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第二王子の婚約者(仮)

続きというか微妙だけど、改変したとばっちりの結果

 ぶすぅぅぅぅ

 不機嫌な表情を隠そうともせず、二時間も待たせた婚約者候補――しかもこちらには拒否権はほとんどない。

 なのに、その肝心なこっちの権利をすべて奪っている相手はいかにもこの婚約に不本意ですというのを全面に出して、

「僕はお前と結婚なんてしないからな」

 とほざいてきた。


 ぴきっと血管が切れるような音がした気がする。まあ、実際したわけではなくただの表現方法だが、実際切れていてもおかしくないほど実は怒っていた。


 わたくしセレス・アンバインは可もなく不可もない中堅の伯爵家だ。目立った産業もなく、特に王家に目を掛けられるような武勲もない。ただ、第二王子と年頃も合う派閥のごたごたの影響のない家柄というだけで婚約者に据えられたのだ。


 …………国の状況によっては隣国の王族と婚姻するかもしれないが、今の状況での場つなぎ的な婚約。しかもこちらに拒否権はない。


 なのにこの態度だ。我慢して我慢して我慢して我慢して我慢して……………ずっと耐えていたのが限界に達した。


「なんで僕のようなものが伯爵家なんかと……」

 第二王子――フレドリックはこちらに一声もなく乱暴に椅子に腰を掛けて、ぶつぶつと文句を言い続けている。

「――では、その意向をはっきりと書面に残して陛下とわたくしの父にお伝えください」

 婚約したくないのはこっちも同じだ。ならばそっちからお断りしやがれと口には出さないように気を付けつつ、あくまで殿下の意思に従いますという態で告げると。


「ああ、そうだな。誰か紙を持ってこい」

 と従者に命じます。


「殿下、いくら何でもっ!!」

「煩い。僕の命令は絶対だ!!」

 良識のある従者が止めるが第二王子は我儘全開に命じる。というか良識があるのなら時間を守らせるようにするかこちらで二時間待たせたことに対して何らかの対応をすればいいだろう。と馬鹿にしているのかと思っているが腹の内を見せずに扇で口を隠して微笑むに留める。


「カラスみたいに真っ黒な髪と目で上品ぶって扇で顔を隠すような見せつけるような自信の無いブスなんて僕の婚約者に相応しくないだろう。あ~あ。カールネイソン公爵令嬢だっけ? そっちの方がまだましだっただろうに」

 …………亡くなった祖母は遠い島国から嫁いできた貴族で、カラスの濡れ羽色の髪とか黒真珠のような瞳と言われたそうで、わたくしはそんな父方の祖母にそっくりだったそうだ。祖母は厳しくても優しくて、そっくりだと言われて嬉しかったものだ。そんな祖母のような外見を侮辱されて腹が立つ。


「無礼だよな~。僕の婚約者になれる立場なのに田舎者と婚約するとか~」

「カールネイソン公爵令嬢が当初婚約者候補に挙がっていたのですが、辺境伯令息と婚約が決まりまして」

 二時間も待ち続けていた時もずっと傍に控えていた王宮勤めの侍女がそっと説明してくれる。彼女は全然来る様子もない第二王子のことで気を病んで、同僚に第二王子付きの従者の元に走らせたり、侍女長に報告したり、退屈を紛らわせるために本来なら規則に違反しているのだろうけどいろいろ話をしてくれたり、お茶とお菓子が足りなくなったら補充したりといろいろしてくださった方で、本当はここで口を開くのもいけないのだろうが、こちらの内情もこっそり教えてくれたのだろう。

 

 カールネイソン公爵令嬢。銀色の髪で青い目のクールビューティー系だったと以前お茶会で会った事あったので覚えている。目の前の第二王子の青い髪と銀色の目で不思議と釣り合いが取れそうだが、この第二王子は見た目以外いいところなしな感じだ。

 正直、カールネイソン公爵令嬢の判断は素晴らしいだろう。


(辺境伯を田舎扱いしている馬鹿王子は辺境伯の重要さを理解していないしな)

 こんなのが国の中枢にいて、将来この国が心配だ。


 馬鹿王子はどうなってもいいが、そんな馬鹿王子のやらかしで巻き込まれる民を想像すると――。

「王子の僕に選択肢がないのはおかしいよな~」

「――お黙りなさい」

 まだぶつぶつ愚かな事を言っている王子に向かって身分差という壁で我慢してきた怒りが限界に達して、気が付いたら第二王子が涙目になるほど説教をかまして、これで婚約の話は無しになっただろうなと思った。


 思ったのだが………。







「セレス!! お前が喜ぶと思って牡丹の花を持ってきたぞ!!」

 と根っこの付いた状態のまま持ってくる第二王子――もといフリックさまの姿に頭を押さえるのはもはや日常茶飯事。


「フリックさま」

 呼びかけると叱られるのを今か今かと待ち構えている駄犬――ではなく第二王子に向かって根っこのまま持ってくる者はいないとかどこから持ってきたのかと常識を教える。

 何でこうなった。


 説教をした時には婚約の話は完全になくなるだろうなと思ったものだ。だけど、

『初めてだ……』

 目を輝かせてそんなことを言い出したかと思ったら。


『誰も注意する事はするが、やんわりとたしなめるだけで僕の言うことに従っていた。僕が問題を起こせば、父上も母上もわざわざ会いに来てくれるから……』

 つまり、愛情に飢えていた子供が親に構ってもらいたくて問題行動を起こしてきたと言うわけなのか。


 婚約者候補として名前が挙がっていたカールネイソン公爵令嬢が辺境伯令息の婚約者になったのも自分よりも他の奴の方がいいのかという事実がムカついたからと言うことで、彼女自身に関しては断られたから初めて意識した程度のことらしい。


 で、わたくしのことも所詮場つなぎ程度だと思って自分の言いなりになるだけの人形のようなものだと思ったからの傍若無人。興味を持っていなかったそうだ。


「でも、セレスはきちんと教えてくれた。身分を気にせずに堂々と」

 と嬉しそうに言われた時の気持ちを三行で答えろ。配点50点。と現実逃避しかかったわたくしだが、フリックさまに、

「セレスからすればマイナスからスタートだけど、僕は君が好きだ。だから、君に相応しいものになるからずっと見ていてほしい」

 と言われて………。


 ええ、ほだされましたよ。それが何か。


 婚約の話は無くなる事もなく、正式な婚約者という立場はまだ相応しくないからというフリックさまの言葉で保留になっているけど、もうほとんど決まったようなものだ。


 フリックさまはたまに思い出したように問題行動を起こすが立派な方として順調に成長なさっている。

「セレスと共に学園で通うのが楽しみだな~」

 と背中から抱き付いてくる様にお説教をしながらわたくしも楽しみだと言うのは言わないでおく。








 そういえば、学園初日に、

『なんで婚約者が違うのよ!!』

 と喚いた生徒がいたとか。どういうことでしょうかね。 





乙女ゲームでは攻略キャラとその悪役令嬢のカラーリングは対になるようになっていた。ディックは婚約者がいないから茶色の髪と目という地味な色。


婚約者を替えたらうまくいった話。

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