第三話
あれから、数時間後。
私の手には赤い毛玉……。
いえ。
これには訳が、ですね……。
でも、今まで私が作った物の中では良く出来ています。
だってほら、ちゃんと網目もあるでしょ?
初めての作品は笑ってしまう程、毛糸を丸めたようなものでしたの。
あら?
ということは、私。
少しずつですけれど、上達しているのでしょうか……?!
もし、もしもそうなのでしたら。
私、近いうちに、ロイドさんにマフラーを編むことができるのでは……?
あぁ、そうなった場合。
ロイドさんに会うお色を考えなくては!
ふふ。
ロイドさんのお家に行くのはあと十日後。
と言うことはこの毛玉も、あともう少し頑張れば、きちんとした敷物になるのではないのでしょうか?
私はそう思い、新た作品を作り始めました。
時は進んで十日後。
私とお兄様は、セメロ公爵夫人を迎えに行く馬車に乗り、セメロ公爵邸へ向かっております。
しかもなぜか男装をさせられて…………。
いえ、まぁ。
身元をわかりにくくるためだと言うことは分かっているんですよ?
ですが、この姿でロイドさんに会うなんて……。
恥ずかしすぎます……!
そして、私の目の前には十日前、私の前に表れた青いドレスの麗人――姿のお兄様。
お兄様の頭には、黒髪を華麗に結った鬘。
お顔にはお化粧。
胸元には大量の詰め物。
首には、女性が掘られたカメオのネックレス。
腰はくびれを作るためのコルセット。
…………お兄様。
……やり過ぎなのでは…………?
そう、私は見たときに思いました。
だから、そう伝えようと思ったのです。
ですが、お兄様の後に居た侍女たちにあれよあれよと言う間にこの姿に……。
あぁ。
これなら派手なお化粧で顔を隠す方がどれほど良いことでしょう。
……ただでさえロイドさんに、恋愛対象外としてみられていますのに…………!
とりあえず気分で投稿してます。