帰宅と眷獣からの晩御飯
「ただいま、っと」
玄関を開けて誰も居ない洋風の家に挨拶をする。
こんな俺を育ててくれた両親が事故死で死んだ10歳の頃から変わらない…いつも通りの光景だ。
『…朱雀』
「何?フェン」
俺は自分の中から問いかけて来る声に答える。
『朱雀には我が居るから…そんな悲しい思いをしないでくれ』
「…ありがとな、フェン」
俺は指を少し噛み切り血を出し、フェン通称フェンリルを小型で呼び出して頭を撫でる。
「ん、やっぱり朱雀の撫では気持ちが良い」
「そうか?喜んでくれるなら良かったよ」
フェンを撫でながらソファーに座る。
『あぁ!フェンずるい!!』
『何を言う、お主達が寝ている時に朱雀を慰めたのは我だ。撫でてもらう権利は当然の事だろう』
「おいおい、喧嘩は止めろよ」
『でも朱雀様!』
「リルも撫でてやるから」
俺はまた指を少し噛み切り血を出してリル。通称リルスマグナを小型で呼び出す。
いちいち噛み切らないといけないから面倒だな吸血鬼は。まぁ、再生の速度は調整出来るんだが。
「朱雀様~!」
「ふげっ!?」
リルが凄い速さでフェンを蹴落とし俺の膝に乗る。
「相変わらず行動が速いな、リル」
「それが私の専売特許ですから!」
リルを撫で始める。
ちなみにリルは雷を纏う狼だ。自分の神経系に電気を通して高速で移動する、それがリルの特徴だ。
「リル!我が朱雀に撫でてもらっていたのに何故邪魔をする!」
「ふふ~ん。朱雀様から私を撫でてくれるって言ったの。邪魔者がいたら蹴落とすのが当然でしょ」
ちなみにこの二匹。同じ狼だから、凄い仲が悪い。
「はいはい喧嘩は止めろ。どっちも撫でてやらないぞ」
「「私(我)たち仲良し!」」
何故か俺関係の罰になると仲良しになる。これは他の十匹の眷獣にも言える事だ。まだ寝てるらしいけど。
「じゃあこっちおいで」
トコトコ
と効果音がなる様な感じで歩いて来る二匹…メチャ可愛い。
ぎゅっ!
「す、す、朱雀!?」
「す、朱雀様!?な、何を!?」
抱きついてしまうのは仕方ないと思う。それに…
「ごめん、しばらくこうさせて」
自分とは違う、家族の体温が感じられるから。
ペロッ
十二匹の家族の内の狼二匹が俺の口を舐めて来る。
「ありがとう」
俺は二匹の狼に抱きついたまま眠った。
**********
す、朱雀に、き、キスをしてしまった…
キュウ
**********
朱雀様の口に…き、キスを…
キュウ
**********
「ん…」
ゴシゴシ
「あぁ、そっか。俺、フェンとリルに抱きついたまま寝ちゃったんだ」
ちなみに眷獣は主人の意識が無くなってからしばらく立つと自動的に戻る。
「夕飯でも作るかな」
俺はソファーから立ち上がってキッチンに向かう。
ガチャ
バタン
…清々しい位何も無いな。そう言えば昨日で食材とか切らしてたの忘れてた。
現在時刻は23時…スーパー閉まってるよ。
まぁ俺は3日は飯を抜いても平気なんだけどな、でも人間らしい生活をしていきたい。そんな訳で
「コンビニ行くか」
俺は制服を脱いで私服に着替える。もちろん自分の部屋でだ。
キッチンで着替えるなんて変態がやる事だ、静雄とか。
「良し、いくか」
俺は財布を持ち、パーカーのフードを被って外に出る。今はもう太陽が出てないからフードを被る必要はないんだけど、癖になるんだよね。
おかげで俺の家にはパーカーやフード付きのコートとかが20着はある。
「今日は歩いて行くかな」
因果の眼《理不尽なんて大嫌い》を使えば空間から空間を渡るなんて簡単だけど、今日は歩いて行きたい気分なんだよな。
まぁ、空間を渡るなんて真祖の力を使えば必要ないんだけどな。けど因果の眼を使い、相手の攻撃を空間の穴に吸い込みそれを相手の周りで展開してからの集中放火は結構使える。
『朱雀よぉ』
『お、ジークか。どうした?』
珍しい、ジーク通称バジリスクが目を覚ます時は戦闘の時か戦闘が近くで行われている時か俺が危険な時かジークが暴れたい時かジークが暇な時しかないのに。
…結構あるな。
『何かこの近くって言うか、朱雀の学校だかって言う所で戦闘が行われそうな雰囲気なんだが』
『雰囲気って…まぁ、ジークのそれはかなり当たるからな。行ってみるか』
確かに学園の敷地内から複数の気配を感じる。気配を探るのはおじさんが練習した方が良いと言っていたから頑張ったんだよな。
俺は因果の眼を使って空間を捻じ曲げ穴を創りそのまま中に入る。これは便利何だけど、使うときは両目に六芒星の上に翼の模様が出るから正直気持ち悪い。
『結界が張ってあんな』
『だな、流石ジーク、結界が張ってあっても気がつくとか』
空間から出た俺の目の前に現れたのは一つの気配遮断の結界。
『まぁな。で、どうするんだ?俺的には中に入って戦闘を見てみたいんだが』
『そうだな。俺も誰が学園でこんな結界張って戦闘を行おうとしてるのか気になるし』
『じゃあ早速』
『でもさ、この結界。空間を曲げたり干渉したら察知されるぞ』
因果の眼は何かに干渉してそれを塗り替えるからな…理不尽は何かに干渉しないといけない。理不尽なのにな…
『じゃあ真祖の能力使えばいいじゃんか』
『まぁ、そうだな』
俺は真祖の力を限定解除して 架空の存在《寂しがり屋な吸血鬼》を使う。
俺の存在がその場から無くなり結界内に存在する。
『相変わらず訳わかんねぇ能力だな』
『まぁ、慣れないな。自分の存在が無くなるのって』
俺は取りあえず校庭に向かって歩き出す。気配がそこからするからだ…というかこの気配の一つ、親友の気配に物凄く似ているんだが。
てか、魔力反応有。魔法を使いまっくってるな、そのための結界か。
『朱雀~、戦闘になったら俺を出してくれよ?』
『OK。だが神経麻痺の毒だけだぞ?即効性の致死性は使うなよ』
『了解っと』
ジークはバジリスクだから毒を使う。しかも凶悪な毒が殆どだ、制限を俺が付けないと直ぐに速攻致死性の毒を使う。前に毒を受けてみたけど…二秒で死んだ感覚がした。
「さて、誰が居るのかな?」
俺は木の陰からこっそり校庭を見る、その瞬間
ボンッ!
