ランクダウン
『あんな攻撃を私達の方ではしてきませんよ!?』
リーゼが驚きの声を上げている。
「★の上昇による未知の攻撃って事なんだね」
あっぶねー!
だが、鎧イノシシの炎攻撃は長時間持つ物じゃなく、炎は割とすぐに吐き出し終えた。
「ブウウウウ……ブルウウ……」
あ、息切れしてる。
これは攻撃のチャンス!
俺は急いで息切れしている鎧イノシシに向かって蔓で回り込むように移動して先ほど切った脇腹とは反対側の縫い目に剣を刺し込んだ。
「ブル!?」
お、効果ありか? 仰け反ったぞ!
もちろん、逃さずに後ろ足に攻撃、今度は前足もだ!
毛皮が硬いな……とはいえ、先ほどみたいな事が無い様に急いで離脱する。
「ブルウウウウウウ!」
おうおう、頭から湯気が出そうなくらい激怒している。
とはいえ、炎を吐くのはかなりの隙を作るのか、まだ呼吸が荒くて動きが遅い。
が、距離を稼いだ辺りで息切れは収まってしまったようだ。
そして、更なる攻撃手段として牙が鋭く伸びた……な。
『アレも無いです。気を付けて!』
剣とも斧とも言える鋭い牙を振りかざしながら足場をドンドン破壊して俺立っている足場に突撃する。
「うお……」
地響きに思わず足を取られそうになるぞ。
木々から蔓が生えているお陰でどうにか足を取られても平気だけど、それも何時まで持つやら。
少しずつ足場が減って行っているし、先ほどの炎の所為で蔓が減った。
致命傷は与えられていない。
リーゼに教わった通りにコアをやっぱ狙う方向が良いか。
弱らせて動きを遅くさせる作戦だったし、足をついでに狙ったのは動きを鈍らせる為だ。
「シャイニング!」
ポーチに入れていたスクロールを握って発動させる。
カッと光が発生し、鎧イノシシは目が眩む。
「ブル!?」
「今だ!」
急いで着地し、俺の接近を察知した鎧イノシシの頭を振る攻撃を切りぬけて、喉の辺りにあるらしきコアに狙いを定める。
ザシュッと確かな手ごたえ……そしてコアのある場所に剣が突き刺さる。
バキンとガラスを割る様な音が響く。
――ランクダウン!
赤くアナライズリングの解析画面に警告の様な音が発生した。
え? ランクダウン?
『良い調子ですよセイジさん! さあ、何度も攻撃をしてコアを破壊してください』
リーゼは行け行けと応援しているが、アナライズリングからは警告音みたいな音がしてるぞ?
解析画面のコアもヒビが入ってるし……。
上手くダメージが入っているとも言えるけど……。
うん。一撃で鎧イノシシのHPが三割くらい削れている。
後、5割5分って所だ。
「ブルウ!」
今度こそとばかりに鎧イノシシは俺に向かって牙を振りかぶる。
ステップを作動させて数メートル瞬間移動して回避、そのまま離脱する。
攻撃は出来る限り受けない事に――。
という所で、鎧イノシシは鎧の部分が吹き飛ぶ。
「な、なんだ?」
飛んでくる鎧の破片を俺は屈んで避ける。
「ブウウウウウウウウウウ!」
そしてギン! っと鋭い眼光で鎧イノシシは俺に狙いを定めて、素早く俺の目の前移動していた。
「はや――」
咄嗟にステップを作動させて、更に残された足場から蔓で移動する。
鎧を脱いだイノシシは俺の居た場所に思い切り噛みつきをしようとして、俺に避けられる……が、俺の動きを予測していたとばかりに素早く俺を追いかけ、足場によじ登って跳躍してくる。
「うお!」
蔓を使ってターザンの様に移動していたお陰で紙一重で鎧を脱いだイノシシの猛攻を避ける事は出来たのだが、鎧を脱いだイノシシは軽やかに着地して俺が回り込もうとした先へ急いで移動を始める。
「そう思い通りになると思うなよ!」
咄嗟にレイオンとフェーリカに貰って使わなかったプラントウィップを取り出し、枝に引っ掛ける。
そして逃げる方角を変更して鎧イノシシの猛攻を避ける。
「ムウ!」
遠くで強く拳を握りしめるな! 良いから隠れてて!
