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妖精

作者: 範馬 竜哉

執筆歴はそこそこ長いのですが、最近このサイトを知りました。公募に出した小説は空振りで、まだまだ修業が必要だと思いました。皆さんに感想を頂けると幸いです。

ジャンルは恋愛にしましたが、ファンタジーともとれるかもしれません。ショートショート的な作品です。

是非感想をよろしくお願いします。

夢を見ていた。

密林の中をひた走り、僕は何かから逃げていた。相手は強大な獣とも人智を超える怪物ともつかぬ身の毛もよだつような存在だった。

喉がからからに渇き、しかしそんなことも意識の外にあるような、とても恐ろしい夢だった。


そんな悪夢の中にいる僕を彼女が優しく起こしてくれた。

「怖い夢でも見ていたの?かわいそうに」

そう言って彼女は僕を抱きしめた。

「ああ、怖い夢だった。でも君のおかげで安心したよありがとう」

「今日は日曜日だよ。ごはんを食べたら出かけようよ」

「うん、今日は君の誕生日だね」


僕たちはアパートを出て車に乗り、大きな池のある公園へ行った。

輝く水面をながめながら彼女と様々な話をした。新しい映画の話

世間の話

まわりの景色の話

少しはずかしかったけれど、僕が彼女をどれだけ好きかということ‥。

それから映画を観て夜になり、僕は少し頑張って彼女を高いレストランへ連れて行った。

彼女はすごくおいしいと、とても喜んだ。

食事が終わって、僕は彼女にプロポーズをした。これからの人生をずっと共にしたいと。

しかし彼女は複雑な表情で口籠った‥。


一年後のある日夏の日、その日は蒸し暑い夜だった。

寝苦しく目が冴えてなかなか寝付けなかった。

明かりを点けて本でも読もうと思い立ったとき、閉じた瞼のままやわらかい光を感じた。

目を開けると、枕元に消しゴム大の光が佇んでいた。

よく見るとそれはピーターパンの映画にでてくるティンカーベルのような姿をしていた。

「願いはありますか?」その光はそう問いかけてきた。

その声は頭のなかに直接響いてくるようだった。 願いなんてすぐには浮かばなかったが、自分の中でタブーにしていたことを思い立った。彼女に会いたい。そう思った。 彼女にもう一度会いたい。

そう語りかけてみた。

するとその妖精はなにやら複雑な表情を浮かべて、枕元を照らしていた光と共に消えていった。

小さな願いで不満だったんだろうか。

そのままのま瞼を閉じた。脈略もない考えが浮かんで消えて、今度は寝付けそうだった。


目を開けると自分の部屋ではなかった。そこは彼女の部屋だった。

昨日の妖精は本物だったんだ。

彼女は眠っていた。時計は八時をまわっている。

同棲していた頃は僕より何時間も早く起きて僕を起こしてくれていたのに。

彼女の父親の反対で僕たちは引き離された。

彼女は、彼女の親に逆らうことができなかった。けたたましく目覚まし時計がなった。

しかし彼女に目を覚ます気配はなかった。

おかしいと思い、彼女に近づくと息をしていないことがわかった。

階段を上がる音がし、彼女の母親がドアをあけた。

「息をしていないんです」

状況も省みず、僕は必死に言った。

母親が確認し、救急車を呼んだ。昨晩、彼女は仕事帰りに事故に遭い、医者にかかったが、ガラスが顔と腕に少し入っているだけで問題ないと告げられたらしい。

実際には脳にダメージがあり、昨晩のうちに亡くなっていたという。

彼女は病院に運ばれたがやはり手遅れだった。

彼女の母親は泣き崩れ、父親は僕を病室から追い出した。

駅へと向かいながら昨晩のことを思い出した。 あれは彼女だったのではないだろか。

息をひきとり、妖精となって僕のもとへ現れた。あの複雑な表情はそのせいだったのでは‥。

公園の草原にいる、風に髪をなびかせて笑う彼女の姿が目の裏に浮かんだ。

何を願えばよかったのだろう。涙が頬を伝う。

読んで頂いて本当にありがとうございます。

まだまだ荒削りだと自分でも思います。

これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします。

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