俺の頭が火の球に吹き飛ばされ、俺の体は校庭に居る奴等から見える様な所に倒れた。
ドサッ!
『朱雀~、大丈夫か?心配するだけ無駄だけど』
『問題無い。けど何か面白そうだから再生を遅らせる』
『了解っと』
さて、皆さんはどんな反応をしてくれるかな?
…と言うか正直かなり痛い。まぁ、体の中に何かを刻まれて改造されたりする痛みやありえない量の情報を無理やり頭の中に入れられる痛みに比べれば何でもないけど。
「え、朱雀!!」
あ、親友であり変態な静雄の声がする。
てか頭無くなってんのに何で声が聞こえたり思考する事が出来るんだ?
『第12真祖の吸血鬼だからだ、これぞ吸血鬼クオリティ!』
おじさん!?今おじさんの声が聞こえたんだけど!!
「朱雀!おい!何でお前がこんな所にいるんだよ!?」
…おじさんの事はいいや。うん、あれは幻聴だ。にしても良く俺だって解ったな、頭ないのに。
てかお前こそ何でこんな真夜中に学校で戦闘しちゃってるの?
「静雄、そいつは誰だ?」
「俺の親友ですよ!蓮香先輩!!」
蓮香?…あぁ、生徒会と仲が悪い、会議室を占領して好き勝手やってる『魔の会』の部長だっけ?
「そうか。でも何故?彼は普通の人間なんだろう?魔か天の血を引いている訳でもない」
「はい、俺とずっと一緒にいましたけどそんな気配は一切しませんでした」
今気配探ってみたけど…
『ここに居る奴等全員人間じゃねぇな』
『だよな。しかもさっき魔か天の血って言ってたけど』
どうやら此処は人外の集まりのようだ。
「では何故?おい生徒会長!!此処の結界を張る時は私達以外に誰もいなかったのか?」
「確かに居なかったよ。私達、魔か天の血を引く者以外は」
「じゃあ、こいつはどちらかの血を引いていたって事か?」
違う違う、俺はどっちの血も引いていない。俺は最初なんだから、しかも全身の血に魔術的な意味の刻印が刻まれているから新種だ。
…自分で言うと悲しいな。
「それはありえないです。さっきも言ったでしょ?俺は朱雀とずっと一緒に居たと」
ごめん静雄、何かその言い方気持ちが悪い。ずっと一緒に居たっていう所…おぇ。
『主、何、起きてる?』
『あ、起きた?ニル』
『ん、外、騒がしい』
『ごめんな。今凄い事になってるから』
『後、撫でて』
『良いよ』
『嬉しい』
『じゃあ、ジーク。ニルの話し相手になってあげて』
『りょ~かい。結構理解するの辛いんだぜ?』
『ジーク、話、暇』
『解ったよ』
『頑張ジーク』
『おう』
ちなみに、ニル通称スカルニールは全身が骨で出来ている龍だ。話すのは少し苦手らしい、と言うか精神年齢が低い?おじさんが主の時は全く喋らなかったらしい。
おじさんもニルが俺に話しかけて来た時はかなりビックリしていた。
さてさて、話は何処まで進んでるかな?
「仕方ない。こいつはもう助からないんだ、楽に逝かせてやろ…う?」
「どうしました?蓮香先輩」
「いや、頭を吹き飛ばされて居るのにまだ心臓が動いているのは変じゃないか?」
「「「「!!!」」」」
「…確かに。普通だったら死んでいるはずですよね」
あ~こりゃバレるな。ならもういっか、死んだふりするの。てか静雄は直ぐに気がつこうよ、一番近くに居たんだから。
さて、起きるか。正直ずっと倒れているの暇なんだよな。
皆さんはどんな反応をしてくれるのかな?
誤字脱字その他色々ありましたらよろしくお願いします。