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十七話 使い魔との契約

生徒会に入会すると決まって以降、スカイの部屋には多くの資料が届けられた。

与えられた権限、それに付随する義務、卒業後の輝かしい道までいろいろとそこには書かれていた。


そして、生徒会の一員を示すための白い腕章も送られてきた。

これを腕に巻いて学校生活をすることが生徒会の一員であることを示す。


スカイが次の日、教室にその白い腕章を巻いていったことでクラス中に衝撃を巻き起こした。

Eクラスの生徒に名誉ある生徒会の席が一つ渡されたことも異例だったし、何より渡された相手がビービー魔法使いとして有名なスカイだったのだ。


なぜ、という感想がまず湧き上がり、次いで悔しさと嫉妬の混ざった感情がスカイに向けられた。


といっても、先日バランガがしたようにスカイに対して暴力行為を働こうという者はいない。

相手は杖を用いての魔法の使用が認められている身。更に言えば、生徒会長からその実力を認めらえた男なのだ。複数だろうと、正面切って腹立たしいビービー魔法使いを倒してやろうという勇気あるものは出てこなかった。


そんなざわざわとした空気も、一週間もすれば全くなかったかのように元通りに戻っていく。

ソフィアは相変わらず敵対兼嫉妬の視線を向けてはいるが、生徒会に入ったからという事へではないので、スカイの生徒会加入騒動は時間が解決してくれたようだった。


入学して一か月も過ぎようという頃、高等魔法学院でもっとも重要とされる儀式が新入生に対して行われる日がやって来た。

かねてより知らせがあったし、知っている者は入学前より知っているほど有名な儀式だ。

皆事前に予習をして、この日を迎えていた。


「えー、今日こうして使い魔契約の儀式を無事迎えられて嬉しく思います」

教壇に立った先生が今日行われる儀式について説明をしていく。

そう、本日は15歳になった魔法使いに贈られる使い魔との契約の日だった。


優秀な魔法使いには、このナッシャー王国では使い魔と契約する権利が与えられている。

優秀な魔法使いとは一般的に有名な実績を残した魔法使いや、高等魔法学院に入れるような魔法使いたちのことを指す。貴族の子弟は自動的に入学できるので、使い魔との契約は生まれたときからの権利といってもいい。

平民の生徒はこれが欲しくて入学した生徒も多い。貴族の生徒にも使い魔との契約は特別なものだった。


使い魔との契約は、それぞれの適正に合わせて使い魔を選択するのがいいとされている。

これは本当のところが半分。詭弁が半分といったところである。


なぜ詭弁を述べるかというと、ドラゴン族との契約があまりに多すぎるためである。

ドラゴン族の使い魔は強力で知られている。魔法の効果を高める面でもよし、使い魔自身が戦闘にでてもよし、見た目ステータスともによし、と穴がない。


一見完璧なようだが、ナッシャー王国の上層部は使い魔の単一化を嫌っており、もっと多種多様に富んだ使い魔との契約を若い魔法使いたちに望んでいる。しかし、ドラゴン族が優秀なのはまちがいないので、どうしても人気が集中してしまう。毎年7割程度の生徒がドラゴン族の使い魔と契約するほどだ。


しかしここ10年、高等魔法学院を首席で卒業する生徒は全部ドラゴン族以外と契約しているという事実もある。先生方はこの点を強調してドラゴン族以外のメリットを述べているのだが、10番以内を見れば大半がドラゴン族の使い魔と契約しているのですぐに生徒はドラゴン族へと興味を戻す。


それほどまにドラゴン族は人気であり、実力も備えていた。

スカイも始めはドラゴン族との契約を考えていた。

実家の父親もそうだったし、二人の兄もそうだと聞いている。


生徒会長と副会長の二人は違うようだが、それでもドラゴン族のメリットは計り知れなかった。

ドラゴン族との契約で魔力弾の一発一発の威力を更に高められそうだったし、なによりドラコンが前線で戦ってくれれば後方から魔力弾をどんどん打ち込める。自分の戦闘スタイルにはもってこいだと思えたのだ。


しかし、それはつい先日取りやめることにした。

ドラゴン族がどうこうという訳ではなった。

もっと最適な使い魔が見つかったのだ。


「スカイ・ヴィンセント。望む使い魔の系統は? 」

「人族」

「おおっ? 珍しいものを選ぶなぁ」

スカイが選んだのは人族。人族といっても、人間とは全く違う。汚いおっさんが常に後ろにひかえているような悪夢は想像しなくても大丈夫だ。

「で、人族のどれを選ぶ? 」

「奇術師を」

「わかった、持っていきなさい」

教師は久々の人族選択に喜んで奇術師のプレートをスカイに渡した。

ドラゴン族以外の選択は常に先生方には嬉しいことなのだ。


スカイが選んだ、人族奇術師とは、いわゆる精霊タイプの使い魔だった。

そもそも、使い魔とは何か。

一見魔物と同じに見える彼らだが、彼らは普段この世界には生きていない。

契約を結んで召喚されたとき、使い魔の存在する特別な空間からこの世界に呼び出されるのだ。契約主の命令には絶対服従であるし、自らの意思で人を襲うこともない。更には餌や睡眠も必要なく、契約主が死なない限り、死ぬこともない。


ドラゴン族などは戦闘に出せば傷ついて帰ってくることもある。それも使い魔の世界、魔域に2,3日返してやって、再召喚すれば元気な姿で戻ってくる。


この世界の生物ではないので、この世界のルールからいろいろと逸脱しているのが使い魔なのであり、そこらへんが魔物との大きな違いになる。


スカイの選んだ奇術師に話を戻そう。

奇術師に限らず、他にも人族の使い魔はいる。彼らは過去に死した英雄たちの魂が使い魔になったものだと言われている。奇術師の場合、400年前に死んだガオエンという人物の魂だと言われている。


スカイは渡された使い魔のプレートを持って、指導教官の見守る前で契約の儀式を開始した。

予習で習った通りの手順を踏んでいく。


まずは石のプレートのその中心に自分の血を一滴垂らす。

彫りにそって血がプレートに馴染んだのを確認した後、自分の魔力でプレートを覆ってやるのだ。

手順は以上だが、使い魔との契約が完了するまでの時間には個人差がある。


スカイの場合、全て順調だったようで、クラスでも一番にプレートが反応を示した。

プレートの中心からまばゆい光が漏れ出し、徐々に姿をこちらの世界に表す使い魔。


スカイのプレートから出てきたのは、真っ赤な丸い鼻が目立つピエロだった。

サイズは子供が抱え込めるくらいの人形サイズ。そのサイズに相応しくデフォルメされた可愛らしい姿だった。

「よう、俺と契約を交わすとは良いセンスしてるぜ」

姿は可愛らしいが声はおっさんだった。

人族の使い魔はこのように話せるのが大半。

ドラゴン族は意思の疎通こそできれど、言葉は話せない。こういった点は人族そして精霊族の強みだ。


奇術師の能力は『トリックメーカー』。

魔法に条件を加えることで、あらゆる変化を起こす。

条件を満たせば能力が上がる半面、満たせなければ能力が下がるなんてことが起こる。


使い魔奇術師は、結構難儀な使い魔として有名である。

スカイがどうやって使いこなすのか一部の教官たちは楽しみを持って見守った。






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