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二十三話 ランキング

オークキングを討伐した実績と素材の買取金は、レメとスカイの二人で山分けとなった。

二人ともそれほどお金に余裕のあるタイプではないので、こういった臨時収入は非常にありがたい。

まだ人がダンジョン内のボスエリアにいることも報告して、二人はギルドを後にした。

そのまま学校に帰ろうとしたレメだったのだが、スカイは寄るところがあると言い出す。


「何よ。一応臨時で休みを貰ってんだから、寄り道は許さないわ」

「いや、貧民街のやつらにまた収入があったら寄付をするって約束したから」

「はあ? なに、そんなの律義に守ってんの? あんた……」

スカイはイラつくレメを無視して貧民街の方角へと歩き出した。


本当にそうなのかと疑いを持つレメも後を追う。

結局、スカイは本当に貧民街まできていた。

友達のアスクに聞いていた孤児院までやってきて、今日入った臨時収入の大半をそこに置いていった。

院長の老婆はスカイに大変感謝し、孤児院の子供たちもスカイに丁寧にお礼を述べていった。それを見ていたレメは、耐えきれずに自分の臨時収入もほとんどを寄付していったのだ。


学校への帰り道、先頭を歩くスカイにレメは延々続く小言を浴びせかけた。

「あーあ、会長へのお土産も買いたかったのに! 私だって靴を買い替えたかったりもしたし? あれだけあれば弟の進学の足しにも出来ただろうね! 流行りのアイスクリーム屋さんにも行きたかったわ! 」

グチグチ続く小言にスカイは耳を覆いたくなった。

けれど、そんなことをすれば彼女の機嫌は更に悪くなるだろう。


「あのなぁ、じゃあ寄付しなきゃよかっただろ」

「寄付しなきゃよかっただろだって? 腰の曲がったおばあちゃん院長が丁寧に頭を下げてくれて、ぼろぼろの服を纏った子供たちもそれに習って頭を下げて、そんなものを見て私だけ大金の入った袋を持って帰れと? ええ!? 私がそんな非情な女だとでも!? 」

「……はいはい、俺が悪かったよ」

だからもう黙って、とその後に本意が続くのだが、そこまではもちろん言わない。


その後もグチグチと小言が止まらないので、スカイは作戦を変えてみた。

「今日のお前を見て俺は思ったよ。レメっていう女は、学校じゃ高飛車な女ってイメージだったけど、本当は違ったんだな。弱きを見捨てられないって言うか、奥底の暖かい女だってことがわかったよ」

