辛くて悲しくて、それでもまた出会って、恋をしたい
また一つ、星が流れる。青く青く、どこまでも青いような小さな光。
星に願う。何をわたしは願うの?
テオが好き。一緒に生きたい。でも、寿命が違う。わたしが死んだあと、残されたテオを悲しませたくない。生まれ変わっても、魂が同じでも、それはわたしじゃないのなら。
何を、願うの?
「お前は、テオを残して先に死ぬ。それは仕方がない。ニンゲンとドラゴンでは恋を語ったところで悲劇さね」
「オババ様は……、その、人間の恋人を持ったことを、後悔なさっていますか?」
「いいや?後悔なんざしたことはないね」
「でも、今……悲劇って……」
オババ様がふっと笑った。
「あいつはあたしを残して先に死んだ。それは悲しいことだった。生まれ変わってきたあいつと出会っても、あたしのことなど思い出しもしない。悲しかったさ。怒ったさ。生まれ変わったらまた愛し合えると期待していた分、裏切られたようで辛かった。まあ、でも今にして思えば仕方がないね。魂は同じでも生まれ変われば別人だ。なら、同じように愛せって言うのが無理なんだ。だがね……」
オババ様が空を見上げる。懐かしむような瞳で、星を見る。
「悲しいだけで、仕方ないと思うだけで……、今はもう、出会って愛し合ったことを後悔したことなんかないんだよ。悲しくても辛くても、愛したことは本当だ。あいつに出会えてあたしは良かった」
「本当に……?」
「ああ、本当さ」
オババ様の口調は優しくて。まるで冬の夜に、暖炉の前でお祖母ちゃんの話を聞く孫娘に対するみたいにわたしを見る。
「もうすぐ、あたしも寿命を迎える。死んで生まれ変わって……、過去の記憶なんか、前世の記憶なんか、何にも知らないあたしとアイツがまた出会えて……。そうしてまた恋に落ちることが出来たら。あたしは幸せだと思うよ」
「生まれ変わって、また出会いたいんですね、その方に……」
「ああ……。あたしが星に願うのは、それかね。覚えてなくていい、また会えますように」
覚えていなくていい。また会えますように。
テオも、わたしにそう言ってくれるかしら。
わたしが死んで生まれ変わっても、テオのことなんて何も知らない魂が同じだけの別人となっても。また会いたいって、思ってくれるかしら……。
わたしが死んで、テオも死んで。生まれ変わって、また出会って恋をして。
そしてまた生まれ変わりのわたしが死んで、生まれ変わりのテオが死んで。生まれ変わったらまた愛し合うの。
それを、何度も繰り返す。永遠に。
先に死ぬ辛さも、残された苦しさも。辛くて悲しくて、それでもまた出会って、恋をする。
オババ様のように、わたしも願う。
星を見上げて、流れる光に願いをかける。
覚えていなくていい。残されて悲しくてもいい。何度でも生まれ変わって、何度でも出会いたい。繰り返し繰り返し……それこそ、永遠に。
「おや、帰ってきたようだね」
暗い夜の中を悠々と飛ぶ緋色のドラゴン。
わたしは大きく手を挙げて、彼の名を呼ぶ。
「テオっ!」
言おう、わたしの気持ちを。そうして聴こう、テオの気持ちを。
お読みいただきまして、ありがとうございました!
ここ数日、お読みくださる方の数が飛躍的に増えていまして。
『さようならダニー様』のほうからお越しくださる方が多いのかもしれません。ランクに乗るってやっぱりすごい!
こちらのお話も楽しんでいただければ嬉しいです。
あ、このお話も、もう、終盤です。最後までお付き合いくださるとうれしいです。




