第二話 婚約解消でバッドエンド回避を。
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。
◇◇夢の中◇◇
俺は夢の中にいる。記憶が時として夢に現れることがある。それが前世の記憶となるとそこに守秘義務全開のエロPCやオタク全開の部屋が現れるわけだ。それはいいんだ。誰にだってこういうことはある。問題なのはその部屋にいる一人の人物が誰なんだということだ。やたらにでっけー女。そう。例えるならオーク。あ、こっちを見た。
「お前ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ブフッ!!」
首がもげるかと思うくらいに締め上げられた。
「いきなりなんだ?!」
「私の体を乗っ取っているでしょ!?出ていけぇぇぇぇぇ!!」
体を乗っ取る?どういうことだ?
「待て。意味がわからない!!」
「心当たりないと言わさねぇ!!」
オーク女が俺を殴る。
「ゲフゥ!!」
「ギャァ!!」
俺が一方的に殴られたのにオーク女も殴られたかのように倒れた。
「よくもやったわねぇ!!」
「俺は何もしてねぇ!!」
オーク女が俺にマウントを取って殴る。
「ゲフゲフゥウゥ!!」
「ギャァアァァァァ!痛い痛いわ!!」
俺が一方的に殴られているはずが、またもやオーク女が痛み出す。
「な、なんなんだ・・・?」
理解が追いつかないが、俺は何もしてないのにオーク女がダメージを受けているようだ。オーク女が涙目ながらギッと睨み、また殴る素振りを見せる。
「一旦、落ち着こう!!話し合おうじゃないか!!」
俺の制止にようやく止まってくれた。なんかわからないが、俺を殴ったらオーク女にも跳ね返るようだ。だが、これでなんとなくオーク女の正体を察した。
「もしかして、デヴィラネ・ララトイア?」
「そうよ!!お前、私の体を使って好き勝手にやりやがって!!」
うわぁ、わかっていたけど、性格悪ゥッ!!
「M字ハゲおっさん野郎!この部屋はお前の部屋か!!こんな狭いところに閉じ込めやがって!!」
M字ハゲ気にしてるところをつきやがって。夢の中の俺は前世の体のようだ。あと狭い部屋で悪かったな。そりゃ、貴族令嬢の部屋が無駄に広いだけだ。
「デヴィラネ。とりあえず説明するから少し落ち着けって。」
俺は転生して記憶を消されて、デヴィラネになったこと。
デヴィラネが階段から落ち、頭を打ったことで前世の俺が目覚めた。
どういう理由かはわからないが、デヴィラネの体の主導権は俺にあること。
「というわけで俺は君なんだ。君が俺を殴り、痛みが返ってきたことで意識共有している証拠になると思う。」
「こんなおっさんが私の中にいるなんて気持ち悪いわ!!」
「俺だって転生先がこんなオーク女だなんて嫌だよ!!」
いかん。本音が出た。
「なんだってぇぇぇ!」
「ゲフゥ!!」
また殴られるが、痛みは共有しているため、デヴィラネも痛がる。学習しないやつめ。
「貴族令嬢として暴力はいけないことだ。暴力反対。」
「私の体を乗っ取っておいて言うことか!?」
いや、乗っ取ってるわけじゃないってば。でもあれこれ言っても平行線になるだけか。話を変えよう。
「と、とりあえず俺がデヴィラネとしてアルトメア学園に行ってきたが、君の置かれる立場はその・・・。」
悪役令嬢そのものだとはっきり言ったら、また殴られそうで言葉を濁す。
「私は人気者よね!」
は?何を言っている?人気者?聞き間違いか?
「私ってばイザーク殿下の婚約者だし。わかる?未来の王妃なのよ。皆、私のお願い聞いてくれるし。なんでも思い通りになるし。」
いかん。その考え方は思いきり悪役令嬢そのものやん!!
