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異世界召喚被害者の会。閑話集  作者: 中崎実


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14/19

そのじゅうよん(上):トラック転生は予防が大切。

いきなり飛び出す子供は世間によくいるものですが。


上は寺井視点、下は他人視点でお送りします(2話同時公開しています)

 小さな子供は大人の思わぬ行動をとるものだが、飛び出しはその最たるものだろう。

 よくある事とはいえ、周りの大人としては驚かないはずもないのだが。


「……あ!?」


 子供を追ってとっさに飛び出しそうになった姪の襟首を掴んで引き止め、幼児の周りに魔力を展開。急ブレーキをかけた4WDを(わず)かに浮かして、幼児を転倒させた。

 タイヤの間の空隙にうまく入り込んだ幼児の上で車が停止した直後、幼児がギャンギャン泣き出すのが聞こえた。


「危ないだろ」


 展開していた魔力をゆっくり減らしながら、姪に注意を与える。


「でも」

「多分間に合わなかったし、負傷者が二人になるところだったぞ?」


 見知らぬ子供の無謀で姪が怪我をするのは困る。

 身内のエゴではあるが、大目に見てもらおう。私もそこまで聖人君子というわけではない。


「え〜、でも」

「悪いことじゃないけどな」


 うっかり自分の事を忘れたのは身内としていただけないが、優しい子ではある。

 いつも通り頭をぐしゃっと()でてやると少し膨れて見せ、それから急停車した車に駆け寄ろうとしたので、また襟首をつかんで止める。


「側面から接近しなさい。運転手はパニックしてるから、うっかりしてアクセル踏む可能性だってあるぞ」


 実際にはそんな事をさせるつもりは毛頭ないが、注意はしておくほうが良い。


「え、うん」


 素直に(うなず)いたのでリリースしてやると、注意した通り停止した車両の下を横から覗き込んだ。


「だいじょうぶ〜?」


 その状況でそれを聞ける神経の太さは、誰に似たのやら。

 姪の声かけへの応答は、さらに大きい泣き声だった。


 幼児を守る分の魔力だけ残してあるから、多少暴れても怪我はしないだろう。


「おじさん、出てきそうにない」


 道路に片膝をついたまま、姪が困惑していた。


「怪我してるのかな」

「それだけ泣いてれば大丈夫だと思うけどね。大丈夫ですか」


 ハンドルを握ったまま硬直しているドライバーに声をかけても、反応が鈍かった。


「わかりますか?」


 少しだけ魔力をぶつけてやる。こちらでの出力は非常に低いから、まず害はないレベルだ。


「飛び出した子供なら無事ですよ」


 ショックで思考停止状態なのだろう。


「とりあえず、車から降りましょう」


 自棄(やけ)を起こして逃亡を企てたら、ドライバーの不利になる。

 ドアを開けてやると、ドライバーがのろのろとこちらに顔を向けた。


「大丈夫です、まず降りましょうか」


 ハンドルを固く握り締めた手にそっと手をかぶせ、ゆっくりと指を離させた。


───────


 子供は保護できたから怪我もなかったが、子供に飛び込んで来られたドライバーの精神までは保護できないわけで、警察が到着した時にもまだ青い顔のままだった。


 もっともトラウマの半分くらいは、子供の親が食ってかかったせいだろうが。子供と手もつながずスマホを見ていた親が、後ろめたさを隠すために怒鳴り散らし始めた様子だったので、相手をするのも面倒だし威圧だけして黙らせておいたが。


「怪我はなさそうだから、救急車は要らないよ」


 子供のほうは、これも通りがかった若い男性がざっとみてくれていた。


「小さい子はハーネスとか使うと良いですよ」

「犬じゃねえんだようちの子は!」

「飛び出して死んじゃうよりマシだと思いますけど」

「車が悪ぃんだろうが!」

「今回はうまく怪我を避けられましたけど、次また飛び出したら、お子さん死にますよ」


 ドライバーを放っておいて何やら喧嘩しているようである。


 まあいいか、当事者から目が()れているならそれはそれで良いし。

 というわけで若者同士の喧嘩は放置して警察に目撃したことを伝えていると、野次馬から大声が上がった。


「だめでしょ!」


 さっき飛び出した子供を姪が(つか)まえて、叱りつけていた。


「トラック!さわる!」

「飛び出しちゃだめって言われたでしょ!?」

「さーわーるー!はしるトラック、さわるの!!」

「死んじゃうから!」

「やださわる!トラック!いっちゃう!さわるのー!」


 じたばた暴れる子供を抑え込むのは、姪には難しかったか。

 手足を振り回して暴れる子供を取り落としそうになっていたが、若い警官が子供を受け止めてくれていた。


「……動いてるトラックに触りたくて、飛び出したんだろうな」


 私と話していた中年の警官は、私に向っては何もコメントしなかったが


「ちょっとお父さん、あとで話聞いて良いかな?」


 と、笑みのかけらもない顔で子供の親に声をかけていた。

 さすがに何も手を打たなくてよい子供ではなさそうだが……私が関知する事でもないだろう。

 スマホを握りしめている子供の父親が膨れっ面なのは、先ほど、勝手にドライバーの写真を撮ろうとしたのを若い警官にたしなめられたせいもあるだろう。警官到着までは私がガードしておいたから、SNSなどにドライバーが無駄に晒されたという事はないだろうが、そんな事してる暇があったら子供を止めてほしいものである。


 中年の警官と私が話し終わり、私の連絡先を教えたところで、子供の母親らしい女性が野次馬を押しのけて現れた。

 姪が抱えていた子供を母親に引き渡してしまえば、私達が関わるべきことは無い。


 ご立腹の女性が子供の父親に食って掛かり、なにやら犬も食わない喧嘩が後ろで始まったようだったが、私達から注意が()れている今が抜け出すチャンスだ。

 姪を少しせかして人の輪を抜けたところで、


「寺井さん?」


 と、声をかけられた。

「動いてる車に触りたくなって車道に飛び出そうとした」幼児は実在します。

近寄ったらどうなるか、そのリスクはまだ考えられないんですね……(汗

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このシリーズの本編はこちらです。
― 新着の感想 ―
群れで採取や狩りをして生きる生物として、群れでの立場が悪くなる(追い出されたり、分け前 減らされたり)は死活問題。反射的に生存本能(僕、悪くないもん! 悪いの、アイツだもん!)が発動してるのかも……。
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