6章
話しかけられた男子学生はとてもびっくりした様子で
「あの…あなたは一体何者なんですか?」
と上目遣いで探るようにおどおどと聞いてきた。
この時、俺は初めて彼を正面から間近で見ることが出来た。男にしては華奢な体型で色が白く、綺麗な顔立ちをしていた。これで背が高かった相当目立っただろう。
「失礼しました。僕は、羽田晃樹といいます。真島悠一君とは小学生の時に親しくさせてもらってました。」
「羽田?」
彼は羽田という名字に反応して聞き返してきた。
「あの、あなた、ひょっとして真島のピアノの先生をしていた人の息子さん?」
「ええ、そうです。」
彼は親父の事を知っている。名字まで知っている。悠君の友達なんだ。
しかもかなり親しい友達のはずだ。
状況をすばやく察知した俺は畳み掛けるように彼に言う。
「あなた、真島君の友達なんですよね?だったら話は早いです。真島君に今連絡を取ってもらえませんか?羽田晃樹という人が会いたいって言ってるって。向こうが会いたくないって言ったら僕はこのまま帰りますから。僕、真島君の連絡先知らないんですよ。だからあなたが頼みの綱なんです。いきなりで申し訳ないけど」
気が急いていたせいか若干脅し口調になってしまったかもしれない。彼はちょっとだけ考えるような素振りしたが、携帯を取り出し悠君に連絡をとってくれた。
彼は俺からちょっと距離を置いて背中を向けてぼそぼそとしゃべっていたが、すぐに電話は終わった。
「真島、会うって言ってます。俺達、学食で落ち合う予定だったので一緒に行きましょう」
なんとなく彼の表情が気乗りしない風に見えた。彼は俺と悠君が会うのを快く思っていないのだろうか?ちょっと気になったが、余計な事を考えるのはやめた。
悠君に会えるんだ。
どきどきと胸が高鳴り、感情が高ぶるのを感じた。




