秘密…出会いは必然
私には秘密がある
たとえ人に話したところで頭がおかしいでスルーされてしまうだろう
それは…
バサバサバサッ
いつもベランダに遊びに来る野良鳩さんの鳩ママが朝の挨拶に来たので私は餌とお水を用意して歓迎する
彼女を鳩ママと名付けたのはいつも私を心配して悩み事を聞いてくれる母性溢れる鳩さんだから
「くるるっ おはよう 」
「おはよう。鳩ママ モーニングを召し上がれ」
「ええ、ええ。いつもありがとう いただきます くるるっ」
カツンカツンと餌を啄む鳩ママは餌づけをしたわけでもないのにかれこれ10年以上ベランダで羽根を休めにやってくる
私が夜中にエアコンの掃除を始めると仲間の鳩さん達を連れて様子を見に来てくれる心優しい心配性の鳩さんだ
「くるるっ 大丈夫ですか?」
「落ちないように気をつけて」
「みんな、ありがとう~大丈夫よ」
「お、おねーちゃん、鳩がたくさん室外機の上にとまってるよ!
ねぇ鳩って鳥目じゃないの? 何で深夜にいるの??」
一緒にエアコン掃除をしていた妹は鳩さん達の深夜の訪問に怯えていた(笑)
5羽の鳩さんたちに見守られ無事に掃除を終えると皆、安心したようにねぐらへと帰って行く
そうなのだ
私の秘密とは鳩や犬、猫、植物に至るまで彼らの声が聞こえて会話が出来る
この力に目覚めたのは二十歳過ぎてからだった
さりとて大した理由もないと思うが霊感の強い友人と付き合うようになってからなので何かしら影響を受けたのかもしれない
※
そんな私に不思議な出会いが訪れた
一昨日、突然にアイスが食べたくなりお昼過ぎに近所のコンビニに向かう途中
ひとりの男性が花壇に植えられているブルー系の紫陽花に向かって何やらブツブツと話しかけているのを見かけてしまった
「そうか~。大丈夫だよ 今から駅に向かうから濡れないと思うんだ
あはは、きみは優しいね。心配してくれてありがとう」
も、もしやこれは…同族か?
長年、人には言えない秘密を抱えていた私は自分と同じように紫陽花と楽しそうに話している人間がいたことにひどく感動した
何を話しているのか会話の内容を知りたくなりを立ち止まって耳を澄ましていると…
どうやら紫陽花さんがもうすぐ雨が降るから大丈夫?と彼を心配しているらしい
ついついガン見していると 私の視線に気づいて振り向いた彼と目が合ってしまった!
「大丈夫ですよ、ぼく怪しいものじゃありませんから。この子と話していただけなんで…」
屈託ない笑顔を見せてくれた彼は見た目が26くらいの明るめのブラウンのショートヘアが良く似合う美青年だ
「あの、失礼ですけど…もしかして植物の声が聞こえるんですか?
私もなんです。サボテンにエアプランツ、花や観葉植物からインコや野鳥、犬や猫の声が聞こえるのでつい気になって…」
彼は驚いたように数秒ほど私を見つめると嬉しそうに白い歯を見せながらとびきりの笑顔になる
「嬉しいな! そんなのぼくだけだと思ってた!
ぼくも犬や猫とよく話すんですよ
だから友達にいつもイヤな顔されてるし(笑)」
「私と妹もそうなんです! 感激、初めて同じ体質の人と出逢えました」
「ぼくも嬉しいです あ、ぼくは山田豪といいます
立ち話もなんだからそこのマックでも行きませんか?
奢りますよ」
「喜んで、山田さん。 私は中村友美です」
「豪でいいですよ」
「なら私はともたんで(笑)」
ミラクルな一期一会に意気投合した私達はマックに入り、彼はコーラ、私はバニラシェイクを注文した
「それにしても驚いたなぁ
こんな偶然ってあるんだね」
「本当ですね、私はここから5分くらいのところに住んでいるんですけどアイスが食べたくなってコンビニに行かなかったら豪さんと出逢えなかったのね」
「豪くんでいいよ、ともたん」
「じゃあタメ口で豪くん、失礼だけど…年、聞いてもいいかな?」
「いいよ、32のおじさんだけど(笑)」
「え~、見えないっ 年下かと思った」
「よく言われる(笑)チャラく見えるみたいでさ
いたって真面目なんだけどね…ともたんも若いね 23くらいかな?」
「あは…実は34のアラフォーなの」
年齢のカムアウトと同時に思わず二人で吹き出してしまう
「なんだぁ。同じアラフォー世代かぁ」
「うん、うん、なら話も合うね~よかった」
「ぼくは神奈川なんだよ 今日たまたま友達に会いに来た帰りだったから」
「わぁ! なんて素敵な偶然なの じゃあお互いが今日を逃したら会えなかったのね」
「本当だな この世に偶然なんてない…あるのは必然…」
「知ってるぅ、xxxHOLiCの侑子さんのセリフだぁ」
「そうそう(笑) おんなじ体質だからもしかして、怪談系も好き?」
「好き好き♪姉妹でホラー好きだもん」
意気投合してついつい話し込んでいると…妹から電話が入った
「もぉ~30分以上帰ってこないで何してるの? 事故にでもあったかと思うじゃないっ」
「ああ、ごめん、ごめん、実はさ…」
心配性の妹に私は豪くんとのミラクルな出会いを簡潔に説明した
「その人…もしかして私の幼馴染の豪ちゃんかも…ちょっと電話変わってくれる?」
「ええっ!! マジで」
私は豪くんに説明しようとすると…彼は笑顔で頷きながら携帯を貸してと云わんばかりに手を伸ばした
「もしもし~、ああ、まっちょちゃん。うん、豪だよ~」
目の前の彼が楽しそうに妹と通話しているのを私は呆然と見つめていた
「じゃ、お姉さんに代わるね うん、あとで♪」
「もしもし、まっちゃん、豪くんと友達だったんだ~びっくりなんだけど…」
「驚いたのはこっちだよ~。中学からの親友で旦那の同級生でもあるのよ」
なんと…出逢ったばかりの彼がこともあろうに我が家の婿養子に入った旦那様の同級生で親友だったとは…度重なる偶然に流石に開いた口が塞がらない
数分後…豪くんはコンビニで大量のアイスとお菓子を買ってくれて私達は家路に向かって歩いていた
「いゃ~きみがひろしとまっちゃんのお姉ちゃんだったとは…すっげえ偶然…」
「チッチッチ…この世に偶然なんてない…あるのは必然…でしょ(笑)」
「僕たち、運命なんじゃない?」
「うん、うん、そうとしか考えられない!
てか、ありえないでしょ こんな偶然の連続って…」
今まで存在すら知らなかった妹夫婦の親友とこんな形で出会えるなんて…しかも同じ特異体質仲間だし…
こんな素敵な一期一会があるなら…人に言えない秘密があるのも悪くないかも
※
Happy ending