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魔物宝石のゼリー 苺味

 

 異世界に来て数日。

 

 慣れてない事ばかりですが、ようやくやるべきことが板についてきました。

 

 やるべきこと、と言ってもその内容は酷くシンプル。箱庭の皆さんに食事を振舞う。これだけです。

 この箱庭に居るのは、私含めて数十人。

 多くて三十人の時もあったとの事ですが、病に伏せて亡くなってしまった人もいるようです。

 ロイには食事を振舞うだけで十分だと言われましたが、皆さんの食事を見ていて気付いた事もありました。

 まず、獣人はよく食べる。

 肉に食らいついていて、その身を離さんとばかりに。別にとりませんのに。

 天使族は草食。この間作ったサラダがお気に召したのか、ロイは機嫌が良さそうにおかわりをしていました。

 魔族は獣人程ではありません。が、魔獣血の混じった調味料が入ったものが好みのようです。

 明日の食事の仕込みをせねばと食器の片づけをしながら検索AIと格闘していたところ、ロイが厨房に入ってきました。

 

 困っている事は無いかと聞かれましたが、異世界に落ちてきた私はこれでも十分満足に暮らせていますと笑いました。

 その言葉に嘘はありません。見知らぬ所に放り出されて、餓死は一番辛いものだと思っています。

 ロイは困ったような笑いをして、どうして君は僕には敬語ではないのかと聞かれました。

 日本の男子高校生のような幼さの残る顔つきで、身長もそこそこだったので同年代かと思いましたと伝えると、自分は今年で三十になると返ってきました。

 天使族は見た目に反して長寿が多く、ロイ自身は若いようで最年少でこの箱庭を継いだのだという。

 敬語に変えた方がいいかと伝えれば、別に構わないと笑ってくれました。

 良ければどうぞ、とエナジードリンクとデスバニーの宝石を混ぜたものをロイにあげた。

 

 ちなみに検索AIさんによれば、デスバニーの宝石部分は甘い栄養分の塊だそうで。

 エナジードリンクと混ぜればいい感じのゼリーになるという。

 

 一度試食すればそれは苺味のゼリー。ロイはぱくりと一口食べれば、顔が朗らかになった。

 この世界は、病が世界中に回ってから食物が満足に栽培できなくなった影響上、食事を楽しむという概念は無くなったのだそう。

 ロイ自身も、エナジードリンク以外の味を感じる事はもうないのだと思っていたそうで。

 私の料理を初めて食べたときはもうとても驚いたのだとか。

 途端、はっと我に返ったらしいロイは「アルコールが回った」と、私に早く寝ろと言って厨房を出ていきました。

 私も部屋に戻ろうと廊下を歩いていれば、自然と窓が目に入ったのです。


 この世界でも、星は美しく瞬いていました。

 赤い星、青い星。星雲も見える。

 星の並びは日本とは違う様で、見覚えのないものだった。

 くしゅん、とくしゃみを一つ。風邪をひいてはいけないと、急いで部屋のベッドに横になりました。

 明日も良い日になりますように。

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