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学園を支配したいじめっ子は洋館に囚われる  作者: にゃんこ雷蔵


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プロローグ

目が覚めると、私たち三人は――見知らぬ洋風の玄関ホールに寝かされていた。

天井のシャンデリアはゆっくりと揺れ、壁には古い肖像画。

冷たい石畳の上に、赤い絨毯。

空気はどこまでも冷え切っており、肌寒い。


「……ここ、どこ?」

掠れた声で呟いたのは、山科澪(ヤマシナレイ)

学園で『友人』と呼べる数少ない人間のうちの1人。

彼女は、私の生家である九条家の遠縁にあたる山科家の一人娘だ。


その隣でもう1人の友人である鞍馬玲奈(クラマレナ)が体を起こし、鋭い視線を周囲に巡らせる。

「夢って感じでもないな。痛みもある」

彼女は拳を握りしめ、手首の関節を鳴らした。

その音が、不自然なほど大きく響く。館の中は、静まり返っていた。

彼女は私の護衛兼暴力装置だ。

1年生の時に都内の武術大会でも優勝している。


「美桜、ここどこだと思う?」

玲奈が私に尋ねてくる。


私は、床に座ったまま、冷たい空気を吸い込み、吐き出す。

これまでの記憶を遡ろうとしたが、なぜこの場所にいるのか、頭に靄がかかったように思い出せない。


いつものように学園で過ごし、『おもちゃ達』で遊んでいたところまでは記憶がある。

帰り道、おそらく学園を出るその瞬間に何か…。


考え込む美桜を待つ間に、零は立ち上がり周囲を確認する。


「美桜、あれ出口じゃないかしら」

零が指差す先には、出口と思わしき重厚な両開きの扉があった。


3人は忙しい出口に駆け寄り、開けようとしたが、扉は開かない。

零や玲奈が大声で叫ぶが、重厚な扉はその声すら吸い込まれるようだった。


私は、一度落ち着くために後ろに下がる。

その時に小さな机に手があたる。


その上に、一冊の黒く、古びた本が置かれていた。

革のような表紙はひび割れ、金の装飾も剥げ落ちている。

私は何のためらいもなく、その本を開き、中を確かめる。



『この館から出ることはできない。

この館には、毎夜、「来訪者」が現れる。

あなたは、その夜を生き延びなければならない。


「来訪者」と友好的に接するのも、敵対するのも、あなたの自由。

ただし、忘れてはならない。

――目の前の「来訪者」は、あなたと同じ“人間”ではないことを。』



ページの下に、走り書きのようなメモが残されていた。


『100日を数え、とにかく生き残れ。

生き残ることができれば、――縺翫■繧薙■繧薙ヴを出ることができる。

……とにかく、生き残るんだ。

たとえ、何を犠牲にしてでも。』


その文字列をなぞると、インクがじわりと滲み、黒い虫のように這い回った。



「……悪趣味な冗談ね」

美桜が冷ややかに笑う。

彼女は学園でも女王のような存在だった。

財閥の娘で、頭脳明晰。

生徒も教師も、その保護者も、学園の全てが彼女の『おもちゃ達』である。

“支配”こそが彼女の呼吸のようなものであり、愉悦であった。


「どうせ誰かの仕業だろ」玲奈が扉を蹴る。

「ドッキリかホラー演出か……」

だが、重い扉はびくともしなかった。


零は無言で壁を叩いた。

返ってくるのは、重厚で重い音。

窓もある。だが、外は濃霧で真っ白だった。


零は、近くにあった燭台でガラスを割ろうとした。

しかし、ヒビひとつ入らない。


「防弾ガラスでも使ってるのかしら…?」

零の声が小さく震える。


「とにかく落ち着きましょ。どこかに出口か裏口があるはずよ。誰がしたにしろ、こんなことをした奴はまともな人生を送れないようにしてあげるわ」


私は、黒い本を手に取り、先導するように廊下の先へと向かう。

零、玲奈は急ぎ美桜についていった。



時間の感覚が曖昧だった。

館の中には時計があるのに、すべての針が止まっている。

三人は黙々と探索を続けた。

扉の中には、開く部屋と、開かない部屋があった。


開いた部屋の一つには古いピアノ。もう一つは書斎。

どれも、長い間人の手が入っていない。

壁には肖像画があり、視線がどこに動いても、誰かに見られているような感覚がまとわりつく。


「悪趣味な仕掛けね…」零が顔をしかめた。

「ねえ、美桜。あなたこういうの好きでしょ? ホラーとか」

「現実の方が、もっと怖いわ」

私は、どこか愉しげにそう答える。




館の空気が変わったのは、日が落ちてからだった。


いや――正確には、「夜」がやって来た瞬間だった。


気づけば、シャンデリアの灯りがひとつ、またひとつと消えていく。

空気が凍り、霧のような冷気が漂い始める。


ほぼ全ての灯りが消えた時、止まっていた時計が急に動き出し、一斉に音を上げる。


明らかに只事ではない空気に、玲奈は臨戦体制をとり、零は少し震えている。

私は、ただひたすらに冷静に怪しい気配の漂う重厚な両扉を睨みつけていた。



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