聖剣使い
……赤幼妖狐の毛皮と金槌で研磨する。
『デコボコのなまくら剣』+5★★★ 付与効果 炎の加護 なまくら ―――
刀身がデコボコの、ぶっちゃけ鈍器としか言い様が無い失敗作が完成!
一応、何度か叩き直したのだけど、それでもちょっと曲がってる。
三日月刀と思って納得しよう。
なまくらという効果が悲しいけど無視だ!
やっぱり素人のなんちゃって鍛冶じゃ上手く行く訳ない。
運良く魔法効果で何か起こったっぽいけど、失敗作なのは変わらない。
とはいえ、初めて作った自作の剣という感動が無い訳じゃない。
役に立つ見込みは無いけど……魔物相手に使ってみよう。
さっそく赤幼妖狐を発見。
「ケーン!?」
「え?」
ズバッと赤幼妖狐にデコボコなまくら剣で切りつけた所、刀身が赤いオーラを放って、赤幼妖狐を真っ二つに切断した。
すごく軽かった。
ただ……何か体が重い気がする。
なんだろうか?
アナライズリングを確認すると俺の魔力という数字が減ってる。
おお……どうやら魔力を犠牲にして切れ味を向上してくれる剣になったらしい。
なまくらでもこれなら役に立つ。
しかも血糊が付いていない。
刀身に出現した魔力が弾いてくれているようだ。
「失敗作だけど、良い感じだな」
思わずスキップしそうになる。
考えてみれば錆びたどうの剣で切れ味がそれなりにあるんだ。
なまくらでも錆びてなきゃこう言う利点が起こっても何も不思議じゃない。
そんな感じで、俺は自作の剣を振り回して、Lv上げに勤しむ。
雑魚を狩っていればいつかはフィールドが切り替わってブラウンキマイラがいなくなるさ。
もしくはブルーマンティコアを倒せるくらいに俺は強くなる。
ふいにリーゼが気になって目を瞑る。
リーゼは召喚を断念し、俺の救出をやってくれそうな冒険者をロザリーと一緒に探していた所だった。
俺はLv上げ中だった。
「で? その助けたい奴は何処のどのあたりにいるんだって?」
「探知した所だと、中級層よりさらに下かと……」
リーゼの話を聞いてくれた冒険者に魔法で探知した迷宮での箇所を指摘する。
「無理だ……他を当たってくれ」
「お金は支払います。どうか行ってくれませんか?」
「死にたくないんでね。幾ら大金を積まれたって無理な物は無理だ」
「ですが――」
「リーゼ、諦めなさい。むしろ前金を要求して逃げる事をしないだけ良い人よ」
ロザリーがリーゼの肩を掴んで、引きとめる。
「申し訳ない」
そう言って、冒険者は去って行った。
俺が行方知れずになった時、ハイトインさんと共にリーゼは辺りの捜索を行った。
現在もハイトインさんは探索を続けてくれている。
ハイトインと同行していた新米冒険者は迷宮脱出の際に。
「俺はまだ自らを磨きたい。そんな奴の御守りなんて御免だね」
と、魔物と戦えると理解した瞬間、俺の捜索を優先したいと提案したリーゼとハイトインさんの意向を無視してパーティーを抜けて行ったそうだ。
リーゼは身勝手な人だと怒った。
冒険者にはやっぱり、そういうワガママな人が多いのだろうかと肩を落とす。
しょうがないとは思うが、言い方ってもんがあるよな。
「リーゼ、少しは休みなさいよ。このままじゃセイジが帰ってくるまでに貴方が死んでしまうわ」
「……いいえ、私はセイジさんを救う義務があるんです! 後少しだけ、交渉をさせてください」
「まったく……リーゼには叶わないわね」
「それに、出来そうな方の当てはもう一人しかいません」
「そう……じゃあ行こうかしら?」
「はい。コンタクトを取った所、相手方も時間を作ってくださいました。もしその方がダメなら別の手段を取るしかありません」
「はいはい。じゃあ行くしかないわね。で? 誰なの?」
「ノレイトークさんと言う方です。上級層を踏破した、聖剣を発見した勇者です」
「あ、名前なら聞いた事があるわ。なるほど、リーゼも頑張るわね」
「はい」
リーゼとロザリーは俺を助けられるかもしれない相手、ノレイトークとコンタクトを取る為に、城下町の裏通りにある酒場に顔を出した。
昼の酒場なので、人もまばらだ。
ただ、人相が悪そうな連中が酒場で屯っているようだった。
リーゼは酒場のマスターに話しかけ、待ち合わせをする。
「……どうぞ」
「ありがとうございます」
酒場のマスターが飲み物を差し出す。
「まだ来ないみたいね」
「はい……時間はそろそろなんですけど」
リーゼとロザリーは差し出された飲み物をチビチビと飲み始める。
やがて……何故かリーゼとロザリーは何度も瞬きを繰り返しながらあくびを始める。
眉を寄せながら目を何度もこすり、眠気を払おうとするのだが、睡魔には逆らえないのか……ブツッとリーゼの意識が飛ぶ。
え? 何が起こった?
