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リコリスのデミグラスソース煮込み


 起きたら異世界に来たのは夢じゃなかった。

 寝かせてもらったベッドは、とても肌触りが良くて見知らぬ土地なのにぐっすり眠れました。

 身支度をして一階に下りれば、そこには結構な人が集まっていました。

 獣耳の人や、角が生えた人。ロイのように天使の輪っかを付けた人……様々な人が。

 皆が見つめている先を見れば、そこにはロイが書類を持って立っていました。

 

 ロイ曰く、本日の活動確認との事。日本で言う仕事場の朝礼のようなものと認識しました。

 私の事も身辺は伏せて保護という形で皆に伝えていると教えていただきました。

 そして自分は仕事で忙しいので世話係を付けると言って、戻ってきたらとある人を伴ってきました。

 その子は獣人のエルネと言うらしく、なんでも私と同年代と言うことがわかりました。

 エルネは泣いて感謝していました。自分と同じ世代は、この「ルシウスの箱庭」にはとても少なく、数える程しかいないのだと。

 

 ロイは仕事に戻り、私はエルネに様々な質問をしました。

 この世界について。そしてどうしてこんな食事事情になっているのか。

 エルネは細かく丁寧に教えてくれました。

 

 世界は天使族と魔族という別々の神を信仰する種族と獣人に分かれており、様々な国と組織が存在している。

 そして、数百年前にとある「病」が流行ったとの事。

 その病は強力で、種族に関係なくかかるものらしい。

 そのせいでいくつかの国家は滅亡し、沢山の人が死に至った。

 「ルシウスの箱庭」は病のせいで発生した魔物を退治したり、種族分け隔てなく国家と組織の繋がりとなる中立な組織なのだと。


 通りで、昨日出会ったばかりのロイが私を見て怪しんでいた理由がわかりました。

 この異世界には、私のような人間は存在しない。必ず何かしら特徴があるからなのですね。

 エルネは私の食事事情にも興味があるようで、私にも作ってほしいと懇願してきた。

 なんでも病の流行のせいで、食事を作るための食物の栽培さえ……難しいからだという。

 エルネに連れられて厨房に赴いて、本日の朝ご飯を作っていこうと思います。エルネは観察してもいい?と聞いてきたので快諾しました。

 冷蔵庫を見れば、リコリスの魔獣肉の他に見知らぬ魔物の骸がありました。

 エルネ曰く、昨日の任務で第二部隊が採ってきたデスバニーという魔獣との事。

 検索AIに、デスバニー 調理法 と聞いてみます。

 

 デスバニー 調理法 検索

 デスバニーは赤宝石を摂取し魔力を強化した魔物です。

 宝石のおかげで栄養が豊富なので、肉はささみに、血は水と混ぜればコクのある味になります。

 昨日検索したリコリスの魔獣の血と混ぜればデミグラスになりますよ。

 

 デミグラスと聞いて、思い浮かんだのはデミグラスシチューでした。

 デスバニーの肉はまた今度に取っておくことにします。

 昨日のリコリスの魔獣肉の残りをブロック状に切って、

 デスバニーの血と水を混ぜて作った調味料をリコリスの血と混ぜれば、見慣れたデミグラスの色になりました。

 鍋にデミグラスとブロック状に切った肉を入れて、数分煮込む。

 いい香りがしてきた辺りで鍋の蓋を取って皿に流し込みます。

 出来上がったソレは、日本でも見たデミグラスソース煮込み。

 エルネはさっそくスプーンでパクリと口に運ぶと目を輝かせました。

 「こんなに美味しい料理、食べたことない!」と言って、何度もおかわりを口にしていました。


 昼休憩のロイにも出すと、彼は美味しいと柔らかく微笑んでいました。

 エルネが何度もおかわりをしていたと口にすれば、呆れた表情をしていましたが。

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