「でもリシアサンスが邪魔!!イザーク殿下は何故、あのような女狐と・・・。」
デヴィラネがブツブツと苛立ちから歯を噛み締める。まさにテンプレ悪役令嬢の言動から俺は溜め息つく。
「(このままでは断罪イベントが発生するじゃねぇか!!)」
デヴィラネの人格矯正が急務になってきたような気がする。だが、どうすれば・・・。
「ん?」
夢の終わりが近づいたのか、俺の体が浮いた。
「!?お前、また私の体を使おうってんのか!?ふざけんな!!」
俺の体にしがみついてこようとするオーク女こと巨体デヴィラネ。だが、デヴィラネが夢の住人と言わんばかりに透けた。
デヴィラネがドッシーンと倒れ込み、俺は夢から覚醒のためにどんどん上昇する。
「私をこんな部屋に閉じ込める気かぁぁぁぁぁ!!」
「デヴィラネ!その部屋に漫画やDVDがある。それで暇を潰してくれ!!」
デヴィラネはまた俺の部屋に引きこもるかのように閉じ込められるだろう。ならば、せめて夢中になれるものを、と思っての発言だった。そして俺はそのまま夢から醒めるのであった。
◇◇夢終了◇◇
ガバッと起きる俺ことデヴィラネ。
「はぁはぁ・・・あれがデヴィラネ?」
夢の中でこの体の持ち主であるデヴィラネと対面し、悪役令嬢にしては度を超えた人物だと知った。
「(ますますわからない。イザーク殿下は何故、デヴィラネを婚約者としているんだ?思いきりやべぇ奴だろ?デヴィラネが王妃になったら、アルトメア王国が終わることくらいは誰にだってわかる。)」
数多の悪役令嬢の書籍から参考すると婚約者であれば、イザーク殿下の手で断罪イベント。間違って王妃となっても国民の手で断罪されるイベントが待ち受けている可能性がある。
「(あれ・・・詰んでないか?)」
バッドエンドルートに頭を抱えるデヴィラネにメイドのバアヤが部屋に入ってきた。
「おはようございます。あら,何か悪い夢でもご覧に?」
メイドのバアヤが俺を見るなりに心配そうに覗き込む。
「いえ、大丈夫よ。」
「ではお召し物を準備いたします。」
デヴィラネはバアヤの手によって金髪ドリルをセットし、コルセットを巻き、制服を着込んだ。
「バアヤは私がイザーク殿下の婚約者となった経緯を知っているのかしら?」
「アルトメア王様とララトイア公爵との間でお決めになられたこと以上のことは存じません。御当主にお聞きするのが一番よろしいかと。」
「わかったわ。」
となるとこっちの俺の父であるラーゼン・ララトイア公爵に聞かなくちゃいけないのか。病に伏せって、病院に入院しているようだしな。
「学園の授業が終わり次第、病院に向かうように手配お願いできるかしら?」
バアヤが驚愕と同時に涙が潤む。
「ど、どうしたかしら?」
「いえ、初めてお見舞いに行かれるのかと思うと御当主もお喜びになられます。」
なんだと?デヴィラネの記憶を探るとララトイア夫人も俺の中のデヴィラネもお見舞い一回も行ってないようだ。ひでぇ・・・。
◇◇◇◇◇◇
「(徳を積むために一日一善!!断罪イベント回避を目指すぞ!!死にたくねぇし!!)」
豪華絢爛なアルトメア学園にてデヴィラネがえいえいおーする。
◇◇授業◇◇
デヴィラネは社交ダンスの授業を受けていた。魔法の授業に続き、貴族の嗜みとして必須授業の社交ダンス!!あれだよ!悪役令嬢の書籍によく出るパーティで美男美女貴族が表面上は仲良く、裏では婚活よろしく心の掴み合いもしくは背後で暗躍することが多い。そこが面白いよな。
ここまではいいんだが、俺、社交ダンスなんて前世では馴染みがなかったから、一から覚えねばならない。周りを見ると貴族に社交ダンスは当たり前なのかやたらに上手い。てっきりおばさんおじさんがやるようなレベルだと思いきや、前世の競技ダンスに近いレベルだ。だめだ。足捌き、体捌き、音楽のリズミカルについていけねぇ。
「(初歩的から学ばねば・・・。)」
日本の授業についていけない前世の俺を思い出し、再び途方に暮れてしまう。だが、俺はおっさんになって精神が図太くなったし、恥をも承知で社交ダンスのザマス先生に一から学ばさせてほしいと申告した。
