第四話
………………無駄な努力とか、言わないでくださいませ…………。
落ち込んでしまいます……。
「ぃ、おい! おいって、アン!!」
「?! あ、お、おにいさま……。どうかなされました?」
「『どうかなさいました?』じゃないよ……。ついたの。セメロ邸に!」
お兄様はそう言って腰に手を当て、『もう、プンプン』といっております。
……その様が、似合いすぎていて寒気が…………。
どうしましょう。
お兄様が本格的に、目覚めてしまったら……。
あぁ。
恐怖以外の何物でもありませんわ……。
なんとしてもそれを。
いえ、それだけは阻止せねばなりません!
……自分で言っておきながら何なのですが、できる自信がありませんわ……。
もう。
だれか、誰でも良いですから。
どうか、どうか……たすけて…………。
なんて考えてお兄様に手を引かれ、セメロ邸の廊下を歩いているうちに、目的地に着いたようです。
場所は一階テラス。
丸いテーブルに、五つの椅子。
五つのティーカップ。
中央には焼き菓子。
お茶はあとから出るようで、先に座っていた男女。
つまり、ウィルロットさんと、レティが私たち兄妹の方を振り返りました。
ウィルロットさんはこちらを見るや否や、ひどく疲れた顔をなさいました。
そうですよね。
私も、お兄様の奇行に巻き込まれてますものね……。
疲れますよね。
私も実は疲れておりますの……。
まぁ、顔には出しませんけれどね……。
「アン? どうしたの。なぁに、そこのあのバカのことで悩んでるの?」
そう言ったのは私の親友レティ。
黒くて胸ほどの長さの髪は、いたずらっ子のようなツインテールで、鳶色の瞳が印象的な、元気な子です。
元気な子ゆえ、お兄様と良く衝突してますの。
それに、その時のお兄様とレティは生き生きとしていて、本当に微笑ましい限りなのですわ。
「そんな、レティ。お兄様は素晴らしい方よ? ただ、少しだけ人と違うだけですの」
私はそう言って彼女の傍に寄ると、彼女は無言で隣の椅子を引いて、座面をへしへし叩きましたの。
……座れということですのね。
私は彼女の行為に甘えて、お礼を言って、座らせていただきました。
そして、見計らったように、顔に蛇の様な鱗(?)がある男性・ギルデさんが、ティーカップにお茶を注いでくださいました。
実は、喉が渇いていましたの。
だから私、『ありがとうございます』といてお茶をいただきました。
当たり前ですが、熱湯でした……。
少し飲んで、すぐに戻しました。
…………覚めるのを待つことにします……。
「………………そうね。実の兄が変人のどうしようもない奴だって、認めたくないもんね……」
「? そんなことないわ、レティ。お兄様は個性的なだけで、立派な方ですのよ?」
えぇ。
とっても個性的で、お母様は困っておられますけど、『困った子ね』と笑っておられますのよ?
お父様も同じですの。
私も、そう思いますわ。
ただ、開きかけの扉をさらに開けて、中に入り込んでしまわないかが、心配なだけですの……。
「本気でそう思ってるの? アン……」
あら?
どうしてそんな憐みの表情で私は見られているのかしら……。
「えぇ。それに、お兄様は本格的に危ない扉を拓いては居りませんわ」
「……興味があるみたいで覗き込んでるけどね…………」
「………………そ、そんなこと……」
否定しようとしました。
でも、否定できない気がして、やめました……。
ですが、これだけは行っておきましょう。
「レティ。お兄様は個性的なの」
「…………………………個性的って言葉、良いよね。それでどんな変人でも変態でも片付くんだもの…………」
レティはそういって、私から目をそらしましたの。
その表情が何かを悟った様な顔だったのは、私の見間違いでしょう。
気分で投稿。
次回超不明。
なんか本格的にベッタベタな恋愛モノ書きたくなってきた……。
やべぇな……。