よく寝ています
大粒の雨が激しい音を立てて窓ガラスを叩く。
その雨音で、わたしは目を覚ました。
看病とまでは行かないが、倒れたオババ様の様子を見ているつもりで、そのままわたしはソファで眠ってしまったようだ。目だけで暗い部屋の中の様子をうかがいつつ、ソファから身を起こす。すっかり体が固まってしまっている。少しだけ伸びをしてから、わたしは音をたてないようにそっと立ち上がった。オババ様が眠っているベッドに近づいていく。オババ様の呼吸は、規則正しい。お医者様ではないからわからないけれど、きっと魔力を使い果たして眠っているだけ、なのだろう。多分。テオもそう言っていたし。
そのテオは、オババ様と同じベッドの隅っこで、体を縮めて眠っていた。すうすうという寝息が聞こえてくる。
(テオが眠っているのなら……多分大丈夫……よね)
わたしはそのまま窓へと近づいていく。そして、少しだけカーテンを捲って窓の外を見る。
外は暗い。既に風は強く、雨が狂ったように窓ガラスを叩く。
オババ様の予言の通り、これから嵐が降り続くのだろう。
テオとオババ様に作ってもらったため池やナーハン川の支流が無ければきっと、また領地内のあちらこちらで水があふれていたに違いない。
わたしは音をたてないようにして、そっとこの客間から出て行った。
暗い廊下を歩く。自分の部屋に戻るのではなく……、お父様の執務室へ向かう。
予想通り、お父様の執務室からは明かりが漏れていた。
「お父様……」
扉から声をかければ、お父様は執務机に突っ伏して眠っていた。
お父様の肩をそっと揺する。
「ああ……、リステリア……」
お父さんがぼんやりした目で私を見上げた。
「きちんとベッドで眠ってください。体を壊します」
「ああ、わかっている。またこんな大雨だ。領地内のあちらこちらから、川が氾濫しただのなんだのと連絡が入ると思ってな……」
「連絡はないようですね」
「ああ。魔女殿とドラゴン殿のおかげなのだな。二人は大丈夫なのか?」
「ええ……。よく眠っています」
「そうか……」
オババ様が倒れた後、妖精さんたちの手を借りて、テオの背にオババ様を乗せて、わたしの屋敷まで運んだ。
お父様は事情を説明するや否や、オババ様を一番広い客間に運ばせた。
わたしとテオも、その部屋に一緒に入り、今の今までオババ様の様子を見ていたのだけれど……。
「リステリアもご苦労だった。とりあえず、食料をどうするかはともかく、嵐による被害など、今回はなさそうだ。ありがたいことだな」
「ええ。オババ様がお目覚めになられたらお礼をしなければ……」
「そうだな。しかし、その前に、お前も疲れているだろう?今日はもうゆっくり休みなさい」
「はい、わかりました。お父様もですよ?」
わたしは一旦自室に戻り、毛布を手にして、そのまままた、オババ様が寝ている客間に戻った。テオもオババ様も、さっきの通り、よく寝ている。わたしも、ソファに横になる。毛布を掛けて、目を瞑るとすぐにまた眠りに落ちてしまった。
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