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第四話 アルトメア王様

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。

◇◇◇◇


 デヴィラネは婚約解消を宣言するはずが自身のコンプレックスを陰口叩かれるあまりにダイエットを宣言してしまったのだ。そのついでに言えば良かったのだが、もう遅かった。


 ダイエット宣言したからには有言実行すべく運動するために中世風の乗馬服に着替えた。ランニングするためだ。ダイエットのな。ただこの乗馬服は通気性が悪く、正直にランニングパンツやランニングシャツの方が良かったのだが、中世風時代じゃ存在していない。そんな時代じゃ、はしたない格好ではあるよな。


「よし。バアヤ。ランニングしてきます。」


「えぇ、お気をつけください。」


 公爵家だけあって広さは運動場と同じくらいの敷地。すごいよな。これで庭園なんだぜ。庭師もいるし、さすが公爵家。


 そんな場所を俺は走る。前世でフルマラソンを幾度も経験した。だから走るのは自信あった。あったんだが・・・。


「ゼェーゼェー。」


 忘れてた。俺の体はオークごとく巨体だった。たったの400Mで息が上がるとは・・・。正直に前世の俺には理解できなかった感情が今になってわかる。太っている者にとってランニングは苦痛なだけ。そりゃ、ダイエット宣言しても失敗するわけだ。


「楽に痩せる方法ないかな・・・。」


 これもまたダイエットを目指す者たちにとってよくある思考だ。いかん。ダイエット挫けかけている。


 そういえば、魔法もカロリー消費するんじゃね。なんせエネルギー使うし。しかし、俺の場合は魔力が大きいらしいから、制御するためには体を鍛えねばいけないらしいが・・・。


「(暴発しないように魔力を小出ししてコントロールしていけばいいのでは?)」


 いきなりランニングを始めると体が悲鳴を上げる。おそらく魔法が暴発した時はそのような感じだっただろうな。体を鳴らすためにウォーキングから始める。その要領で少しずつ魔力をコントロールしていけばいいだろう。


 ダイエットの基礎と言える考え方を魔力制御に置き換える発想で魔力コントロールしていく。


「むむ・・・。」


 魔力を集めると体が熱くなっていく。カロリー消費していくのがわかる。魔力を少し集めるだけのつもりだったが、体が発光する。これは以前の暴発にあった前兆だ。


「まずい!」


 自らの危機を感じ、魔力を集めるのを中断する。すると発光が収まった。


「(魔力を少し集めただけでも暴発してしまう。魔力が強いと言われていたのがちょっとわかったような気がする。)」


 体を鍛えつつ魔力制御を同時並行しよう。名付けて、トレ魔ダイエット!!あれ、ネーミング悪いな。まぁいいや。



◇◇◇◇


 デヴィラネは痩せるために色々奔走する。だが、デヴィラネは燃費悪い体。それ故に反動に襲われる。


ググゥゥゥゥゥゥゥーーーー


 腹の音が鳴る。我慢すると自分の中にいるデヴィラネ本体に支配権を奪われ、暴走してしまう。腹を誤魔化すためにカロリーの低いゼリー系をコックに作らせて、携帯している。あれだよ。携帯ゼリー補給食。それを吸う。


「ふぅ。」


 ダイエットを始めて数日経ったが、三日坊主にはならずに済んでいる。


「ダイエットもほどほどに。無理することはありません。」


 バアヤがデヴィラネの髪を金髪ドリルに整えていく。これからアルトメア学園に行くのだ。


コンコン。


 ドアノックの音が鳴る。


「お召し物は終えました。どうぞ。」


 バアヤがそう声をかけるとララトイア夫人が入ってきた。


「お母様!?」


 苦手な母親が来たことでデヴィラネが内心動揺した。


「あなた!イザーク王子殿下がいらっしゃってるわ!!お迎えに上がりなさい!!」


「(なぬ?)」


 寝耳に水と言わんばかりに驚きと共に玄関に向かうとイザーク王子殿下と側に護衛のジャスティスがいた。


「突然の訪問に済まないな。」


 イザーク王子殿下がデヴィラネを見るなりに「ん?」と反応する。


「頬がこけた・・・ように見えるな。」


 おぉ、そう言われるとダイエットは順調のようだ。だが、元が太り過ぎだから、まだまだだ。こう言われたら、油断してリバウンドするのがダイエットの怖さよ。


「ありがとうございます。それでどのような用件でしょうか?」


「我が父がお呼びだ。」


 アルトメア王様が?心当たりと言えば,婚約解消か?って言うかそれしかないよな?


