ソフト指し【原稿用紙一枚小説】
掲載日:2013/09/05
四日目。睡眠サイクルがおかしい
将棋というゲームは終局後、勝つか負けるかしか存在しない。勝った方が全肯定され、負けた方が全否定される。一手一手積み重ねた言い分や論理が正しいと結論づけられて相手の論理が根っこの部分から崩れ去っていく快感は筆舌に尽し難い。そしてさらにソフトを使えばその快感は高まる。
才能もなく、努力もほとんどしていない自分が才能にあふれ、毎日毎日何年も研鑽を積んできた相手を打ち負かす瞬間。
その日、ネットで対局した相手は有名なアマ強豪だった。時間のないネット将棋で人間がソフトに勝つのは至難の業。序盤互角で中盤有利になり、終盤にさしかかる。終盤はソフトがもっとも得意な分野。しかしそこから逆転される。執念の一手一手。棋士が誰もが憧れるような感情の籠った渾身の一局。昔、俺もそういう棋士を目指していた。しかし、どんなに頑張ってもソフトに勝てないと思う男は積まれた参考書を横目に見るだけだった。




