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【完結】婚約破棄された被災令嬢はドラゴンに永遠の愛を誓う  作者: 藍銅 紅(らんどう こう)@『前向き令嬢』2巻 電子書籍2月配信


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約束


それで、農園でスプーンを借りたら、農園の人が「ついでだからそっちの坊ちゃんも護衛の人もウチのリンゴ、もう一度食べていってくださいよ。ああ、傷がついて売り物にならないのだけど、味は保証付きだから!」って、リンゴをいっぱい剥いてくれて。うん、ホントウチの領民の皆さん良い人ばかり。


で、テオは、わたしの手作りジャムも、農園のリンゴも「うまいうまい」って言って貪るようにして食べてくれた。


「こんなにうまいもの、初めて食べたっ!」


凄くすごく喜んでくれていたから、わたしまで嬉しくなった。


「テオが住んでいるところにはリンゴは無かったの?」

「うん無い。すげーうまいなリンゴって。ジャムもすげー!こんなにうまいもの作れるなんて、リステリアは天才だ」

「わたしが上手なんじゃなくて、教えてくれた人が上手なのよ。だってわたし、初めて作ったんだものそのジャムは」

「そんなことないよ。リステリアのジャムだから美味いんだっ!」


そんなこと言われたら、テオをもっともっと喜ばせてあげてくなって……、わたしはバッグの中を見た。何かあったら使いなさいって持たせられていた銀貨が一枚。


わたしは「よし」と、一つ頷いて、農場の人に尋ねた。


「あの……リンゴの木って、どこでも育てられるんですか?それから銀貨一枚だったらリンゴの種とか木とか、いくつ買えますか?」


驚いた顔をしていたけれど、農場の人はリンゴの木の育て方を懇切丁寧に教えてくれた。


庭先にでも植えると苗木なら三年から五年くらいで、種から育てるなら八年くらいで収穫できるとか。リンゴを食べた後、種を取り出して植える場合は異なる種類のリンゴを二つ用意して、それを受粉させる必要があるとか。寒さに強い果樹だから、寒いところでも育つけれど、暑過ぎるところでは無理だとか。太陽の光をたくさん浴びるとリンゴの色つやが良くなるとか。剪定や受粉がちょっと手間だとか。


銀貨一枚でもたくさん苗木を買うことが出来るそうなのだけれど、テオにはそんなに持てないかな?と思ってわたしはリンゴの苗木を一本買った。それから種を取れるようにいろんな種類のリンゴをたくさん。農園の人は「それくらい差し上げますよ」と言ってくれてけれど、これはわたしがテオにあげるものだから、ちゃんとお金を支払った。農場の人は大きな麻の袋を用意してくれて、そこに苗木とリンゴを入れてくれた。


「はい、テオ。これリンゴと苗木。重いけど持って帰れる?無理ならウチの護衛にお願いしてお家まで届けさせる。頑張って育てるなら、テオにあげるわ。そうしたら、テオ、いつでも美味しいリンゴ食べられるようになるでしょう?」

「持てる持てるっ!俺、こう見えてもすんごい力持ちだし。でも……、い、いいのか……?」

「うん、もちろんっ!」


テオはじっと考えていたけれど、リンゴの苗木を受け取ってくれた。……あら、小さい子なのに、やっぱり男の子なのかしらね。わたしには持ちあげられないくらいのリンゴと苗木を、テオは軽々と持ち上げたわ。まるで宝物のように、そっと、大事に。両腕に抱えている。


「ありがとう。俺、がんばってリンゴ育てる。そんで……この果樹園みたいにたっくさんリンゴの実、つけることが出来たら……、今度はリステリアにリンゴのジャムの作り方、教わって、俺の作ったジャムをリステリアに食べてもらう」

「うん、わたしも次に会うときはもっともっと上手に作れるように、ジャム作り、いっぱい練習しておくね」


そうだ、思い出した。これがテオとの約束だ。


わたしは改めて、リンゴの木々を見た。


視界に見えるのは鈴なりのリンゴ。たくさんのリンゴの木。


「あの時のリンゴの苗木とリンゴの種から……こんなにいっぱいのリンゴの木を育てたの……?」


だって、すごいわよここ。うちの領民全員に一つずつくらいなら行き渡るくらい数多くのリンゴの実がなっている。いえ、もっとかしら。数えきれないくらいの見渡す限りのリンゴの木だもの。


テオは、「あー……」とちょっとわたしから視線を逸らした。


『てお、だけじゃないよー』

『じゅふんはボクたちががんばったー』

『もりのおばばさまのまほーもねー』


妖精たちが、言う。テオは目を逸らしたまま、呟いた。


「あー、俺一人ではなかなか上手くできなくて……、森のオババが、その、魔法で……とか、いろいろしてくれて。……後はこいつらがほとんど世話してくれてるんだ実は……」


がっくりと、テオは肩を落としている。ん?


『あのねー、ておはねー、ドラゴンだからー』

『ちから、つよすぎなんだよ』

『リンゴのき、うっかりなぎたおす、とかねー』


あ、あら……そう、か。なるほど。ドラゴンなら、そうね。わたしを口で咥えられるくらいなのですものね。リンゴの木なんて……簡単に倒しちゃえるかもね……。


「俺が自分で頑張って育てるつもりだったのに。……その、ごめん。それから、その……このリンゴの木は、元々はリステリアが買ってくれたものだから、全部リステリアにあげたいんだけど……妖精たちが育ててくれた上に、その、森のオババも手も借りてるから……、俺の一存で勝手にリステリアにあげるって言えないんだ」

「そう……、なの……ね」


テオとの約束も思い出し、再会の喜び一転、わたしは領民たちの困窮を思い、唇を噛む。


『もともとはりすてりあのリンゴだから』

『ぼくたちはりすてりあにあげてもいいよー』

『おばばさまは……どうかな……。ニンゲン、あんまり、すきじゃないみたいだし……』


妖精たちが思案顔になった。この黒の森のおばば様。魔法を使うという……。それってもしかして、あの「黒の森の魔女」のことなのかしら。千年生きているという……。その魔女のせいで人間は黒の森には入れない。入ったとしても身ぐるみはがされて、記憶を失って、森から放り出される……。


わたしの背に冷や汗が流れた。もしもこのリンゴのことを忘れて、この森から放逐されたら……。ううん、それなら最初の予定通り、わたしはそのまま娼館に行けばいいだけよ。

女は度胸っ!


わたしは顔を上げて、テオに頼み込んだ。


「テオ、お願い。森の魔女様……オババ様に会わせて。わたし、このリンゴを……わたしの領民たちに配らせてもらえるよう頼んでみる」




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