ドン
俺と零はあの日から、少し話す量が多くなっていた。
あの話をしたからというのもあったが、零自身が俺への遠慮がなくなったというのもある。
今まで自分の話をベラベラと喋るのは俺が楽しくないと思っていたらしい。
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そんなわけあるはずないのに
俺は今まで友達らしい友達がいなかった。だからこそ、誰かが俺に話しかけて話をしてくれる。その状況だけで俺にとっては新鮮であり、とても楽しいことでもあるのだ。
つまりどんな話でも俺は喜んで聞くし、嫌がるなんてあり得ないのだ。
そのことを零に伝えると零は嬉しそうに笑った。
そういう訳で、俺と零の会話が増えたということだ。
今日も零がよく喋る。
『さっきね〜私が廊下飛んでたら黒ずくめの人がいてね、
絶対に怪しい人だって思って近づいてったら看護師さんに何か話してどっか行っちゃたの。
看護師さん、あらーみたいな顔してたからもしかしたら誰かのお見舞いに来てたのかもね〜人はやっぱり見た目で判断しちゃいけないね〜』
『いや、お前さっき絶対怪しい人だって思ったって言ってたよな!?』
『え?なんの事?私そんなひどいことしないよ?』
『調子いいな、、、。』
そんな風に会話を繰り返していると
急にドンッと連の部屋から音が聞こえてくる。
『ここまで来んなよッ!!うざいんだよ!!
お前らの言うこと聞いてやってるんだからいいだろ!?』
『何だ!?連に何かあったのか!?』
『勝星!!待って!!私が行くから待ってて。』
『あ、あぁ。』
そう言って零は壁の向こう側に行く。
俺は耳を壁にピッタリとつけて様子を伺う。
零は小さな声で連に何かを呟いた。
俺には聞こえなかったが、連が少し冷静さを取り戻したのかため息をつく音が聞こえた。
『とにかく、もう帰ってください。
そして僕に関わらないでください。
まぁ、どうせもう顔を合わせることは恐らくないでしょうけど、、、。
あんたらの顔見るだけで反吐が出そうだ、さっさと出てってください。』
すると相手は何も言わずにコツコツとかかとを鳴らして何処かに行ってしまった。
『、、、連?』
俺は恐る恐る連に話しかける。
連はハハッと乾いた声を漏らし
『ごめん、勝星。うるさくしちゃったね。きっともう今日みたいなことは起きないだろうから安心して。』
『そうじゃなくて、、、。連、お前どうしてさっき話してた相手にもう会わないって言ってたんだ?また来る可能性だってあるかもしれないのに。まさか、、、お前』
すると連はまた乾いた声を漏らした。
『勝星、鈍そうなのに案外鋭いんだね、、、まぁ、勝星は最初で最後の友達だろうから話してもいいかな?』
連は壁に近づいたのか声がずっと大きく鮮明になる
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『僕はね、あともうちょっとで死ぬんだよ、、、』