「えっ……、そ、そう? そうかしらね。うん、そうかもね」

急に褒められてレメは戸惑った。

なんだか、さっきまで憎たらしかったスカイがちょっとだけ好ましく思えた。

レメの機嫌があからさまに良くなったのを見て、スカイはここぞとばかりに畳みかける。


「俺まだ金あるからさ、流行りのアイスクリーム屋でも行くか? 奢るよ」

「本当に? いいの? 結構高いって聞くけど」

「いいよ。さあ、案内頼むわ」

こうしてレメの買収に成功し、グチグチ小言を聞かされることがなくなったスカイだった。

ようやく黙ってくれる、と思ったのもつかの間。

友好的になったレメはそれはそれでたびたび質問をしてきてうるさかった。

結局、学校に戻るまでの間、スカイはしゃべり続けるレメに付き合い続けた。


遭難した2年生の救出に成功した二人には生徒会長からのお褒めの言葉があった。

……あったのだが、それだけだった。

「いや、この女はそれだけでもいいかもしれませんが、俺は違う」

褒められて喜んでいるレメの隣で、金をよこせと言わんばかりに手を差し出す。

会長への失礼な態度に、レメは再びスカイへの怒りの炎を燃え滾らせた。

生徒会室の奥隅まで引っ張っていき、腹にパンチを一発入れて再び生徒会長の前に立たせる。


「会長、やっぱり何もいらないみたいですよ」

「本当かい? 」

スカイは痛むお腹をおさえながら、もういいやと思い始めていた。とにかく面倒くさい女レメから解放されたかった。

「もういいですよ。今度仕事がある時は俺一人に言ってくれればいい。そのほうが楽だ」

「会長、今度も二人でお願いいたします」

「わかったよ。二人は相性が良さそうだし、善処しよう」

スカイの意見はなぜか無視された。


もう行ってもいいとのことだったので、スカイはそそくさと生徒会室を後にした。


遭難した2年生の救出以来、生徒会からの仕事依頼はしばらくなかった。

ビービー魔法使い、と絡んでくる連中もすっかりいなくなり、平穏無事な日々を過ごすスカイだった。

そんな日々が過ぎていき、夕食時に久々に公式戦についての話を聞いた。ほとんどスカイの学校内情報収集装置となっているアスクからその話がもたらされた。

食事をとる手を止めずに、スカイはアスクの話を聞き続けた。


「いよいよ公式戦が一年生にも公示されてね、ルールとか勝った場合の特典とかも張り出されていたよ」

校舎の入り口の魔導掲示板に大きく張り出されていた情報だったけれど、スカイはそれを見逃していた。それゆえ、完全に初耳だったのだ。

「それと面白いのが、暫定なんだけどランキングも張り出されていたよ。クラスの平民のみんなは結構愚痴っていたりもしていたんだよ。全体的に貴族のランキングが高めに設定されているからって。でも、まだ暫定だからってことでみんな渋々だけど、納得したんだ」

「ランキング? 」

「そうだよ。まあ、今の段階じゃあ本当に無意味に近いものだともうけど、自分のランキングってきになるじゃない? ちなみに僕もまだ見ていないから、この後一緒に見に行かない? 」

言われてみれば確かに気になった。どうせこの後予定もないので、スカイは一緒に行くことを了承した。


昼間は人だかりができていた魔導掲示板のところにも、夕方時ともなれば数人がちらほらするだけだった。

アスクの案内に従って、二人は魔導掲示板の前に立った。


公式戦のルールが書かれた左側と、ランキングが書かれた右側とで大きく分かれていた。

近くに持ち帰り用の紙もあったので、それを持って帰ってルールは部屋で確認することにした。

二人の視線はランキングの方に向く。


1位 アエリッテ・タンガロイ

2位 レメ

3位 クザン

4位 バランガ・レース

.

.

.

134位 アスク

.

.


上から見ていった二人は、134位にアスクの名前を見つける。Cクラスで平民のアスクには妥当なランキングだった。

「如何にも平均的で僕らしいや」

と本人は笑っていた。

上位のランキングに関してはほとんどが魔力総量順だった。レメとアエリッテについてはどちらが上かという話し合いが教師陣で行われたらしいのだが、アエリッテの家格と歴代最高の魔力総量がものをいい、アエリッテが暫定一位となった。

レメが相当強いという話はどうやら有名なことらしく、それでもレメを一位に推す声が多かったのだが、最近になって致命的なことがありこのランキングが確定された。


スカイはまだ知らないのだが、レメはスカイとの公式戦に白旗をあげたのだ。

一度申し込まれた公式戦はキャンセルすることが基本不可能だ。唯一白旗をあげることで、不戦敗となり実質辞退することは可能である。

オークキングとの戦闘を見て、レメは今一度時間を空けてスカイ対策を練るつもりでいた。


Aクラスの生徒がEクラスの生徒との公式戦を辞退した。

しかも相手はビービー魔法使い。いかにもゴシップ好きするこの情報は、ひっそりと教師陣によって情報の歯止めがなされた。

故に、他の生徒はほとんどこの情報を知らない。

スカイにすらまだ知らされていない。

しかし、スカイのランキングにはちょっとだけ反映されていた。


249位 スカイ・ヴィンセント

250位 タルトン

以上


ビービー魔法使いのスカイはなんとか249位、最下位である250位を逃れることができていた。

アスクはランキングに不満を抱いていたが、スカイはこんなもんだろうと思っていた。

生徒会のメンバーが200番台のランキングも異例だったが、ビービー魔法使いがランキング最下位じゃないのは史上初めてらしい。


このランキング表で一番の被害者は間違いなくタルトンという生徒だった。ビービー魔法使いよりもなぜか評価が低く、怒りに燃え上がった彼は教師への猛抗議に続いて、スカイに公式戦を申し込んだのだ。当然スカイはその申し出を受けた。




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