第七話
第六話のはじめを変更しました。
お時間があればどうぞ。
あぁ。
つい、お父様寄りの思考をしてしまいました……。
いけませんね。
お兄様をお止めすることを諦めるだなんて……。
この国の終わりを意味しそうで怖いです。
恐怖でしかありません……。
「ところで、ロイ兄。頼んでたの出来た?」
俯いてもんもんとしていると、レティの弾んだ声がしました。
……レティったら、何をロイドさんに頼んでいたのでしょう?
「え? あぁ、出来たよ。はい、レティ。こっちの青いのがアンの」
ロイドさんはそう言って、赤色の小さな紙袋と、同じ大きさの青色の紙袋を取り出され。
やや身を乗り出して赤色をレティ。
そして青色を私の前へと……。
えっと。
これは……?
そう思いつつ、おそるおそる手に取りました。
綺麗に折り目がつけられ、封のようにしてあります。
……これは、なんでしょう?
でも。
嬉しい……。
私はつい、俯き。
紙袋を両手で抱きしめます。
「ありがとう、ございます。ロイドさん……」
「ありがとうロイ兄! 開けてもいい?」
ニコニコと嬉しそうなレティ。
その手は折り目にそえられ、いつでも折り目を開くことが出来るようにしています。
……もう、せっかちさんね…………。
「いいよ、開けてごらん」
ふっと微笑んだロイドさんの言葉に、レティが嬉々として紙袋の折り目を開き始めました。
私も、せっかくなので折り目を開いてみます。
すると。
中から、白兎と黒兎の刺繍がされたハンカチが……。
あ……。
これ……。
前、ロイドさんが『作ってあげるよ』って、言ってくださった…………!
「あ、猫! 可愛い、ロイ兄ったら私のリクエストに答えてくれたんだ!」
「あぁ。ハートと猫だろ?」
「うん。でも私のイメージとちょっと違うけど、とっても可愛い!!」
「…………そりゃよかった」
若干失礼なレティの言葉に、ほっとしたようなロイドさん。
もう。
レティったら……。
ロイドさんを困らせて……。
「ねぇ、アンのはどんな感じ?」
レティのそんな問いに、私は背中を向けた白と黒の兎が可愛くて。
『兎さんが良いです』としか言えなかった私に、ここまで可愛いハンカチをくださるなんて……。
そう思い。
嬉しくて微笑んでしまいました。
「兎さんよ」
「わぁ、可愛い!! ロイ兄は本当に手先が器用よね……うらやましい」
「本当に……」
ロイドさんほど器用であれば、私はロイドさんにマフラーを編んで――。
……はぁ。
空しくなってきました……。
「こらこら、落ち込むな。練習すれば時期にうまくなるさ」
安堵させるよう、微笑んでおられるロイドさん。
……仮にそうだったとして―――
「私は、何十年後かしら……」
「それはいつ?」
私とレティは同じタイミングで、別の言葉を発していました。
ですが。
そんなことを気にはしません……。
……はぁ。
ロイドさんが遠いです……。
「さ、さて、作品を見せて、レティ。アン」
若干慌てたような声のロイドさん。
……このように素敵なものを見せた後に、現実を突きつけるのですね…………。
どうせ、私は器用じゃありませんよ……。
でも。
せっかくロイドさんにお世話になっているのです。
少しは上達したと言っていただけると嬉しいのですが……。
無理ですよね……。
そう思いながら上着のポケットに入れていた丸い敷物を取り出して、ロイドさんが見えやすいよう、両手に乗せました。
隣では、レティが自信があるように、布(?)を手に乗せています。
……何を、作ったのでしょう?
一瞬疑問が頭をかすめましたが、私の両手に乗っているモノも何なのか分からないものだったので、頭を抱えたくなりました……。
今すぐにでも、両手を机の下に隠したい衝動に駆られますが、ロイドさんのお言葉を待ちます。
そして―――
「……布きれと、毛糸…………?」
そう。
困惑気にロイドさんはおっしゃいました……。
えぇっと。
そうですね。
その通りです……。
返す言葉もございません……。
私はやはりというか、なんというかと、どうしたら良いのか分からなくなったので笑みを浮かべました。
ですが。
私の隣で、レティが怒りで肩を震わせています。
ここから見える彼女の顔が怖い……。