てしまうとそう思えるしかなかった。
「あぁ、坊やが殺っちまったそいつを討伐する為にみんな森へ入ったのさ。てか、それめちゃくちゃ高く売れるんだぞ……良く食う気になるな。毒とか平気なのか?」
(なんで人の気配が分かるんだよ……毒も効かないみたいだし……スキル複数持ってんのか? 関わりたくねーな……)
「なかなかいけるぜ、にーさん達も食うかい?」
「いや、いいわ」
チロルは物珍しそうに目をキラキラさせていたが、流石に毒物は食いたくない。
「お、どうやらみんな集まってくるみたいだ! あとよろしくー」
「お、おい。これどうすんだよ!」
「お兄さんにあげるよー」
「ふざけっ……なんなんだよ」
陸とフェブルは高速で森を移動し、あっという間に姿を消した。しばらくして、高ランクの冒険者が気配を感じ、集まってきた。
「ギャスターまた、人を騙して狩りをしてやがんのか?」
「ああ!? 俺がいつ人を騙したんだ? それにこれは俺じゃねぇ」
真っ先にやってきたのはエルフ族の冒険者ノービス。弓と魔法が得意で、ランクAの実力である。気配探知も得意で直ぐ現場にやってきた。
「あそこに転がってんのは「赤い月」か……出しに使っただろ」
「たまたまだろ・・・俺らは毒霧を吐かれた後だから近づけなかったんだ」
「そうかい、まあ、生きてるし良かったか。で、こいつどうするんだ?」
呆れた様に頷きながら、タクシャナの遺体を指差すノービス。ギャスターのコンビは街では有名だし、何度も現場で顔を合わせた事はあるが、毎度毎度やり口が汚いと思うノービスだった。
「そいつは取り敢えず俺んだ! 貰った!!」
★★★
タクシャナ討伐要請はギャスターとチロルによって討ち取られた事になり、冒険者の間でもより、悪い噂が流れるのだが、彼らにとっては平常運転である。
辛うじて助かった四人は意識も回復し、リハビリがてらランクの低い討伐依頼をこなしている。
「っくっそ~やっぱり俺らレベルが足りねーな!」
「ぼやいてないで! ベスタ右からくるわ!!」
ベスタとエリは前向きな性格為、立ち直りが早かったが、一番ショックを受けていたのがミリーだった。皆を治す、守る筈の役目すら出来ないなんて、自分の存在理由が無いからである。
助かってはいるが、また、自分の所為で、みんなが死んでしまう事になると思うと、胸がはちき切れそうだった。
一度は冒険者を辞めようと打ち明けたのだったが、ベスタを始め、「赤い月」総出で説得された。
「今までこうしてメンバーが揃ってるのはミリーのお陰!」
エリは励まし、「今回は俺の不注意が原因でもある」罪を分け合うレックス、「死ぬときは皆一緒さ!」空回りの優しさを出すベスタ。
皆暖かく、ミリーの心は癒されていった。
「わだじ、がんばぁる」
ミリーは、上を向いていたが、ミリーの瞳は、皆の温かさで溢れていた。
ミリーダークサイド編も一瞬考えましたが、一瞬でボツりました。ありがとうございます。




