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一狩りいくぜ!

 

「ロストの目撃情報があったのはこの辺りですね」

「なんというか……出そうって感じのところですね……」



 次の日、わたしとレイとラギーは王都のはずれにやってきていた。けっこう田舎だし、割と薄暗くて雰囲気がある。


 ちなみに、わたしやラギーの授業は後日行ってくれることになっているらしい。欠席の準備やアフターフォローまでレイが手を回してくれたみたいだ。



「そういえば、あれからロストについて少し勉強したのですが……寄生される条件までは分からないけれど犯罪者や病人、孤児などに多いそうですね」

「うん、分からないのが質が悪いですよね」

「寄生後に外へ出てきたロストは、暗いところやじめじめした場所を好むそうですね。この場所なんてきっとお気に入りなのでしょうね……」



 レイとそんな話をしながら周辺を調査し慎重に進んでいく。

 ラギーはきっちり護衛をしてくれていてとっても頼もしい。けれどわたしとレイとの会話に割って入ってはいけないと思っているようで、そういう面ではまったく頼りになってない。



「あの、花の乙女として仕事に来ましたが、具体的には何を……?」



 花の乙女、稀すぎて情報がまるでない。

 祈る、魔法を使う、武器を使う、会話する? どうやってロストを倒すんだ。



「うーん、好きな方法でいいですよ?」

「は」

「僕も彼女たちがどうやってロストを退治していたのか詳しくは分からないので。たぶん各々好きな方法でやってたのではないでしょうか」



 うそ、雑すぎない? まあ、ヒロイン至上主義の乙女ゲームなのだ、今までの花の乙女の詳しい設定は省いたのかもしれないな。


 わたしはヒロインらしく、とはと頭を捻る。

 すると、



「ローズ、危ない!」



 ラギーがわたしの前に躍り出て剣を振るった。「え」と声を上げると同時に、ボテッと何かが落ちる音がした。

 見ると、体が真っ二つにされた化け物『ロスト』がのたうちまわっているではないか。


 全然気が付かなかった。守ってもらうなんて情けない!


 自分を叱咤してから体制を立て直す。ラギーは初めて見るそれに驚きながらもわたしを守るように剣を構えている。


 それにしても、切断されているとは思えない動きっぷりだ。切ったら増殖するタイプのエネミーってことね。


 了解、と心の中で呟いてお得意の拘束魔法を唱える。

 3年前の魔法合宿のときのような柔いツルではない、見違えるように太くなったツルがロストの動きを封じた。



「お見事です」

「あれから研究したんですよ、どうしたら屈強なツルができるか」



 ラギーが少し遠い目をした。それもそのはず、ラギーには実験台になってもらったことがある。そのとき魔力の配分を間違えてぶっといツルで縛り上げてしまった。それも何度も。



「ラギーのおかげであのツルができたよ」

「真顔で言うなよぉ」

「で、拘束はしましたけれど……」



 レイを振り返ると「好きにやってくださって構いません」と言われた。わたしは拘束されたロストの前に立つ――



「何奴っ!!」



 不意に横に気配を感じて、思わず殴ってしまった。突然のことすぎてワードセンスが時代劇になってしまった、というのはおいといて。


 見れば、ロストがピクピク体を痙攣させながら消えていく。

 あれ、もしかしてわたしが殴ったから消えてるの? しかも消えたところに花が咲いた。

 確認するようにレイとラギーを見れば頷かれた。やっぱりわたしの花の乙女パワーでやってしまったらしい。


 そのまま確認のために拘束してある方も殴ってみた。消えた。


 なるほど、わたしは殴ると花の乙女パワーが使えるのか。



「うん、コツが掴めました! この調子で片づけちゃいましょう!」



 握り拳には黒いモノがべったりついていて。にっこり笑うわたしはかなり物騒だったと思う。





「おつかれさまでした! すぐ終わりましたね!」



 バトルゲームの感じを味わえてわたしは大満足だ。レイとラギーはわたしのヒロインらしからぬ今の出で立ちに微妙な顔をしている。

 あの後嬉々としてロストを殴っていくさまをずいぶん見ていたのだから、無理もない。


 これを全攻略対象の前でやればドン引き待ったなしなのでは?


 にやつきながら辺りを見回す。所々花が咲いていて、ロストがいる雰囲気はもうない。レイから聞かされたのはこの辺りだけだ。もしかしたらわたしが強すぎてロストがいなくなってしまったのかも。


 レイに尋ねようと視線を向けると、レイはわたしの手をやたら真剣そうに眺めていた。



「あの、お仕事は終わりですか?」

「……ええ、ひとまず終わりです。回復用のポーションを持ってきていますので、2人とも飲んでください」

「ポーション!!」



 ゲーム好きにはたまらないものだ。ずっとどんな味なのか気になっていたんだよね。

 渡されたポーションは青緑のドロっとした液体で、味は見た目によらずさっぱりしていた。



「うぅん、これがポーション、ですかぁ」



 なんだか急に呂律が回らない。まるで酔ってるみたいな、変な感覚。ポーションっておかしな副作用があるのかな。


 ふいにラギーを見れば、ラギー同じく酔ってしまったのか寝てしまっていた。


 待って、きっとおかしい。そう思ってレイを見る――酷く暗い笑みを浮かべた彼を見た直後、意識が途絶えた。


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