「デヴィラネさん。あなたは王妃となるから、社交ダンスなど不要。そうおっしゃっていたザマス?」
俺の中にいるデヴィラネ。薄々感じていたが、社交ダンスができないようだな。あれだな。出来ないものはやらない。王妃となれば必要ないし、強制されるとめわくタイプだな。面倒な子だ。
「いえ、考えを改めました。王妃になるべく模範的な行動を心がけようと思いました。そのためには恥を偲んで、社交ダンスを一から習得したいのです。」
ザマス先生は懐疑的な視線を放った。デヴィラネの今までの言動っぷりから信用できないようだ。
「考えはわかりましたザマス。ではデヴィラネさんと組んでもらえるように男子に声をかけましょう。」
ザマス先生が男子たちに声をかけるが・・・。
「(男子どもよ、何故避ける・・・?)」
顔を背けたり、相手がいると言わんばかりに散り散り避けるクラスメイトの男子たち。俺と目を合わせようとしない。何かの拍子でデヴィラネの怒りを買うのが怖いと言った雰囲気であった。
「どうしましょう・・・。」
ザマス先生が困った表情に俺は妥協提案する。
「私は端っこで学ぶことにします。」
俺は社交ダンスで踊るクラスメイトたちを学習し、エア社交ダンスする。おっさんだから恥なんて知るか。
「(しかし、この様子じゃ、クラスメイトの信用も一から積み重ねていく必要がある。問題山積だ。)」
デヴィラネの様子にリシアサンスが違和感を覚えたのか「?」と首を捻る。
◇◇◇◇◇◇◇
グゥゥゥゥゥゥゥゥッ
やはり俺の体は燃費が悪すぎる。我慢するとまた俺の中のデヴィラネが暴れ出す。幸いに昼食時間。食堂で腹を満たそう。
食堂に行くとビュッフェ形式の料理が並んでいる。どれも美味しそうだ。見栄えも無駄に良い。気づいたら、料理てんこ盛り持ってきてしまった。
「(貧乏性か俺は。どれも美味しそうだしなぁ。)」
「デヴィラネ様、こちらでお食べになりますか?」
取り巻き三人ズがついて来てた。いつまでも取り巻き三人ズというのは良くないから、紹介しよう。
ローゼ
アマンダ
ファイン
三人はイザーク殿下の婚約者である俺を取り入ろうって腹だが、それはバッドエンドだからやめろって言いたいんだが、仲良くしておかねば。
「食堂の料理は美味しいわね。」
「素材が一級品でコックの腕もいいですから。」
デヴィラネの感想にローゼたちが相槌打ってくれる。
こんなに美味しいとますます太るんだろうな。いかんな。
「今日もイザーク殿下がお見えになられています。」
「生徒会室におられると思います。」
「行かれるのであればお供します。」
いや、イザーク殿下に会うつもりなんてこれっぽちも・・・。待てよ。イザーク殿下に婚約を取り消してもらった方が早いんじゃねーか?あいつ、王子様だし。おお、少なくともバッドエンド回避出来そうじゃん。イザーク殿下も俺に好感持ってないことは思いきりわかる。俺の中にいるデヴィラネには悪いが・・・。
「噂したらご本人がいらっしゃいました。」
金髪碧眼のイケメンであるイザーク殿下が食堂に来たようだ。従者の位置に黒髪イケメン近衛騎士のジャスティスがいた。何故かリシアサンスもいた。
「デヴィラネ様がおります。」
「いつもなら、授業後は生徒会室に来るだろうと見計らって、食堂に来たつもりだったが・・・。」
イザーク殿下たちがデヴィラネの圧倒的存在に気づき、げんなりする。
「相手せねばいかんのか?」
イザーク殿下とジャスティスの間で小声にひそひそする。
「婚約者を無下にすることは出来ません。」
「・・・仕方があるまい。」
イザーク殿下たちがデヴィラネたちの元へ寄る。婚約者デヴィラネを無視しては外聞が悪いということなのだろう。
「皆が良ければ、食事をご一緒にさせてもらえるか?」
「きゃー。いいです!!」
イザーク殿下のイケメンオーラにローゼたちが卒倒寸前だ。あと何故か俺とは目を合わさないな。
「デヴィラネ様。すっごい量です。」
リシアサンスが自らの少量な食事を見よがしにテーブルに置いた。デヴィラネとリシアサンスの食事の量が数倍違っていたのが一目瞭然であった。
「(女性はそう言うところ多いよな。)」
