表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rの世界  作者: 冬生まれ
4/5

R-2

■xxxx/08/07

朝一番で経費のことを聞きに行った。パティスリーの支払いも経費で落ちるそうだ。

研究室の人は、「私が食べていた桃のパフェも経費で落ちているよ。また付き合ってくれ」と言って笑った。ああいう風に返せるなんて、大人だと思う。


■xxxx/08/08

嫌な夢を見た。前の世界で会社に勤めていた頃の夢だ。

夢の中の僕は、報告書をまとめているんだけど、何を書いていいか分からなくてずっと悩んでいる。ようやく書きあがったものを提出したら、「こんなどうでもいいことでなくて、もっとちゃんとしたことを書いてくれないと困る」と突っ返されて、途方に暮れているという内容だ。


改めて僕の日記を読み返すと、こんなとんでもない体験をしているのに、桃のタルトとか前の世界の愚痴とか、どうでもいいことが書いてあって、自分に嫌気がさした。僕はいつも目の前の小さなことしか見えないのだ。

明日からは、もう少しまともなことを書こう。


■xxxx/08/09

研究室の人に、僕が冷凍睡眠から目覚めて今日で半年経ったと言われた。もうそんなに経っていたのか。

目が覚めてから何ヶ月かはベッドの上で寝たり起きたりを繰り返していたし、動き回れるようになってからも、体力が十分に回復していなくて、長時間活動できなかったから、その期間は時間の感覚が曖昧だ。

今の研究室に移ってきてから、ようやく時間がきちんと進み始めた感じがする。


■xxxx/08/10

毎朝、健診があって、その後いろいろな実験に付き合わされる。

SF映画だと、怪しい研究室に連れてこられた人間が電気を流されたり、おかしな薬を注射をされたり、生きたまま解剖されたりなど、非人道的な実験をされるけど、そんなことはなかった。注射はされたけど、それはこの世界で流行っている病気から守るためのものだった。

午後からは面談が入ることがある。研究室の人や、この国の政府職員、お医者さんなど、日によって色々な人と話す。たいていは面談室だけど、この前みたいにパティスリーや図書室、遊戯室だったりすることもある。

あとは自由時間。施設内は立ち入り禁止のところもあるけど、広すぎるからあまり気にならない。

外出は禁止されている。屋上や窓のある部屋など外から見えるところに行くことも。僕が行動を許されているのは、外から見えないところだけとなっている。

不自由をさせてすまない、と何度も謝られるけど、僕は特に気にしていないから、どう答えていいか分からない。

僕は今、不自由なのかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