第八夜 狩るモノと狩られるモノ
不定期更新。
ゆっくりですが、お付き合い頂けたら嬉しいです。
蒼蓮の言葉に応えるかのようにタランチュラ擬きの闇が八つの足で迫って来た。
夜月は右に、蒼蓮は左に跳んで闇の突進を避けた。
夜月は地面に着地し蒼蓮を探した。
蒼蓮はちょうど、闇の足元におり、すかさず風を左手の周りに発生させ闇の足の前で振り下ろすような動作をすると闇の足が切断された。
途端、バランスを崩しかけた闇が咆哮を上げる。
夜月もハッとしてすぐに蒼蓮と合流する。
「蒼蓮さん!!」
「ん……怪我はなさそうだな。
良かった。」
蒼蓮は闇を牽制しつつ手を十字に切るような動作をする。
と、その通りに闇は風が吹くように十字に切り込まれた。
『ユルサナイ……』
突如声が聞こえた。
その声はまるで呻くようなまるで地獄の底から湧き上がるような異様な、悪寒の走る声だった。
「……い、今の声。って……はっ!?
砂石さんそんな可愛い顔して変な声出さないで下さいよ!」
「本気で言ってますか?そして可愛い顔は一応、褒め言葉なんですか?」
間髪を入れずモカが言う。
ですよねー。と夜月は闇に向き直り
「じゃあ…………これって。」
『ユルサナイ…ユルサンゾオオオオォオオ!』
紛れも無くその声はあのタランチュラ擬きである闇から聞こえたのだ。
「あ、こいつ。しゃべるんだな。」
蒼蓮が今日の夕飯のメニューを思い出すような声色で言う。
「え、何ですかその反応!??」
「いや、話せないヤツも居るんだけど……」
と言いかけた時だったそのタランチュラ擬きは蒼蓮を見た。
『オマエ……ハ…』
「んん?」
蒼蓮が闇を見る。きっと闇自身の体の大きさから戦ってる相手の姿をしっかり認識出来ていなかったんだろう。
『メシノ……ソウレン………。キサマヲオレハユルサナイ!!』
「え?」
夜月が蒼蓮を見る。
「あの蒼蓮さん知り合い……?何ですか?この闇と」
「いや、俺の知り合いには少なくともこんな色黒で足の多いヤツは知らないな。」
蒼蓮が真顔で話す。
と、一気に闇は夜月など目に入ってないと言うように蒼蓮に残った足を駆使し突進して来た。
蒼蓮はそれを涼しい顔で一気に他の足を切り裂き身動きを取れなくした。
『ユルサナン……オマエ………オマエバカリナゼモテルンダァァアーーーー!!』
「は?!」
闇の口から聞こえる声はむしろ嘆きに聞こえた。と言うか……
「蒼蓮さん、どういうことですか!?
私情で恨まれてますよ!?」
「あーー。ま、生き霊だからな。
また下らないことで闇に成り果てたもんだな……。」
ため息をつく蒼蓮。
『オマエノセイデ、カワイイコタチミンナヒトリジメシテエエェ!!ウラヤマシイーーー!』
夜月とモカは顔を見合わせこの人は…
と言いたげに蒼蓮を見る。
完全に個人の恨みを買っている。
「……何故そんな目で俺を見る?」
と、闇は夜月を見る。そしてその視眼を見た。
「え?」
不意を突かれ気づいた時には…
いつ再生したのか……闇の足が真上にあった。
「……!木枯さん!!」
モカの声が聞こえ、直後に闇が足を地面に叩きつけた瞬間に濛々と砂埃が上がった。