序文 ~まきばのうた~
日曜の夜、子どもたちは哲学的なゆううつに身をまかせている。
また学校がはじまる。
成績をあげること。
行事に参加すること。
ひととつきあうこと。
恥をかかないこと。
きらわれないこと。
問題をおこさないこと。
ミスをおかさないこと。
遅れず、忘れず、いわれた課題をこなす。
やる気をみせる。
笑顔をみせる。
こうべをたれて、服従の姿勢をみせる。
まあいい、どうせうわべだけだ。
だれも、心の中までわかりはしない。
みえるか?
おれは、牙をむいているのだ。
だが、それだけでは、なにも変わらない。
また、どこまで行けば、安息できるということもない。
義務教育、高等教育、卒業、そして・・・
あとは、大人たちの支配する世界で生きる。
スケジュールに従って、人生を生きる。
スケジュールに従って、ひとは出会い、
スケジュールに従って、ひとは散り散りに別れる。
だがいつか、孤独な魂がめぐりあい、家族がうまれるだろう。
しかしまた・・・
子どもたちは学校へ。
老人たちは施設へ。
大人たちは職場へ。
スケジュールに従って、家族は引き離される。
家族から切り離され、いずこかに通う。
ああ、戦うとも。
だが、孤独な兵士は、日々自分がひとを傷つけ、殺していることを知らない。
被害者は自分のみだと信じている。
ただ恐れるのは、評価のみ。
そうそれは、晩年、世間から役立たずと呼ばれる歳になるまで。
ひとと比べられ、さげすまれる。
いつも上から、ほめられる。
ひとを評価するのは、ひとの自由。
だが・・・
ひとが勝手にくだした評価に、自分をしたがわせる理由はない。
千億の魂に、万億の個性。
他と異なる個を発揮し、個としての存在をまっとうする。
幾億無限の可能性を、森羅万象に指し示し、さらなる進化の礎となる。
この宇宙に、われ人類在りと、高らかにさけぶ。
星々のまたたきのはざまの、ささやかな記憶となるために。
それが、それこそが、生命に課せられた真の義務。
ちがう?
だがもしそれを否定するのなら、個のない複製として生産されつづければ良い。
草や虫、機械のように。
そう。
この世には、ひとが機械であればいいと考える誰かがいる。
機械は支配しやすく、逆らわない。
だが、知るべきだ。
それは生命の義務に反している。
星の滅びを意味している。
思い起こせ、人類。
古代のある日、ひとという生き物が植物を囲い、動物を飼うようになった。
利便が、他をないがしろにする冷酷さに目覚めた。
利権を正当化するための、悪意が生じた。
ひとは、他生物を支配する支配者であることを誇るようになった。
他民族を、他階層を、他家を支配するようになった。
それを義務といつわり。
他人を、家族を、子どもたちを支配するようになった。
それを善意といつわり。
これが自然の摂理であるはずがない。
物理を知るものなら、分かる。
生き物は、絶対的に、自由であることが正しいのだ。
そう、だから忘れるな。
支配のベクトルは、いずれ消えるイレギュラー。
何千年の歴史とて、惑星の年齢にくらべれば、ほんの一瞬。
そう、かれらに勝ちはない。
そう、だから惑わされるな。
その、せっかくの無垢なる魂を、穢してはいけない。
時代は移る。
子どもたちを、いつまでもだまし続けることはできない。
子どもたちは、もう、気づきはじめている。
なにしろかれらは、次世代を担う者たちなのだから。
自分の頭で考えることを否定して、いいわけがない。
既存のルールに従っていたままで、いいわけがない。
周囲にまぎれるために、正義を殺していいわけがない。
周囲と調和するために、悪に加担していいわけがない。
ひとを計るモノサシは、タテにのびる唯一の一本ではない。
それはあらゆる角度に向けて無限にひろがる。
さあ、この世を支配している唯一のモノサシから目をそらせ。
キミの向かう道は、既存の道からおおいに外れるがいい。
ひとびとの居場所は、始点以外のすべての場所にある。
どこでもいい。
そこでもいいのだ。
そこにキミがいるなら、そこでいいのだ。
そこにキミがいることに、意味があるのだ。
さあ、いますぐ、あのモノサシから目を反らせ。
自分の居場所を、自分の魂に聞け。
キミを否定する者たちの声は、あとから聞け。
ああ、きっかけさえあれば、いつでも子どもたちは荒野に旅立つ。
そのとき大人たちは、せめて何かに気づくことができるだろうか。
たしか、そんな昔話があった。
町中の子どもたちが、笛吹きについて行ってしまう物語だ。
そう。
ここからが、物語である。




