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13歳の誕生日

 

「13歳のお誕生日おめでとう、ローズ!」



 今日はわたしの13歳の誕生日。そして13歳はこの国に住む人たちにとって節目の年でもある。

 魔法が発現する年だからだ。


 わたしの目線の先には魔法陣がある。どうやら発現の儀なるものがあるらしい。

 正直魔法陣とかすっごい興奮する。描き方知りたい。


 一旦そういう邪念は捨てて、深呼吸した。

 魔法陣が光りだし、だんだん身体が暖かくなってきた。もしかしたらこれが魔力なのかもしれない。



「魔力、宿ったような気がします……えっと、どうかしましたか?」



 発現の儀は無事終わったようだけれどなんだか両親も兄も、なんならその場にいた全員が不安げにわたしと魔法陣を見ている。



「……どうやら、ローズの魔力は測定不能らしい」



 父がおろおろと言う。父曰く、魔法陣でその人の魔力について色で判別できるシステムになっているのだとか。

 平均的な魔力量だと黄色、ナインのように魔力量が多いと青色に光るらしい。

 けれど、わたしの魔法陣は真っ白だった。



 まあ、なんとなく察していたことではあった。ヒロインが平凡なわけないし。

 魔法学園に入るわけだから魔法が使えないということはないと思っていた。可能性としてはゼロに等しいか、カンストするレベルか、あるいは特殊系か。



「ローズ、心配しなくても大丈夫だよ。僕はいつでも力になるからね」



 ナインが優しくわたしの手を包み込む。とっても紳士的な励ましだ……相変わらず妹にやる類のものではないと思うけど。



「ありがとうございます、おにいさま。でも魔力があるってだけですっごい嬉しいので大丈夫です!」



 どれにせよ、ゲーオタとしては燃えるので問題なしだ。

 あまりにもわたしが気にしていない様子だからか、重たくなっていた室内も明るさが戻ってきた。

 ビュッフェのように並べられたケーキをもぐもぐと頬張っていると。



「ねえ、ローズ。プレゼントチェックしようか!」

「はい……?」



 麗しのおにいさまがにこにこと笑っている。積み上げられたプレゼントを品定めする、ということらしいけど。

 おにいさまって意外と趣味が悪いのかな? いや、貴族には当たり前のことなのかも。

 そんなふうに思いながらわたしは兄と一緒にプレゼントを覗き込む。



「あんまり知らない方からもいっぱいきてますね……」

「ローズはまだ婚約者がいないからね。伯爵家の13歳となれば大人気だと思うよ」

「なんだかそれ嫌ですね、狙い目ってことですか」



 ナインは笑顔のままプレゼントを仕分けていた。一体何の基準で振り分けているのか分からないけれど。



「でもそういうおにいさまだって婚約者はいませんよね? おにいさまの方がすごそうですね」

「はは、全部断ってるからね。好きでもないひととの婚約なんてごめんだから」



 知ってる。だっておにいさまはわたしと恋愛する運命にありますもんね……

 わたしは乾いた笑みを貼り付けたまま兄の仕分けを見守る。

 しばらく見ていると、兄の動きが止まった。どうやら仕分けにくいものが見つかったらしい。



「誰からですか? ああ、ジル様からですか」

「花束か、無難だね」



 こじんまりとした花束だ。ピンクのバラが目立つ。ジルにしてはセンスがいい。



「わたしの髪と目がピンクだからって理由で選んでそうですね」

「そうだといいんだけどね」



 含みのある笑みだ。これ以上深追いしないほうが吉と見た。

 そんなわたしを差し置いて兄はさらにラギーからのプレゼントも手に取った。

 ラギーからのプレゼントはどうやらお菓子の詰め合わせのようだった。正直、アクセサリーや花束よりもこっちのほうが嬉しい。


 兄はぶつくさと「好みをおさえてきているね」と評している。たしかにそう言われると見事に好きなものだらけだった。よくお菓子の話をしているとはいえ、すごい記憶力だ。



「そういえば、おにいさまは一体何をプレゼントしてくれたのですか? ああ、あったあった」



 わたしは包みをあけて目を輝かせた。

 中には魔法書や杖の型版が入っている。こういうのを求めていたの、わたしは。さすが兄はよく分かっている。



「こういうものの方がローズは喜ぶと思って。魔法書は僕のおさがりで申し訳ないけれど……杖はおすすめのものを選んであるから、学園に入ったらそれで作ってもらうといいよ」

「とても嬉しいです、ありがとうございます!」



 上機嫌でもう一度袋の中を覗き込む。

 この杖の形、どこか見覚えがある気がするけれど……杖については何も分からなかったからおすすめを教えてくれるのはありがたい。



「それともう一つプレゼントがあるんだよ」

「まだあるんですか!?」

「うん。でも学園に行くまでのお楽しみ。僕、ローズのためにすっごく頑張ったんだよ」

「わ、わーい、なんだろうなあ……」



 本当になんだろう。兄の笑みからは何も読み取れなかった。変なものではないことを願う。



「それにしても、ローズももう少しで学園に入学するんだね」



 そう、わたしはあと1、2週間ほどしたら乙女ゲームの舞台のハイドレンジア学園、それの中等部に入学する。

 乙女ゲーム開始までの3年間でみっちり魔法について学んで執着逆ハーに備えなければならない。


 無論、攻略対象たちも一緒に入学だ。

 ジルやラギーはまだまだ子供っぽくて執着の兆しは見えない。ここから3年間近くでわたしが強くなっていく様子を見せつけていこうと思う。

 もちろん、兄ナインも上級生として在学中だ。加えて兄は優秀なため生徒会長の座に君臨している。

 今のところ、1番やばそうなのはこの兄かもしれない。



「もし、好きな子ができたら僕に教えてね。お兄さんとして可愛い妹の彼は知っておきたいからね」

「や、嫌だわおにいさま。わたしに好きな男の子なんてできませんよー!」



 うふふあはは、とお互い表面だけで笑っている。

 間違いなくその男の子は消される運命にある……早く兄をなんとかしよう、とわたしは誓う。



「とにかく、お誕生日おめでとう。これから一緒に学園生活も頑張ろうね」

「は、はあい」



 わたしの学園生活、一体どうなってしまうのだろう。不安だ……




 ――それからあっという間に時が経ち、中等部入学の日がやってきた。

 これからさらに波乱の幕開けになるなんて、この時のわたしはまだ知らないまま。


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