願い
オババ様の話を聞く前だったら。
もしかしたらわたしは……テオに好きだと告げて、テオと生きて……わたしが死ぬ前に「生まれ変わって、またテオに恋をする」とか、ロマンチックなことを言ったかもしれない。
でも、生まれ変わったとしても、わたしはわたしじゃない。
魂が同じでも、記憶はない。
わたしはずっと、考えていた。
オババ様はそんなわたしに、それ以上何も言わずに、ただゆっくりとスープをすすっていた。
剥いた果物も、食べて。使った皿を厨房の隅で、さっと水で洗って。
それから、ゆっくりとオババ様はわたしに言った。
「そろそろテオも帰ってくる頃かね。出迎えるかい?」
こくん、と頷いて、わたしはオババ様と一緒に庭に出た。
夜空一面に光輝く星たち。まるでカスミソウみたいな小さくてたくさんある花が、夜空に咲いているみたい。
ぼんやりと眺めていたら、すーっとひと筋、星が流れた。また一つ。そしてまた一つ。
「おや、今日は流星群の日だったかい」
オババ様も、夜空を見上げている。
本当かどうかは知らないけれど、流星って、彗星が崩壊して散らばったもの……と、伝えられている。
つまりは壊れた星。
だけど、美しい流れ。
今、わたしたちの領土には明かりが少ないから、いつもより明るく綺麗に見えているのね。
また、星がひとつ流れた。
「流れ星に願いをかけると叶うって聞いたことあるかい?」
「ええ……。小さい頃、母や兄と一緒に願いをかけたことがあります」
幼いころの記憶。
流れ星がすっと流れて消えるまで、三回願いを言うと叶う。
がんばって早口で言ってみたけど、三回なんて言えなかった。
お兄様は「金金金。よし言えたっ!」なんて言って、お母様に呆れられていたけれど。
今、思い出すと、くすりと笑ってしまうような、過去。
「叶うか叶わないかはともかく。星に祈るような願いを、リステリア、お前は持っているのかい?」
魔女の、瞳だった。
深淵を覗くような。
吸い込まれていきそうな。
もしも……もしも、今。
わたしがテオと同じくらい長く生きたいとか願ってみたら。
オババ様は叶えてしまうのだろうか?
それとも……。
はくり、と。わたしの口が動いた。だけど、言葉は発しない。出来なかった。
千年生きる。それはどんなことなのだろう?
分からない。
テオと一緒に生きるのは素晴らしいと思う。嬉しい。正直、そうしたいとは思う。
だけど……。
それを願ったところで、それを叶えるほどの代償は、わたしには払えない。
幼いころに、テオにリンゴの木をあげた。
それで、テオが今、わたしに色々と手を貸してくれて、領地は復興に向かうことが出来た。
テオやオババ様に、わたしは何も返していない。
していただいたことを、感謝しているだけ。
何も返せないのに、願いだけ、求めるのはおかしいと思う。
それにオババ様は魔法を使い過ぎて倒れて……今、ようやく起きられたところ。
千年生きるようにして欲しいなんて願い、どれだけ大きな魔法を使わないといけないのだろうか?わたしに魔法をかけてくれる事によって、オババ様がまたお倒れになったり、死んでしまったりしたら。
わたしはぶるぶると頭を横に振った。
そんな願い、するべきものじゃない。
してはいけないというよりも……したくない。
オババ様に願うのではなく、かなわないかもしれないけど、星に託すようなわたしの願いは……。




