第二夜 異形そして刃の黒
「っ、ぅ……。何?」
チリチリと右眼が痛むのを押さえながら、夜月は声のする路地を見つめる。
声の主はすぐ側にいるのだ。
それは──まさにこの世のモノでは無い。
──闇。
そのモノであった。
異形のモノ。影のような“ソレ”は人型にも獣にも見えた。身体は人の身の丈より高くまさに化け物そのものであった。
ただただ闇のように黒い色をし、その姿はまるで大熊のようであったが似て非なるモノだと一目でわかる。
(な、なに……?アレ……。
わかんないけど。は、早くここから離れなきゃ……)
その瞬間、瞳に強い激痛が走った。
「クッ、かはっ……!!?」
逃げるのを許されないと言うように痛みが一気に精神を蝕む。
身動きが取れなくなる。
“ソレ”は夜月の存在にいや、夜月を見る。
そして、どうも夜月の瞳を見た瞬間に急に敵意を剥き出しにこちらにやって来る。
「──!?まずっ……!」
第六感、もしくは本質的なところで身体が危険信号を鳴らす。
「ツぅ……!?」
瞳を押さえながら咄嗟に“ソレ”の爪のようなモノから逃げる。まるで獣のような大熊のような腕を振るい“ソレ”は夜月を引き裂こうとしたのだ。
「はぁ……。な、何なんだ?ふっ!?」
続けざまの攻撃はなんとか直撃は避けた。
しかし、避けた瞬間的に避け方がまずかったのか、足を挫いてしまったらしい。足が動かせない。痛みを覚えるが気配を間近で感じた。
「ッ!??」
前を見ると“ソレ”が 爪を振り下ろそうとしているところだった。
──咄嗟に夜月は目を閉じた。
⁂
「──?」
何時まで経っても変化が無いので瞼をゆっくり開く。その前には。
夜月のブレスレットだった筈のチャームであるコウモリの羽根のような形をしていたモノが大きくなっていた。辛うじて“ソレ”の動きを止めている。
チャームであったモノは見るからに『刃』となっていた。
──漆黒の刃。
それはまるで大切なモノ──夜月のことを守ろうとしているかのようだった。
カラン、と。
その刃は力無く倒れる。
先程の“ソレ”は暫く様子を見ていたようだが、再び夜月を手に掛けようと襲いかかる。
「!!」
転がるように避け、刃を手に取る。これが無いときっと太刀打ちの出来ない。そういうモノなのだろうと感じたからだ。
──いや、確かにこの刃は言っていたかのようだった。
『自分を使え』と。
刃を前に構える。まだ右眼は痛んだままだが何とか動けるくらいには回復した。
「こ、これで良いのかな?」
構え方に疑問は残るが、何とからしく構え“ソレ”を見る。
“ソレ”は力比べを望んだかのように夜月に向かい再び手を振り上げた。
「っ……!!あっ!」
“ソレ”の攻撃を何とか刃で受け止めた。だが、押し負け刃はカラカラと音をたて弾き飛ばされしまった。
その隙を“ソレ”は見逃してくれるほど甘くはなかった。咄嗟に避けようとしたのだが──足の痛みで思うように身体が動かない。
「──!?」