第44話 とある少女の記憶
今日は短めです。
明日挽回するので許して下さい……
【Side:????】
幸せな記憶。
とても幸せな記憶。
今の一瞬まで見ていたはずの景色。
それが、ひとたび目を開ければ一瞬で崩れ去っていく。
今ではその記憶すら曖昧だ。
ただ、その夢には家族がいて、妹がいて、そして、親友がいた。
だけど思い出せない。
とても幸せだったはずなのに。
それでもなお、私の記憶は言う事を聞かない。
思い出させてくれない。
この数週間は怒涛の日々だった。
最初はパニックになった。
突然のデスゲームの宣告に、目の前が真っ白になった記憶がある。
だが、何故だがそこまで苦痛ではなかった。
何故だろう。
今では毎日、生きることさえこんなにも苦痛だと言うのに。
私の隣には、いつも誰かがいた。
だが、それが誰なのか思い出せない。
そして思い出せないというその事実が、ますます自分の心を痛めつけてくる。
だがどれ程の痛みを受けても、私の瞳からは涙が出てこない。
乾ききってしまった砂漠のような瞳だ。
私は涙の出し方を忘れた。
だが痛みは思い出せる。
あの鮮烈な痛みだけは。
多分、どれだけ時を重ねようが、それこそ死ぬ間際さえも、鮮明に思い出せる気がする。
だがその痛みがどういったものだったかが思い出せない。
まるで、自分自身の記憶に厳重に鍵をかけたような。
そんな気持ちだ。
そしてまた、そのことに痛みを感じる。
苦痛だ。
嫌だ。
早く解放して欲しい。
何度死のうと思ったか。
だがその度に、私の頭の中に誰かの声が響き続ける。
そして剣を持つ私の手が震えていることに気が付く。
そして、自殺を止める。
それの繰り返しだ。
もう何百とやった仕草。
涙の流し方は忘れたが、痛みの記憶は鮮明に残り続けている。
自殺のやり方は、それ以上に体に染みついてしまった。
もう何人もの人を殺した。
殺すたびに胸の奥が痛くなる。
だけど殺さなければならない。
あの人の命令だから。
なんで命令なのに従わなくちゃいけないの。
命令だから?
分からない。
私は別に洗脳されている訳ではない、と思う。
だからいつでも命令に背くことが出来るはずだ。
だけど私の体はそれを拒む。
一切の躊躇もなく、目の前の人を殺す。
今日も一人殺した。
そいつは元々気に食わなかったから、そこまで苦痛ではなかった。
それでも、あの時感じた視線は痛かった。
特に、あの魔法使いの視線は、あまりにも痛かった。
——私には眩しすぎる目をしていた。
彼は一体誰なんだろう。
私は無性にそれが気になった。
だが、結局は無意味なことだと振り切った。
そして今日も、私は人を殺す。
何の躊躇いもなく。
慈悲も容赦も一切なく。
私は地獄に落ちてもいい。
何をされても構わない。
だけど、あの人だけは。
あの人だけは生きていて欲しいと思う。
もう顔も思い出せない誰か。
いつも私の傍にいてくれた誰か。
分からない。
思い出せない。
苦しい。
痛い。
ごめん。
私のせいで……
その言葉だけが、私の心の奥深くに鳴り響き続けた。
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