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腕力
この国は徹底した管理社会だ。
能力値で配偶者が決まる。特化同士を掛け合わせ、国民を尖らせる。
オリンピックは常に金。
だが歪みは溜まる。犯罪という形で。
それを処理するのが俺たちの仕事だ。
「撲殺事件の犯人だな」
男は黙ったまま睨んでくる。
「逃げる気はないですね。敵意、強いです」
後ろでケイが淡々と言う。
ありがたい。
男の視線が一瞬、右に流れる。
肩が沈む。重心が前に乗る。
来る。
ケンは一歩で間合いを詰める。
拳が振り抜かれる軌道が、はっきり見える。
紙一重で外す。遅い。
「なんでこんなことをする。普通に生きてりゃいいだろ」
沈黙。
「……幼少期の虐待。強いですね。劣等感も。兄弟と比べられていた」
男の瞳が揺れる。
「図星か。こいつは読心術の家系なんだ」
ケンは低く言う。
「同情はする。だが殺しは別だ」
踏み込む。
膝を叩き込む。
脚力は血統だ。男は崩れ落ちる。
「やっぱ強いですね、ケンさん」
「警察内じゃ“雑種”扱いだけどな」
「駆け落ちした夫婦の子ですからね」
「動体視力と陸上の家系だ。両方のいいとこ取り。数値だけは高い」
少し沈黙。
「……親御さん、逮捕されたんですよね」
「ああ。孤児だ」
ケンは倒れた男を見る。
「実力主義の国だ。俺は運が良かっただけだ。ケイに拾われなきゃ、孤児院で腐ってたかもな」




