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賛美歌
貴女は救世主ほど美しくない。
貴女は世界一の何かを持っている訳でもない。
でも、貴女は私の狭い世界では紛れもない頂点の美しさなのだ。
貴女に賛美歌を贈ろう。褒め称えよう、その純粋な美しさに。
人の感じる美しさは千差万別なのだから、私以外に賛美する者がいるかどうかは分からないのだけど。
汚い美しさは存在する。
道端の薄汚れた石ころ、灰を被った絵画、錆び付いた鉄筋にだって美しさは存在する。
汚れは美しさだ。貴女はある意味で、汚れきっているからこそ美しい。
清濁併せ持つその人間の表面化が、何とも泥臭く汚い美しさを魅せてくれる。
汚れた美しさに、賛美歌を。
薄汚れた歌詞でも、どんなに乱雑な音程でも構わない。思い切り穢し、濁そう。そこに美しさがあるのだから。
歌は美しい。だから歌は汚れている。
汚れに、賛美歌を。
それを奏でる貴女に、賛美歌を。
清き濁りの人間に、賛美歌を。
人とはつまり、何ものでもない歌なのだ。