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殆ど眠れなかった……。
あの恐ろしい獣のようないびきは、結局一晩中響いていた。
次の日アレクシアは、寝不足の状態で離宮を彷徨っていた。エルヴィーラが妃教育へ向かったら、少し仮眠でもとろうかと思ったが……例の如く掃除の為に部屋を追い出されてしまい……最悪だ。
どこか休める場所は。
そして、ピタリと歩みを止める。気付けば昨日、本を拾った廊下に来ていた。無意識とは恐ろしい……。
アレクシアは踵を返そうとするが、一応また偶然に本が落ちてないか探してみる。
「やっぱり、ないわよね……」
昨日はたまたま誰かが落としたものだ。そんな毎回都合よく落としてくれる人などいない。
寝不足も相まって落胆が凄い。これで本を拾えたら少しは、いやかなり元気になれたのに……。
それに、あの本も持ち主に返さないといけない。内容は微妙だったが、きっと持ち主は探しているに違いない。また手元から本がなくなる恐怖もとい禁断症状を想像して、アレクシアはため息が出た。
「もう、此処でいいわ」
これまた気づけば、昨日居眠りをした木陰にアレクシアは来ていた。ここなら人目につかないだろう。
限界だ。少しだけ仮眠をとろう……。
アレクシアは木にもたれ掛かり、目を閉じる。まだ城に来てから2日しか経っていないのに……この疲労感。これでは先が思いやられる。そんな事を考えながらアレクシアは、眠りに落ちていった。
なんだろう…… 誰……?
私の、頭を、誰かが……撫でているような……
こんな風に…………誰かに、撫でられるのは……
生まれて……初めて……
いつも、叩かれて……ばかり、だった、から
優しい、手……温かい……安心、する……
「⁉︎」
アレクシアは、ハッとして目を覚ました。
夢……。
周囲を見渡すが、誰もいない。確かに、誰かがいた気がしたのに……やけに、現実味を感じた。
相当、疲れているわね……。
でも、よく眠って頭がスッキリとした。アレクシアが立ち上がると、下に何か置かれているのに気がついた。
「これ……!」
直ぐ様それを拾い上げ、嬉々とする。
「本だわ!」
まさかこんな所に本が落ちているなんて‼︎
アレクシアは、我慢出来ずにその場で直ぐに中身を改めるが、愕然とした。
「……これって、まさか」
昨日の本の続刊⁉︎
あれで終わりじゃなかったのね……。
でも、どうしてこんな所に落ちているのだろうか。アレクシアが眠る前には、無かった筈だ。という事は眠っている間に誰かがこの場所を訪れたという事になる。
その瞬間、昨日の事が頭を過ぎる。もしかして、昨日の上着の持ち主とこの本の持ち主は同じ?
一体、どうなってるのかしら。
不審に感じながらも、アレクシアはちゃっかりと本を持ち帰った。




