プロローグ
プロローグ
もとはといえば、僕が人よりちょっと寄り道が好きなだけで、というかただ方向音痴なだけなんだ。
いや、地図は読めるよ?ちゃんと目的地の場所がわかってればね。
たださ、僕がもってた地図って真っ白なんだよ。何にも書いてないんだ。ただ碁盤の目みたいに横から縦から線が引いてあるだけでさ。コンパスだってもってなかったんだ。
そりゃあ旅って言っても無理があるよね。だから放浪って言ったほうが正しいかな。
それでさ、僕はその白地図の上を右往左往してたんだ。後になってみればそのときに色々面白いこともあってね、その時はなんの気なしに過ごしてた事も後になれば良い思い出ってことさ。
今考えてみればそのときに出会った人とかが結構心に残る人たちでさ、ぶらぶら旅してる僕を面白いと思ったのか興味を持ったのかしらないけど、色々親切に道を教えてくれたりもしたわけなんだ。
僕がこの話をしようと思ったのもその時に出会った人たちが心に残っててね、今こうして一旦旅を終えてほっと一息ついてるときに浮かんでくるんだ。なんて言ったって、どこへ行こうかどこへ行けば良いのか分からない僕に道を教えてくれたり、親切にしてくれたんだからね。僕は結構そういう事を忘れないで覚えておく性質なんだ。
だから今僕はこうやって旅・・・っていうか放浪してたところを白地図にマーキングして、そのときの事をまとめてるんだ。
あ、そういえばまだ僕の事を全然はなしてなかったね。僕の名前は夏希って言うんだ。でもそんなのどうだって良い事なんだ。だって旅してた時も人から呼ばれる名前はばらばらだったからね。苗字が有名人に似ているっていうだけの理由でアオイとかさ。自分でも誰の事を言ってるのか良く分からない時があった位だよ。だから僕の名前を知っててもあまり意味はないと思うな。実際、夏樹って呼んでたの一人だけだもんね。
で、年は十九。でもタバコ吸ったりお酒飲んだりとかしてたから建前ではハタチって言ってたほうがいいかな。
経歴とかも別に大したことはないんだ。しいて言えば高校は中退したな・・・半年か一年しない位で。なんていうか、つまらなかったんだよね。同級生も面白いやつ居なかったし。まあそんな感じだよ、僕の経歴は。必要だったら追々話すからさ。
・・・で、どこから話せば良いんだ?まあ、旅を始めたところから話せばいいんだろうけども、君だっていきなりこの状況で話を始められても困るだろう?なんで旅してんのとか、ちゃんとした地図買ったらいいじゃないかとか。挙げ始めたらきりがないよね。
けどそんなの人生とは旅だとか言っちゃう人とか、行き先を決めない旅のほうが楽しいって思う人がいるのと同じで僕もそれに似たところがあるんだ。
そんな適当な理由で納得するとは思ってないけど、とにかく僕は目的地の場所が書かれてない白地図をもって旅をしてたのさ。