「淑女たるものは控えめにしたほうがいいですね。」
遠回しにダイエットを忠告しているのかな?そりゃ、自分でもこれはないわぁって体してるよな。
「リシアサンス、あなたは公爵令嬢であるデヴィラネ様にその口はなんですか?!」
ローゼがリシアサンスに食ってかかった。
「(身分差によるトラブルか。面倒な・・・。)」
イザーク殿下も揉め事は勘弁してほしいという表情だった。
「いえ、いいのですよ。確かに私も意識しておりました。今後、自制するよう努力しましょう。」
こんなつまらないことで揉め事を起こすより、イザーク殿下の婚約解消が先だ。だが、この返答により、この場にいた全員がフリーズする。
「デヴィラネ、何か変わったか?」
初めてイザーク殿下が目を合わせてくれた。
「(なんだと?何か変なことでもしたか?)」
「以前の君なら、癇癪を起こしそうなものだが・・・。」
あぁ、うん。わかるよ。俺の中にいるデヴィラネなら暴れるだろうね。怖いよね。
「それはそれとして・・・。」
皆がいるこの場で婚約解消を切り出して良いのか?変に噂になっても困るよな?悪役令嬢の書籍だってトラブルを呼んだはずだ。うぅーん。俺は平和平穏を好む日本人おっさん。平穏に行きたいんだが、言葉回しを上手くせねばいかんな。
「私たち婚約者同士ですが、お互い思うところはありますでしょう。腹を割ってお話をしませんか?」
「何・・・。」
イザーク殿下がデヴィラネの言葉の意図にやや考え込む。
「・・・生徒会室に来たまえ。そこで話をしよう。」
◇◇生徒会室◇◇
生徒会室には豪華絢爛な椅子に座るイザーク殿下と側に姿勢良く立つ近衛騎士ジャスティス。
「それで話とは?」
対面するデヴィラネに問いかける。
「単刀直入に言いましょう。婚約解消していただきたいです。」
するとイザーク殿下がこれ以上ないと言っていいくらいに笑顔であった。だが、すぐ暗くなる。喜怒哀楽がわかりやすすぎる。将来、王となるならポーカーフェイス出来るようになれよ。
「それはありがたい申し出だが・・・無理なんだ。」
「何故です?」
「俺の父がお許しにならない。何故なら君を大層に気に入っているからだ。」
なんだと?イザーク殿下の父というと現アルトメア王様が俺を気に入っている?
「だが、進言はしておこう。俺も願ったり叶ったりの話だからね。」
やはりイザーク殿下も婚約解消がしたかったようであった。
「最後にどのような経緯で婚約したのかイザーク殿下は知っていらっしゃいますか?」
「いや、父とラーゼン公爵との間で決まった話だ。」
「それだけですか?」
「まだ小さかった俺は受け入れるしかなかった。」
あぁ、幼いころに取り決めた婚約なら受け入れるしかないか・・・。悪役令嬢関連の書籍にそういうパターンが多いよな。そういうもんだよな。
「そうですか。私の方でも父に婚約解消の旨を伝えておきます。婚約解消の可能性を上げる意味で。」
黙って聞いていたジャスティスが口を開く。
「しかし、いいのか?父は病に伏せって、君の家は財政的に厳しいと聞いている。そのような真似をすると取り潰されるかもしれんぞ?」
脳裏にララトイア夫人が思い起こされる。殺されるかもしれん。だが、どのみち早いか遅いだけになるしなぁ。
「その時はその時ですかね。」
「そうか。」
「では失礼します。」
デヴィラネが生徒会室から去るとイザーク殿下とジャスティスが感心する。
「こんなに普通の話が出来るとは。婚約解消をあっさりと。」
「頭を打ったと聞いていましたが、そこから変わったかのようですね。」
「俺としては願ったり叶ったりだが、婚約解消は無理だろうな。」
イザーク殿下が溜め息つく。
「俺の国は小国。大国に対抗するにはデヴィラネが必要だ。」
「扱いを間違えると暴発されかねません。」
「そのためには俺が懐柔せねばいけなかった。だが、変わったのなら、少しは負担が軽くなるやもしれんな。」
イザーク殿下とジャスティスがデヴィラネの必要性に言及していたが、何かを目論んでいるようであった。
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