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【完結】婚約破棄された被災令嬢はドラゴンに永遠の愛を誓う  作者: 藍銅 紅(らんどう こう)@『前向き令嬢』2巻 電子書籍2月配信


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出会い

正確な場所は覚えていない。でもあそこはリンゴの産地だったから、我が領の……アーノルド地方のどこかの町だったとは思う。そして、その町に、幼いころのわたしは……いつものようにお父様の視察について行っていた。

 そして、お父様が難しい商談中などは護衛の人に連れて行ってもらって……商店や屋台を見ていたのよね。……その時、小さな男の子からいきなり声をかけられたのだ。


「なあ、さっきから見てたんだけど。アンタはどうしてタダでいろんなモン貰ってんの?ニンゲンがモノをやり取りするときにはオカネってもんが必要だって、俺は習ったんだけど」


問いかけは、わたしを責めるようなものではなく、知りたいことを率直に聞いたというような、そんな感じだった。


当時のわたしは多分十歳より前の年だったと思う。その問いかけに、お姉さんぶって答えたのよね……。何せ、自分より小さい子って珍しかったから。わたしの周りにはいつほとんど大人しか居なかったのよね。で、その男の子はわたしよりも背が低かったから、年下の子にはちゃんと教えなきゃなんて……思ったのよ……。


「それはね、わたしが領主の娘だからよ」


わたしはえらそうに、えへん、と、胸を張って答えたのだ。


「リョウシュノムスメはただでモノがもらえる?」

「正確には違うわね。わたしのお父様がここの領主をして、ここを平和に維持しているの。流行り病が起きれば他の領からたくさん薬を買って、みんなに行き渡るようにしたり、道路を整備したり、色々皆のためにやっているの。お父様はきっと素晴らしい領主なのだと思うわ。だからね、こうやって、わたしが領民たちに前に来ると、みんなお父様へのお礼も含めてわたしに親切にしてくれるのよ。もちろんわたしたちの領地のみんなは面倒見のいいあったかい心の人が多いってのもあるけれど。仮にお父様が悪い領主だったら、わたしにこんなふうにいろんなものを食べて、なんて、寄こしてこないわ。代わりに石でも投げてくるんじゃない?」

「ふうん……そーいうもんなのか……」

「うん、そういうものよ。あとね、わたしは領主の娘だから、将来わたしが大人になった時にね、お父様と同じようにこの領地を守ってくださいとか?そういうお願いも含まれているのかもしれないわね。だから、わたしはタダで何かをもらっているわけじゃないの。こうやって、視察をして、領民のことを知り、将来に備えるっていう大事なお仕事をしているのよ」


……まあ、今思えば赤面の至りだけれど。年下の男の子に見えたものだから、そんなふうに答えたのよね……。特にあの頃は家庭教師たちにノーブル・オブリゲーションってモノを叩き込まれていた時だったから……。偉そうに言ったものだわ、思い出すと本当に恥ずかしい。


男の子はわたしの言葉にちょっと考え込んでいるようだったのよね。


「じゃあ……俺が、将来、誰かのために何かするなら、今、いろんなものがもらえる……?」


うーん、ちょっと違うかな?わたしの説明が悪かったのかな?と思ったときに、男の子のお腹がぐぐぐーっと鳴った。


「ああ、貴方、お腹が空いているのね?」


だから、何か欲しかったのかな?だけど、わたしが領民からもらったものは視察の一環だと思っていたから、勝手にあげるわけにはいかないと当時のわたしは考えた。

そして、ちょっと考えてから、手にしていた小さなバッグに入れていた小瓶を一つ取り出した。


「はい、これならあげれらる。わたしがね、さっき作らせてもらったの。だから、どうぞ」

「え……」

「リンゴのジャム。嫌い?」


さっきリンゴ農家に行ったのよ。そこで観光客向けに、ジャム作り体験というのをやっていたのよね。

ちょうどお父様は難しいお話があるとかで、どこかに行ってしまわれたし、わたしも手作り体験なんて面白そうって思って。そうして作らせてもらったばかりのもの。

リンゴの皮を剥くのなんて初めてだった。料理長たちがいつも簡単に剥いてくれるから、わたしにもすぐに出来ると思ったのに。やっぱり見るのとやるのでは違う。そう思ったわ。リンゴを小さく切って、蜂蜜とレモンを入れて、弱火でぐつぐつ煮るのは大変だった。かき混ぜていないとすぐ焦げ付いちゃうんですって。でもがんばって作ったから、ちょっと自慢なの。本当はお兄様にあげようと思ったけれど……。この男の子がお腹空いているのなら、お兄様へのお土産は別のものにして、コレ、食べてもらっても良いわよね。


男の子はリンゴジャムの瓶をじーっと見つめていた。


「アリガト……。ニンゲンから何か貰うなんて俺、初めてだ」


にっと笑う顔が、どことなくいたずらっ子っぽくて可愛かった。


「俺はテオ。今はアンタに返せるものは無いけど……将来アンタに何かを返すよ」


その言い方に、わたしも笑った。

わたし、初めて自分の領民に何かできたと思ったの。ちょっと誇らしかった。


「わたしはリステリアよ。リステリア・ド・ウェステルハイム。領民が笑顔でいてくれるのが一番のお返しよ。あ、ジャム食べるのにスプーンとかあった方が良いか……。そのまま食べるより、クラッカーとかパンとかもあった方が良いかも。うん、テオ、食べるのちょっと待ってて」


後ろに控えている護衛達に、どこかでスプーンとか調達して、それから座って食べられるところに案内して、と言ったら「では先ほどのリンゴ農園に戻りましょう。丁度旦那様があちらでのお話が終わるころです」という返事だったから、テオを連れて行ったのよね。








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