※ネタバレあり『ストレンジャー・シングスの最後について考察する』
シリーズが完結した今、エルの最後をめぐる解釈は、「生きている派」と「死んでいる派」の2つに分かれている。
生きている派の根拠は、あのクライマックスシーンの違和感にある。
エルの動きを封じる音波装置が作動している中で、なぜ彼女は平然と力を使えたのか。力を使っているのに、なぜエルは鼻血を出していなかったのか。
そこから考えられるのは、「あの場にいたエルは、カリが見せた幻影だったのではないか?」という仮説だ。
しかし、この仮説には大きな矛盾がある。
あのシーンの時点で、カリは既に死んでいるからだ。
脚本を書いたダフィー兄弟は「解釈は視聴者に任せる」と言っている。しかし、その一方で、エルを演じたミリー・ボビー・ブラウンには「真実」を話している。
真実があるのなら考察したい。
これはオタクの性である。(-□ω□-)
だから私は、いまからある可能性について話す。1人のオタクの考察と思って読んでほしい。でも、そんなオタクの考察で、ストレンジャー・シングスをもっと楽しめた、好きになってくれたなら幸いだ。
最終的な解釈は、あなたに委ねられている。
◇
まず初めに、私はエルは生きていると思っている『生きている派』の人間だ。
しかし、エルが生きていると主張するためには、「死んだはずのカリが、なぜあの距離で幻影を出せたのか?」という疑問に答えを用意しなければならない。
作中を見る限り、カリの能力は100メートル前後の中距離までしか届かない。その彼女が、裏世界にあるホーキンス研究所から、数十キロは離れているであろう表世界の軍施設に干渉し、幻影を見せる。
それを実現させるためには、カリの生存と能力の劇的なパワーアップが必要になる。
そこで私は、作中の2つの事実に注目した。「エルがマックスの命を助けたこと」と「ウィルがヴェクナの力を使えたこと」だ。
【1.エルは命を救える】
マックスはヴェクナの呪いにより、一度は心臓が止まった。しかし、エルは自身の力を注ぎ込むことで彼女を救った。これは、「エルの力は死を遠ざけ、命を繋ぎ止めることができる」という前例だ。
私は、エルが死にゆくカリに対しても、同じことをしたのではないかと考えている。
家族に近い絆を持つ姉、カリ。
彼女が倒れたとき、エルが過去に成功した「命を繋ぐ方法」をもう1度試そうとするのは、とても自然な心の動きだ。
つまり、カリは「エルの力が注がれたことで生存していた」。これがまず1つ目の推測だ。
【2.力の継承】
次に、ウィルとヴェクナの間に起きた「力の継承」について話したい。
ウィルは本来、ごく普通の少年だ。しかし、裏世界でヴェクナに力を注ぎ込まれた結果、物語の終盤では、デモゴルゴンを封殺するほどの強大な力を得た。
これは、「力を注がれた者は、相手の能力の一部を継承する可能性がある」ことを示している。
この2つがあれば、私の考えは完成する。
エルは、カリの命を救うために自身の力を注いだ。そして、命を救うほどの力によって、カリの「幻影」という能力は、エルの特性である「長距離の精神干渉」を伴う進化を遂げたのではないか。
そう考えれば、すべての矛盾が解ける。
なぜ死んだはずのカリが幻影を見せられたのか。
なぜ、あれほどの長距離の干渉が可能だったのか。
――カリが生存しており、能力が進化していたからだ。
あの場で微笑んでいたエルが鼻血も出さず、音波装置の影響を受けなかったのは、カリの進化した能力によって映し出された「幻影」だったからだ。
そして重要なのは、あれは単なる幻覚ではないということだ。
ウィルがヴェクナの意識と繋がっていたように、カリとエルの間にも、意識の繋がりがあったと考えられる。
つまり、あの幻影は、エルの意識が直接投影された、極めて特別な分身だった。
だからこそ、彼女はあそこまで愛に満ちた表情でマイクに微笑み、触れることができたのだ。
【補足:エルの不自然な表情】
しかし、エルはいつカリと計画を練り、いつ逃げ出したのか?という疑問が残る。
そこで最終話、1時間15分あたりの、マイクがデレクと手を振り合っているシーンを思い出してほしい(なんなら、見返してほしい)。
マイクの隣にいるエルは、安堵の表情を見せる周囲とは対照的に、一点を見つめ、まばたきすらしていない。まるで、これから起こる「計画」を、遠くにいる誰かと話し合っているようだ。
軍に包囲されたトラックからマイクたちが降りた際、エルもトラックから降りていた。つまり、このとき、音波装置は起動していなかったと考えられる。
その僅かな隙をついて、エルは隠れ、カリの進化した能力に未来を託したのではないだろうか。
◇
あの幻覚が、エルの精神を伴う特別な幻影だったならば、エルがマイクへ残したある言葉には、強い願いが込められている気がしてならない。
エルはマイクに「You've seen me, the real me.(あなたはいつも、本当の私を見てくれた)」と言っていた。
エルは「普通」の少女ではなかった。
それでもマイクは、彼女を1人の少女として見つめ、その弱さも強さも愛してくれた。
君は僕のヒーローだ、と。
2人の育んだ絆にとって、あの別れはあまりに切ない。だからこそ、エルはマイクにあの言葉を残したのではないか。
「マイクなら、いつかこれが投影だと気づいてくれる」と信じて。
エルは死んだ、と深い喪失の中にいるマイク。
誰とも会えず、独り別の場所で生きるエル。
2人の世界は、今は決して交わらない表と裏のように隔てられている。しかし、「本当の私を見てくれた」という信頼が、いつか2人の世界を繋ぐゲートを作り出し、2人を再会させるはずだ。
『ストレンジャー・シングス』は、誰かを信じることで、目の前の世界がガラリと変わる物語だった。
ホッパーの生存を信じたジョイス。
マックスの帰りを信じるルーカス。
皆を信じて秘密を告白するウィル。
きっと、強く信じ合っているマイクとエルもいつか必ず会える。
私はそう信じている。




