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異空人ー碧空からの招待状ー  作者: 加賀くらま
第1章
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第2項 対策会議

4月1日 09:45 総理官邸大会議室


大会議室には閣僚全員が集結し、それを支える次官や事務官達も集まっていた。

今まさに、総理を議長とし、官房長官を司会とした“対策会議”が始まった。



「それではこれより、汐留上空に出現した「不明異形浮遊体」に関する会議を始めます。まずは、国家公安委員長からの報告をお願いします」


「はい。警察庁、および警視庁からの報告によりますと、午前8時28分に警視庁に「不明異形浮遊体」に関する110番通報が複数件あり、汐留近辺の各警察署・交番に対し、午前8時29分付で警視庁本部より出動が発令されました。それと同時刻付で、確認に向かった交通機動隊員から「首都高汐留 JCTジャンクション 付近に浮遊体の存在を認める」という報告があり、午前8時30分付で浮遊体の飛行周辺半径5キロ圏に限定した「緊急配備」を警視庁本部より発令されました。現在、「不明異形浮遊体」は、現在も首都高汐留JCT付近上空を浮遊、静止しており、警視庁は周辺1キロ圏を「指示避難・封鎖地域」とし、5キロ圏内を「計画的避難地域」、10キロ圏内を「避難準備地域」とし、近隣警察署警官、機動隊および特殊部隊SAT、航空隊ヘリコプターを出動させ、東京消防庁と合同で近隣住民の避難誘導を行なっております。以上です」


「それでは次に、国交大臣お願いします」


「えーと、はい。まず首都高ですが、「浮遊体」接近に伴い新富町、京橋、芝公園各出口と、西銀座、芝浦各JCTから汐留方向へは通行止となっており、一般道もそれに準じる形で通行止等の処置を行なっております。また、鉄道もJR、私鉄各社に対し運行規制と「浮遊体」移動時の対策を指示したほか、汐留地域の海上・水上交通に出しての航行警報等を発令しております。同様に汐留付近上空の一般航空機に対しても規制を行なっております。このため、交通機関に対して大きな影響が生まれているため、関係各位の皆さんにはご協力をお願いしたいところであります。以上です」


「はい。それでは次に経済産業省どうぞ」


(ー中略ー)


「以上で、会議を終わります。次に政府方針としての対処を決定したいと思いますので、場所を閣議室に移します。みなさん、移動をお願いします」



「しかし、めんどくさいなぁ」

大会議室から出た途端、唐突にボヤいたのは農林水産大臣を務める國村靖治である。

「あぁ、まったく、わざわざ俺達の任期中に...」と若干トーンを比較して答えるのは内閣府特命担当大臣(経済再生担当など)・鈴木健太郎だ。

この2人、次の改造内閣までの「繋ぎ」か派閥人事に配慮して任用されたなどと周辺では囁かれている。選んだ総理と官房長官の真意は不明だが、とにかくこの2人、官僚からも、国民からも期待されていない。

「まぁ、そんなこと言わずにさ」と苦笑するのは総務大臣の釜屋だ。

この3人、閣内でも比較的高齢の部類に位置する。

「浮いているだけだし、そのうち消えさえしてくれば良いんだけどね」と國村。

「無責任だなぁ...まぁ、実際これで少しは国民の国防意識も上がるんじゃないかねぇ。首都上空に不明機なんだから、“ミグ”みたいに暫くは話題になるだろう」と釜屋。

「しかしなぁ、所詮UFOだよ。“隣国の戦闘機”が亡命して来たわけじゃあるまいし、オカルトマニアと報道が騒いで、野党が混乱の責任追及してきて終わりじゃないの?」ともっともらしいことを言う鈴木。

「こんなのまで責めないで欲しいよ...まぁ矢面は俺たちじゃないだろうけどさ」と心配そうな目で後ろを振り返る釜屋の視線には、大会議室から出てきた大河内達の姿があった。



「野党は何か言ってきているのか?」と大会議室を出たばかりの大河内が総理補佐官の矢本に聞いた。

「石垣さんの話では、さっそく民進党が緊急対策会議を開いたそうです。他野党も動きがあるとか」と政務担当補佐官の名前を出しつつ報告する。

「“対策会議”って、なにするの?」

「さぁ...。きっと“友愛”を求めて交流方法探しているんじゃないですか?。あそこには宇宙人もいますし」

「....上手いこと言うね。でも、議事録前では言うなよ。いいね?」

「矢本君、あまりふざけないで」と官房長官の佐藤が言いつつも目尻が緩んでいる。

「総理、どちらにしろ野党の動きが気になります。首都上空に識別不明の異形型の浮遊体。これに対して野党がどう出てくるか」

「佐藤さん。とりあえず、幹事長と国対委員長に野党含めた国会対策を指示してくれ。あと国民に向けた会見の準備も」

大河内がその時、ふと立ち止まった。釣られて佐藤も、矢口も護衛のSPも止まる。

「...いつからだろうね。国民より野党の動きに気を使わなくちゃいけなくなったのは」



閣議室は、楕円形のテーブルを中心に各閣僚が座る。基本的には1番窓側の真ん中の席に総理が座る。今日も例外はない。

「さて」と小さく大河内が呟く。これが大河内の「スイッチ」であると認識して久しいのは佐藤がそれだけ長い時間共にしているからだろう。

「早速だが、みなさん。まずは政府としての対応を決めなくてはならない。それには、政府首脳部たる内閣として、全員の意思統一が必要だ。派閥や年齢、もちろん政党に関係なく意見を言って欲しい」

大河内が皆の顔を見回しつつ宣言する。

すると、一本の手が上がった。それは総務大臣、釜屋だ。

「釜屋さ...いえ、総務大臣。どうぞ」

「総理。浮遊体は、航空機として認識して良いのですか?」

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