第1話 My Friend
自分は、表向きはいたって普通の中学生だろう。
平日は、休むことなく学校に行き、建前、勉強する。
だが、頭がいいことを自覚している私は、授業というのが退屈で仕方がない。
決して驕りではない、毎回のテストは、授業を聞いていなくても高得点を取っている。
「また、満点取ったの???」
馴染みのある声が後ろから聞こえた。
振り返ってみると、茶髪気味のツインテールの少女が身を後ろから乗り出して、私の答案を覗き込んでいる。
「……愛沙…」
「ほらほら、解答用紙隠さなくてもいいじゃないのー、なんでそんなにいつも謙虚なのー、みんなに自慢しちゃってもいいのよ」
「人間の性で、自慢は嫉妬を生むと思うが」
「あら、真面目に分析しちゃって」
私は黙ってしまう。
西宮愛沙、同級生。私の仲のいい友達一人目。いつも陰気な私にかまってくる。彼女の性で、暗い表情をしている人を放置するわけにはいけないそうだ。
前に、私ってそんなに暗い表情してる?って聞いてみたら、心配そうな顔で、
「だって、本当に暗い顔してるのよー、まるで病人みたいだよ」
「……」
「そうだ、笑う練習してみようよ、そう、私、さやりんが笑ったところ見たことないよ」
さやりん、は、私のニックネーム。私の友達はみんな、私のことをそう呼ぶ。
「…わかった…」
結局教えてもらったのだが、良い笑いを作ることはできなかった。顔に集中させるあまり、鬼の形相になっている、口角が上がってない、などとダメだしされ、最終的には口が笑ってないなどとさんざん言われて、諦めた。
「だけどね、私、さやりんが自分から笑うところ見てみたいんだよ」
「そう…」
私はいつから笑顔というのを忘れてしまったんだろうか。
なぜ自然に笑うことができないのだろうか。
私を笑えなくしたものは何だろう。
わからない、覚えていない。
もっと幼いころ、いやもっと昔はふわっと、笑っていた気がするのに。
「ちょっとー、おーい、大丈夫ですかー」
愛沙は私の前で手をぶらぶらして、回想にふけている私を、現実世界に戻させた。
「あ、うん、ちょっと考え事」
「大丈夫?ときどきボケっとなにを考えてるのかしら」
彼女は軽やかに笑いながら言う。
「うん…」
「そうだ、もうすぐ私たちのクラスの身体検査の時間だよ、あなた、まだ体操着に着替えてないじゃん、ほら、着替えに行く!」
「いや、もう上着の下に…」
「ええ、あなた、ボケっとしている割にはちゃんと行動しているよね…」
私は何事もなく検査を終え、元の制服に着替えて、腕を組みその上に頭をのせて、寝るふりをする。
この検査、毎年やっているのだが本当に面倒なのだ。
視力検査などよくあるものについで、血液検査、体内のスキャンとかいうものもあり、はっきり言って何のためにやるんだろうと不思議に思うものもある。
私たちのクラスの検査が全て終わったら、家に帰っていいそうだから、リラックスして時間をつぶそうと考え、自分には簡単すぎる教科書を適当にペラペラめくっては、片っ端から問題を解いた。
ゆっくり書きたいです。