第32話・2人での昼食
「お待たせいたしました、本日の昼食となります」
真っ白でお洒落な丸テーブルを1人で囲んでいると、そんな声を共に向こうの扉が開かれる。
どうやら、奥の部屋から料理を取りに行っていたシスタさんが帰ってきたみたいだ。
(ほんと、お腹ぺこぺこすぎ……)
あのクソガキ賢者のせいで、他の異世界の3人よりも遅い昼ごはんになってしまった。
空腹で落ち着かないわたしが浮いた足をパタパタとさせていると、近付いてきたシスタさんがトレイを丁寧にテーブルの上に乗せる。
「すごい……! これが完成系なのか……!」
高貴溢れる陶磁器のお皿に並んでいたのは、綺麗にカットされた美味しそうなサンドイッチだった。
挟まれている具材はハムとチーズ、トマトにレタスなどの野菜類、そしてあと……
(卵もあるんだ……)
突如として出現したお洒落な強敵に、わたしはどうしようかと心の中で腕を組んで頭を悩ませる。
今日の朝ごはんで出てきたオムレツは橘が食べてくれたが、今の異世界ぼっち飯な状況ではどうしようもない。
(よし、ここはプライドを捨てよう)
「あの……シスタさん。わたし、卵がちょっと苦手で……た、食べてもらえませんか?」
「っ! か、かしこまりました。それでは、卵のサンドイッチをいただきたいと思います」
わたしは胸のあたりで手を握ると、上目遣いを彼女に向けてお願いをした。
それに対してシスタさんは頬を薄く紅潮させたが、すぐに顔を引き締めてからそう言葉を返す。
彼女はテーブルを挟んで向かいに置かれている椅子にそっと座ると、お皿に飾られた卵のサンドイッチを美しい所作で手に取った。
その様子を見ていたわたしはお皿に目を向けると、まずはハムが挟まれたサンドイッチに手を伸ばす。
「ん、いただきます」
『パクッ!』と口に含んで最初に感じたのは、しっとりとした食感と柔らかな甘みだった。
そんな食パンに歯を立てていけば、今度は程よく濃い肉の旨みとふっくらとした肉感が舌を襲う。
しかしながら喉を抜けるスパイスの香りによって、そこに邪魔なしつこさ、くどさを感じることが出来ない。
率直に言ってしまえば、これまで食べてきたサンドイッチとの競争において、金メダルを首にかけられるほどにこのサンドイッチは美味である。
わたしはそんな感想を抱きながら口の中を1度飲み込むと、お淑やかに勢いよくサンドイッチにかじりついた。
「………………ふふっ」
突然、シスタさんの方から可愛らしい笑い声が聞こえて、わたしは思わず目の前を向く。
そこには、サンドイッチ片手に口元を手で抑えている彼女の姿があった。
急に笑い声を漏らしたが、いったいどうしたのだろうか。
わたしは口の中に残っていた塊を飲み込むと、彼女に問いかけようと口を開いた。
「どうか、されましたか?」
「し、失礼いたしました。嬉しそうにサンドイッチを頬張るアヤセ様の姿が微笑ましく、思わず笑みが溢れてしまいました」
少し恥ずかしそうに呟いたシスタさんは、そのままパクリとサンドイッチを口に咥えた。
(え……あざとすぎない?)
彼女のあまりの可愛さにやられたわたしは、呆けて手の力が抜けてしまいサンドイッチを落としてしまう。
落ちた先がお皿の上で良かったが、それほどまでにずっと冷静な表情だったシスタさんの照れ顔は攻撃力が高かった。
しかしやっぱりシスタさんは、身長が小さくて顔立ちが酷く整っているために、まるで西洋人形のように思える。
それにしてもわたしとほぼ同じくらいの身長だが、いったい彼女はいくつなのだろうか。
お皿の上から無様な姿で倒れるサンドイッチを救出したわたしは、ふとそんな疑問が頭に浮かび上がってくる。
同性間での話なので失礼に当たることはないだろうと思い、わたしはせっかくなので彼女に尋ねてみようと口を開いた。
「あの。少し気になったことがあって! シスタさんって何歳なんですか?」
「私の年齢ですか? 今年で28歳になりました」
(なんだ、18歳ならわたしと同いど………………)
「………………28歳!?」
衝撃的な数値が彼女の口から飛び出たことで、わたしは喉の奥から大きな声を出してしまった。




