星の光
肌にビリビリと突き刺さるほどの衝撃。ラーカス様は「ひええ」と叫ぶと尻餅をついた。テオはそのまま翅を広げると、前足の爪でラーカス様の服をひょいと引っ掛ける。
テオがわたしに向かって何かを叫ぶ。
ドラゴン語は分からないはずなのに、何故だか「ゴミ捨て行ってくる」って聞こえてきた。呆気に取られているうちに、テオはそのまま空高く飛び去った。
太陽は既に落ち、夕陽と夜の暗さの混じった空が、次第に色を黒く染める。その暗闇に向かう空を、悠悠と飛ぶテオの姿があっという間に見えなくなった。
ええと……。ラーカス様のリヴァイエス領の位置を知っているのかしら?それともどこか適当な場所に置いて来るつもりなのかしら?
暮れていく空を、わたしはただ呆然と眺めていた。洗い清められたように透き通った星空だ。復興しつつあるけれど、夜、家々を照らせるような蝋燭などはまだ領民たちに行き渡ってはいない。今は朝日と共に起きて、日が沈むと共に寝る生活。わたしの館でさえ、節約のために、夜に蝋燭やランプを使うのはお父様と、警備など一部の使用人のみ。そのため、きらめくような無数の星が見える。
こんな星空の中をテオと飛べたら素敵かもしれない。
……寒いだろうけれど。
なんとなく、わたしはそのままぼんやりと星空を眺めていた。
テオが帰ってくるまで待つという気もあったのだけれど、それよりも、ただ星空の美しさに見とれていたのかもしれない。
すーっと、星が流れた。地上が暗いから、流れ星がいつもよりも明るく感じる。雲に線を上げくようにして、長い尾をたなびかせて流れ落ちる彗星。それからたくさんの光る星。ちかちかと瞬いている。
距離にもよるけれど、星の光って、今輝いているものを、今見ているわけではないらしい。
近くの星でも数分とか数時間前の光が今見えていて。
遠くの星だと……何年、何百年、場合によっては何万年も昔に放たれた光が、今やっとわたしのいるこの場所に届いている……とか、らしいのよね。あまり詳しくは知らないのだけれど。
不思議ね。
あれ……?わたし、何か今、掴みそうになった。テオと星の光。なんだろう?わたし、今、何かを考えた。というか掴みかけた。
だけど、漠然とした考えが、確固たるものに代わる前に、「何をしているんだい?」と声をかけられた。
わたしはその声にパッと振り向いた。
「お、オババ様っ!」
考えていたことも全てどこかに行ってしまった。ううん、私が考えていたことよりも何よりも、オババ様が起きて来たっ!
「お目覚めになったのですねっ!」
「ああ……。テオの声がうるさくてね。あいつは何処にいるんだい?」
わたしはふふっと笑ってしまった。
「ゴミ捨てに」
「はあ?」
わたしはオババ様に、わたしの元婚約者のラーカス様がやってきたことを簡単に説明した。
お読みいただきありがとうございます!
ブクマやいいねもホントありがとうございます!!
諸事情ありまして、感想は受け付けていないのですが……。
それでも皆様の反応は本当に嬉しいのです。ありがとう。
反応を頂くと本当に嬉しい。書く活力です!!




