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第九話

 ――ヒュン。

 小さく音を立てて飛ぶ、フォーク……。

 それはお兄様の右目を目がけて飛びました。

 ですが、無駄に良く回る頭と無駄に高い身体能力のお兄様は、スープを口に運ぶために手に持っていたスプーンでそれを叩き落とし。

 金属がぶつかる音が響き。

 その後に床に落ちる音が響きました……。

 えっと、とりあえず。 

 早急にレティに謝ってくださいませ……お兄様…………。

 今ならばまだ――恐らくですが、引き返せると思いますから……。

「チッ、外したか……」

 舌打ちと、苛立ち交じりの低い声がしました……。

 ……あぁ。

 もう、取り返しがつかないのですね…………。

 …………さて、私はお食事に専念します。

 だって、こうなってしまっては何を言っても聞かないのですから……二人とも。

「ちょっ、レティ! フォークは投げる物じゃない、肉とかを刺して口に運ぶ物だ!」

 食事の邪魔をされたことが気に入らないのでしょうお兄様は、声を荒げました。

 が。

 レティに反省の色はありません。

 そうですね。

 黒い微笑みならば、浮かんでおります。

「ふふ。刺す物。だよねぇ?」

「だ、だからって人間刺しちゃダメだろ!!」

「え……? あなたのどこが人間ですって?」

「すべてだ、すべて! 俺は人間!!」

 心底驚いたかのような顔と声で言ったレティに、お兄様は相変わらず声を荒げております。

 んっ……。

 このスープ、おいしい……。

 と、まぁ。

 そのようにお食事を楽しんでいましたら、いつの間にかお兄様とレティが『決闘だっ!』っと叫んで外へ出て行きました。

 まったく。

 困った二人です。

 照れ屋さんなレティと、そんなレティの気を引きたいお兄様……。

 …………いえ。

 お兄様については自信がありませんが、お兄様はレティの前だとさらに生き生きとなさるのです。

 人々を驚愕に陥れること以上に生き生きと……。 

 ふぅ……。

 もういっそのこと二人とも婚約してしまえば良いと思うのです。

 だってレティは昔からお兄様一筋で。

 『何であんなのが好きなのが自分でも分からない』と言いますし、お兄様はお兄様でつい最近。

 婚約していたご令嬢と当主を絶叫の上、気絶させて婚約破棄を願われたくらいなのです。

 そしてそれにお兄様は嬉々として頷き。

 お父様は『申し訳ない』と婚約していた令嬢と当主に謝罪しておりました。

 ……そんなことがあったというのに、お兄様の地位は揺るぐことはなく。

 今まで通り、変な――いえ、真実が民はおろか貴族や大臣たちの耳にすら、入ってはいないのです。

 宮仕えのもの以外は誰も知らないのです。

 よくそのことを恐ろしく思いますが、お兄様がこの国を立派に納めて下さることを祈り。

 そして同じく。 

 私にその座が回ってこないことを切実に願っております……。

 さて。

 お食事を食べ終わったので、何をしましょう?

 そう考えつつフォークを置くと、ロイドさんとウィルロットさんがテラスに戻られるとのことでしたので、付いて行くことにしました。

 ……テラスの向こうで、お兄様とレティが戯れて居るのが見えます。

 お兄様。

 その手にお持ちの剣は、いったいどこで入手されたのですか?

 帯剣、しておられませんでしたよね……?

 というより。

 よくその膨らんだドレスで動けますね……。

 ましてやその細い腰を作るためのコルセット、ギリギリ絞めているはずですよね……?

 苦しくないのでしょうか?

 そしてレティ。

 貴方もその右手にある。

 その細くて短くて、鋭利な投擲用のナイフをどこから取り出しているの……?

 左手の鞭もね。

 ……やっぱり、ドレスの中なの…………?

「アン。そこは危険だよ。壁側こっちにおいで」

 落ち着いた、ロイドさんの声。

 私はそれに頷き、ロイドさんとウィルロットさんが背を預けている屋敷側の壁の傍に行きました。

「ほら。立っていると疲れるだろ」

 ロイドさんはそう言って椅子を持ってきて下さりました。

 ……ですが、私。

 レティのナイフが怖いです。

 とばっちりは嫌なのです……。

 などと考えた私をロイドさんはふっと小さく笑われ。

「大丈夫。ちゃんと守るよ。なぁ、ウィル」

「嗚呼。心配するな」

 そんなお優しいお二人の言葉に甘えて、私は椅子に座らせて頂いて。

 お迎えの馬車が来るまで。

 ロイドさんから手芸の手ほどきを受けました。

 お兄様とレティはというと――

 お迎えの馬車が来る少し前まで庭を走り回っておりましたが、暴れてすっきりしたレティの機嫌は直り、お兄様は息を切らしておりました。

 でも。

 そんな二人はやはり、生き生きとしていました。


 私はこんな幸福で温かい日々が、ずっと……永久とわに続くものと信じて疑っていませんでした…………。



 

 もうすでに。

 このエドレイ王国に不幸と地獄を呼ぶ、大きな大きな歯車が動いていたというのに………………。




おひさしぶりです。

ホント、気分で申し訳ないです。

改める気?ありますよ?ただ、ネタが見当たらないんですよ!

書いてる途中で『コピペになってる!!』って気づいて慌てて書き直してるんですからね……。

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