「アルトメア学園の方は?」


「公欠扱いになる。行くぞ。」


 馬車に乗り込むが、何故かイザーク王子殿下が手を差し伸べる。


「・・・?」


「皆の手前,婚約者なのだ。忘れるな。」


 あ、そうか。自分としては婚約解消する気満々だったが、周囲は婚約者同士として見られているんだった。特に母親が見ている手前では婚約者として振る舞わなければいけない。


 イザーク王子殿下の手を取る。わ。すべすべだな。っておい。嫌そうな顔するなよ。俺のは分厚い手でごめんねぇぇぇぇ?


 デヴィラネが馬車に乗り込む際、馬が嫌そうな表情していたのは見なかったことにしておこう。


◇◇馬車内◇◇


 馬車は対面四人乗りで豪華な漆塗りにアルトメア王家の家紋が彩られている。デヴィラネが巨体ゆえに二人分のスペースを取り、対面にイザーク王子殿下とジャステイスが座っていた。


「婚約解消を進言してくださったんですか?」


「あぁ。」


「アルトメア王様はどのような反応を?」


「公務が空き次第、君を連れてこいと言われた。おそらく説得するのだろうな。」


 婚約解消を引き留める説得か?ラーゼン公爵も言っていたが、自分ことデヴィラネは国の将来に関わることなのか?


「自分の父親も引き留められました。私に何かあるのでしょうか?」


「・・・いや?」


 イザーク王子殿下は思い切り目が泳ぐ。おい。何かあると言っているようなものじゃねぇか。お前、前から思っていたが、ポーカーフェイス下手すぎるだろ。それでも将来の王様か?


「しかし、まともに話せることができるようになったのは驚いたな。」


 イザーク王子殿下が誤魔化すように話題を変える。


「以前の私はどんな印象でしたか?」


「まず、人の話を聞かない。自己中心。思い通りに行かないと暴れるし、お腹が空くと暴れる。何せその巨体だから苦労した。ブツブツブツ・・・。」


 イザーク王子殿下はここぞと言うときに堰を切ったかのように愚痴りまくった。俺の生まれ変わりとは言え、なんかすまん。


「それでリシアサンスがいいんですね。」


「あぁ。そうだな。リシアサンスはデヴィラネと違って・・・。」


 ジャスティスが「そこまでです。」と止めた。


「誰かが聞いているかわかりませんからね。」


 あれ?俺に対する愚痴はいいのかよ。おい。


「それとイザーク王子殿下。学生のうちはいいですが,下級貴族であるリシアサンスとは身分が違う。そこをお忘れなく。」


「・・・あぁ、わかっている。」


 そう言えば,リシアサンスは準男爵家の娘だよな。この国の貴族序列は王家>公爵>伯爵>子爵>男爵>準男爵となっている。となるとリシアサンスは準男爵家の身分でありながら、イザーク王子殿下を取り入ろうという魂胆だろうか。下剋上上等か。恐れ入るな。


「さぁお着きになりました。」


◇◇アルトメア王国城◇◇


うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 これが城!?なんてヨーロピアンな城だ!!初めて見たよ!!前世じゃ,旅行でも城は城でも日本のやつだからな。海外にも行ったことがあるが、残念ながら城には縁がなかったな。


 馬車から降りる際、イザーク王子殿下の手を取りながら降りると警備騎士が一斉にズラーッと並んだ。


「イザーク王子殿下と婚約者デヴィラネ様のお通りーーー!!」


 警備騎士が儀式剣を掲げる。


 イザーク王子殿下はいつものことだと慣れているが、デヴィラネは戸惑いながら歩く。


「(え?いつもこんなことしてるの?これが王族ってやつか?住む世界が違いすぎるわ。)」


 ちなみに手を繋いでいるのだが、イザーク王子殿下の表情は晴れないのであった。


 デヴィラネが城の中に入るとすぐさま圧倒される。


 やべぇ。城の中ってこんな風なのか。豪華絢爛の限りを尽くしている!!わかりやすく言うと豪華客船の中が大きくなったような感じだ。前世、ハワイで豪華客船に乗ったことがあるんだが、あれはいいぞ。夢の世界に浸れる。あの一年後にすぐウイルス蔓延の世界になってしまったが・・・。


 デヴィラネが城の中を観光しているかのようにキョロキョロしているとアルトメア王様がいるであろう謁見の間の豪華な扉にたどり着く。


「婚約者のデヴィラネをお連れしてきました。どうぞ。」


 イザーク王子殿下が声をかけるとゴゴゴゴ・・・・と扉が開いた。わかりやすく言うと魔王が待ち構えているであろうという雰囲気があった。何故そう感じたのか・・・。


「(アルトメア王様ってデヴィラネの記憶を探すと何度か会っているようだ。父であるラーゼン公爵と仲良かったようなんだが、気になることがある。アルトメア王様の容姿が・・・。)」


 デヴィラネがアルトメア王様と対面する。その容姿はラーゼン公爵と同じように肥満オブ肥満でハゲていた。まさに悪代官がよく似合う王様であった。


「(そんな王様からよくイケメンのイザーク王子殿下が生まれたな。)」


「よく来たじゃも。」


 デヴィラネが無言で頭を下げる。王家に対する礼儀作法を怠ったら、問題だからな。


「顔を上げよ。デヴィラネ嬢。」


「はい。」


「儂とデヴィラネ嬢とは知らぬ仲でもないじゃ。単刀直入に言おう。婚約解消は認めんのじゃも。」


 初っ端から否定か。否定に入る男は嫌われるよ?


