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第八話 

「れ、レティ――」

 『落ち着いて』と、声をかけようとしました。

 ですが――

 

 ――――パンッッ!


 鋭い音が、テラスに響きました……。

 響いてしまったのです……。

「ッ……」

 鋭く振りはらわれたレティの手のひらは、ロイドさんの左頬を打ち。

 打たれたロイドさんは反動で右を向いておられます。

 ……れてぃ。

 …………手が早いです……。

「次にやられたくなければ言葉を選ぶことね」

 先ほどまでの明るさは消えてしまい、レティの表情は……そう、激怒です。

 激怒しています……。

 ……でも、叩くのはダメよ…………。

「れ、レティ。叩くなんて――」

「じゃぁ、アンはこの失礼男の言葉を許せるの」

「え、えっと……」

 ど、どうしましょう。

 レティがすごく怒っています……!

 怖いです。 

 でも。

 叩くなんて――

「どうなの」

「あ、ぅ、うんと……ほ、ほんとのことだと―――」

「なんですって……?」

「あ、あっと。えぇっと……」

 うぅ……。

 レティがノエルさんになっています。

 私の手におえません……。

「ふぅ……。すまない、レティ、アン。失言だったよ。さぁ、手芸の授業を始めよう」

 いつもの優しい声で、そうロイドさんは言ってくださいました。

 おかげで、レティが怒りを納めてくれて、穏やかに手芸となりました。

 本当に、ロイドさんは素敵です……。

 こうして。

 私たち三人は手芸を行い。

 お兄様とウィルロットさんはチェスに興じておられ。

 穏やかに時間を過ごし、太陽が真上に来たお昼時。

 ノエルさんが『食事ですよ』と声をかけて下さったので、手芸を止めて片づけ。

 食堂に向かいました。

 この時。

 レティに叩かれたロイドさんの左頬は、見事に手のひらの形にはれ上がっていました……。

 とても痛そうです。

 私は食事をしつつ、ちらりとロイドさんの頬に目をやってしまいます。

 ……一方、レティはと言うと。

 ロイドさんの腫れた左頬をまったく気にした様子はなく、『おいしい!』と、食事を頬張っております。

 …………なんとも複雑です……。

 そして、ロイドさんは頬を冷やそうとしているノエルさんと話をしておられます。

 ですが、そんなノエル三を制して、微笑まれ。

 ノエルさんはしぶしぶといった様子で退室していかれました。

 ……冷やした方が良かったのではないのでしょうか…………?

 真っ赤ですし……。

「で、なんだルーフ。言いたいことがあるんだろ」

 ロイドさんはそう言って、お兄様に目を向けます。

 これにお兄様は楽しげにニヤリと顔を歪めました。

 【王子様】がして良い顔ではありません。

 あぁ。

 お兄様は【王子】ですが、【王子様】ではありませんでした……。

 ……お兄様は、個性的なのです。

「いやぁ。ただ、二時間立つが見事に赤いままだなと思ってな」

「だまれ」

 ロイドさんはお兄様を睨み――……髪型があまりにも優美のため、あまり怖くありません。

 やはり。

 ロイドさんはお綺麗です。

「てかさ、本人の前で言っちゃ駄目じゃね? そういうことはな、影で言って笑ってやるもんだ」

 ニヤニヤしながら楽しそうに笑い出したお兄様は、盛大にレティの地雷を踏み抜きました…………。


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