地面に着地して逃げると、鎧イノシシは追い詰めるとばかりに突撃してくる。
くっそ! 防御を捨ててて素早さで勝負ってか!?
『セイジさん! 私の目じゃ追いきれません! ですが、諦めないでください! まだ手立てがあるはずです!』
「わかってる!」
俺が持っている物を確認する。
スクロール! 困った時には魔法にまず頼ろう……。
あ!
「アクアシールド! アクアシールド!」
俺目掛けて突撃してきた鎧を脱いだイノシシが俺の発生させたアクアシールドにぶつかる。
水の盾が出現して鎧を脱いだイノシシの進撃を遮ったのだ。
「ブブウ!?」
予想だにしない壁の出現に鎧を脱いだイノシシは声を上げる。
回り込まれたら厄介だ! 辛うじて動きを止められるなら手段を選んでいる暇は無い!
「ウッドシールド! ウッドシールド!」
ウッドシールドの残弾も使い尽くし、俺は鎧を脱いだイノシシの四方を囲むように魔法の盾を出現させて動きを止める。
もちろん、そんな長く攻撃を止める事は出来ない。
そんなに大きくないし、貧弱な盾なのは分かっている。
まずはその動きを止める事を優先すべきだ。
「はぁ!」
ブロブダガーを投げつけて、鎧を脱いだイノシシの足に当てる。
すると鎧を脱いだイノシシの足元にベチャッと粘液が引っ付き、足が取られる。
と、同時に動きが鈍り始める。
「後はこれだ!」
フェーリカの作ったボーラを振りまわして残りの足を縛りつけるとばかりに投げつける。
ぐるぐるとボーラは飛んで行き、鎧を脱いだイノシシの足に絡まる。
「ブブウウウウ!」
予想だにしない動きの阻害に鎧を脱いだイノシシは足を取られて転倒した。
逃がすか! この隙を逃したらチャンスはもうない!
『セイジさん今です! 早く急所のコアを破壊しましょう!』
撤退をすべきだと、俺は……リーゼの忠告に……従わずに鎧を脱いだイノシシの胸……心臓のある位置に剣を突き立てる。
「ブルウウ!?」
「まだだ! はああああああああああああああ!」
魔力を込めると言うのはまだよくわからない。
けれど、剣を思い切り突き立てて力を込めた。
剣の刀身が更に光りを放ち、鎧イノシシの肉を……心臓を焼き焦がす。
『セイジさん違います。急所はそこじゃないです! 早く、早くしないと起き上がりますよ!』
リーゼの言葉を無視して俺は、鎧イノシシの心臓の奥深くへと思い切り突き立てる。
ビクンビクンと剣先を遮る肉の手ごたえが生生しく感触を伝えて来る。
アナライズリングに浮かぶ鎧イノシシの生命力の目盛りが急激に落ち込んで行くが、コアを攻撃した時程では無い。
4割……3割7分……3割4分……。
「ブルウウウウ!?」
これ以上させるかとばかりに、鎧イノシシが抵抗に頭を振るうが、腹に回り込んだ俺に攻撃は届かない。
が、縛られた足で俺を引っ掻こうとし、寝がえりを打つように転がる。
ぐ……地味に足がごつごつと足が当たり全身が痛みを発する。
同時に寝がえりを打たれて押し潰されそうになるが、その時ばかりは剣を離して、転がりきった所で、再度持って深く突き刺す。
上手く肉が裂け、心臓へと深く突き刺さり始めた。
3割……2割5分……1割7分……。
トドメだ!
剣を引き抜き、スクロールを握りしめて叫ぶ。
「バーンフレイム!」
業火が俺の視界の先で発生し、心臓を焼きつくす。
「ブルウウウウウウ――」
俺の放った炎を剣で抉られてむき出しになった心臓に放たれ、鎧イノシシの生命力の目盛りはゼロとなった。
「はぁ……はぁ……」
全身が痛い……。
倒れそうな状態で、意識をどうにか保ち、ヒールのスクロールを読む。
痛みが飛んだのは良いが、まだ呼吸が安定しない。
俺は白目を向いて絶命する鎧イノシシの前で座り込む。
『セイジさん! 大丈夫なんですか!』
「はぁ……はぁ……ああ、大丈夫だよ、リーゼ」
勝利した事に寄る経験値の入手を見て、俺は中ボスを倒した事を確かに自覚した。