「恐れながら、私に王妃が務まるとは思えません。」


 王に異を唱えると打ち首もありえるこの世界だが、アルトメア王様とデヴィラネとの仲は肥満同士なだけあって良かったのである。


「我が息子イザークを支えられるのは君しかおらんと思っているのじゃ。」


 まただ。ラーゼン公爵と同じようなことを言っている。


「その言葉をお父様からも頂きました。私にこだわる重要性が見えてこないのですが?」


「ふむ・・・。」


 アルトメア王様が考える仕草を見せる。


「そもそもイザークにべったりであったじゃも?それがどうしたことか?」


「価値観の相違です。」


「あんなにイザーク好き好き言っておったじゃもに・・・。」


 すると隣にいたイザーク殿下が悪寒を感じたのかブルッと震えた。


「父上。どうか婚約解消を認めていただけないでしょうか。」


「ならんのじゃ!!お前は将来の安定した王となるためにはデヴィラネ嬢が必要なのじゃも!!そのことはわかっておろう?!」


「ッ・・・。」


 アルトメア王様は息子のイザーク王子殿下に対して激怒した。どうやら息子に対しては厳しいようだ。おそらくだが、イザーク殿下のデヴィラネに対する不満を耳にしているのかもしれないな。先ほども愚痴言っていたしな。


「(というかイザーク殿下はもしかして私にこだわる理由を知っている?)」


 デヴィラネは話のやり取りにデヴィラネの重要性をイザーク王子殿下が知っていると考えた。


「婚約解消は認めん!!話はこれまでじゃ!!お引き取り願おう!!」


 アルトメア王様は取り付く島も与えず、デヴィラネたちを退場させる。


「と、言う具合に婚約解消は無理なんだ。」


 イザーク殿下がため息をついて首を振る。


「イザーク殿下。やはり私に何かあるのですよね?」


 デヴィラネは自分の立場の重要性に疑問を持っていた。


「・・・・。」


「魔力・・・に関係ありますか?」


 するとイザーク殿下の目が泳ぐ。わかりやすすぎる。やはりそうか。何故、魔力に思い当たったのは悪役令嬢の書籍の知識をフル動員したからだ。人並外れた魔力は利用されやすいもんな。となると魔力に起因した何かってことになるんだろうな。勇者召喚とか悪魔召喚とか変なことに利用される?まさかな。


「(地政学を改めて学ぼう。デヴィラネはちゃんと勉強してなかったから記憶に隣国の情勢がない。問題だな。)」


 アルトメア王国の国交情勢から調べてみようと思うのだった。勇者召喚や悪魔召喚ならよくあるのが戦争絡みによるものだからな。これも漫画やDVDによる知識であると付け加えておこう。


 そこにイザーク殿下の顔立ちにどことなく似ているイケメンオーラの人物が現れる。


「兄上。お義姉さん。王宮で会うなんて久しぶりですね。」


「アルス。」


 アルス。イザーク殿下の弟に当たり、アルトメア王国の第二王子である。


「兄上。お顔が優れませんよ。どうしました?」


「なんでもない。気にしないでくれ。」


 アルスは先ほど婚約解消を繰り広げたなどと知らずにイザーク殿下の表情から心配の言葉をかけた。それにしても婚約解消に失敗して、お先真っ暗な表情だな。ポーカーフェイスしろって。


「そうですか?お義姉さん。相変わらず肥え・・あ、いや。お元気ですか?」


 お前、本音が出そうになったろ?なんか無理して笑顔を取り繕っているような・・・。嫌われてんのかな。記憶を探るとアルス第二王子との関係はあまりないんだけど、まぁこんな図体だからなぁ。


「えぇ。アルス王子もお変わりないようですね。」


「・・・雰囲気変わられましたか?」


 アルスが「?」と首を捻るが、改めてイザーク殿下に向きなおる。


「それはそれとして、兄上。例のお話が。」


「あぁ、わかった。私は公務がある。そこまで送ろう。」


 イザーク殿下がデヴィラネの手を繋ぐ。婚約者という体裁は継続だ。さっきおおっぴろに婚約解消を繰り広げたが、箝口令とか流布して口止めするんだろうな。まだ学生の身分だから許されることなんだろう多分。


こうしてデヴィラネはアルトメア王国城を後にするのであった。

最後までお読みくださり、ありがとうございます!評価点orブックマークをお願いします!!

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