いきなり眠った?
俺はLv上げの狩りをしながらリーゼの様子を見守る。
すごく……嫌な予感がした。
それから……俺は不安を覚えながら拠点に移動して荷物を整理する。
「リーゼ!」
リーゼは疲れて寝入ってしまったのだと思うほか無かったのだが、やがてリーゼがロザリーの声で目を覚ます。
俺は目を瞑って状況を見つめ続けた。
「こ、これは!?」
リーゼは起き上がろうとして起き上がれず、両手両足に手錠を掛けられている事に気付いた。
「やっとお目覚めの様だな」
声の方に視線を向けると……リーゼは檻に入れられていた!
しかも檻の外には人相の悪い屈強の鎧男が立っている。
腰には大ぶりの剣。
「ドラーク学園の生徒様達が俺に何の様なんだ? 一応、聞いてやるぜ」
「どうして私達が檻に……」
リーゼが目を細めて鎧男を睨む。
しかし鎧男はへらへらとゲスな笑みを浮かべるだけだ。
「ほら、俺に用があったんだろ?」
「貴方がノレイトークさんですか、飲み物に睡眠薬を混ぜて何がしたいのですか!」
「質問に質問を返すんじゃねえよ。俺が聞いてんだ」
「……貴方が中階層を突破した冒険者だと聞いたので、私の大切な人を助けるために力を貸してもらえるように頼もうとしたんです」
「ほう……」
「報酬は前金でトニア金貨250枚。成功時には500枚を約束します」
金貨ってアレだよな?
少なくとも銅や銀よりは上のはず。
詳しくは知らないが安くない金額だろう。
しかしリーゼの言葉にノレイトークはヒューッと口笛を吹いただけだ。
金額の大きさに驚いたが、それよりもこの男の反応に悪感情しか湧いてこない。
「奮発してくれるねぇ。条件は悪い話じゃねえな」
「ええ、ですからこのような無礼に関しては目を瞑ります。どうか依頼を聞いてくださらないでしょうか?」
そう下手に出るリーゼだが、ノレイトークとその仲間達は揃ってげらげらと笑い出す。
「あははははは!」
「バッカじゃねえの?」
一頻り笑った後、ノレイトークと言うゴロツキはリーゼとロザリーに向けて言い放った。
「そこまで奮発するドラーク学園の生徒様の家に……身代金を要求するって考えねえの?」
「え……」
「ま、お前等の両親から揃って金を頂いたら、お前等、顔は良いし他国の研究機関に売りつけりゃあ……金稼ぎと口封じを一挙に出来て良いと思ってんだぜ」
「私達を売るってどういう……」
「ドラーク学園の生徒様だぜ? ゲートに使い魔を送りつける技能を持っているなら拉致してでも手に入れたい国が……無いと思っているのか?」
リーゼとロザリーの顔が真っ青になって行く。
当然だ。そうならない方がおかしい。
「ま、死なれちゃ困るし、布を口に入れこんどけ。さて、売り先に綺麗な状態で見せておかなきゃな」
「ノレイトークの兄貴、それが終わったらお楽しみタイムですね! ゲヘヘヘ!」
「あったりめえよ!」
ギャハハハとガラの悪い連中が笑い続けている。
コイツ等……!
「ああ……そんな」
諦めないとばかりにリーゼは魔法を唱えようと意識を集中した。
しかし、リーゼの魔法は発動せずに魔力が霧散してしまった。
「は! 魔法が唱えられると思ってんのか? お前等の手足に付いてるのは魔法封じの手枷だぜ?
それに」
ノレイトークはスッと剣を抜いて自慢する様に掲げる。
「俺の聖剣セーフォアルの前じゃ師団であろうと手も足もでねえよ。お前等は存分に俺に金を与えてから、楽しませてくれや」
ガハハハハ!
なんてゲスな笑みをノレイトークとその配下達はリーゼとロザリーに浴びせ続けていたのだった。




